ネット事業に力を入れている旅行会社の経営状況は
2016年の訪日外国人数がすでに2,000万人を突破し、国内の旅行業界が非常に活気づいてきている。その中でも、ネット事業に力を入れている旅行企業は今、どのような経営状態なのだろうか。
今回は、航空券ネット販売のアドベンチャー(6030)、旅行比較サイト「トラベルコちゃん」を運営しているオープンドア(3926)のビジネスモデルや主な経営指標から、2社の経営状況を分析してみたい。
アドベンチャーは、国内・海外の格安航空券のオンライン予約を行う「skyticket」などの運営を行っている。
オープンドアは、約300の旅行会社や予約サイトが販売する旅行商品を一括検索が可能な比較サイト「トラベルコちゃん」を運営している。
まずは、業界トップ企業の経営データをチェック
社名 |
売上高 (億円) |
営業利益率 |
純利益 (億円) |
営業CF (億円) |
投資CF (億円) |
財務CF (億円) |
---|---|---|---|---|---|---|
プライスライン・グループ | 9,685 | 35.3% | 2,678 | 3,257 | △4,089 | △766 |
JTB | 13,437 | 1.2% | 125 | 311 | 292 | △4.8 |
HIS | 5,374 | 3.7% | 108 | 125 | △281 | 162 |
KNT-CTHD | 4,249 | 1.5% | 43 | 74 | 5.6 | 0.8 |
日本旅行 | 528 | 2.5% | 10 | 6.5 | 9.0 | △1.6 |
アドベンチャー | 26.8 | 10.6% | 1.4 | 7.3 | △2.1 | △2.2 |
オープンドア | 24.6 | 34.4% | 5.3 | 5.6 | 0.04 | 3.8 |
経営状態を客観的に分析するためには、旅行業界全体の動向を見ながら2社のデータを比較することが肝心だ。そこで、ネット旅行会社世界トップのプライスライン・グループ(米)、国内大手のJTBなどの15年度の経営指標を確認してみよう。
まず、ネット旅行会社世界トップのプライスライン・グループだが、1ドル105円換算にして売上高はJTBを下回るが、純利益はJTBの21社分だ。売上による収入から仕入代や人件費、税金などを支払って残ったキャッシュ、つまり、正味の実入りである営業キャッシュフロー(CF)も、JTBとは一桁ちがう。
投資CFの「△4,089億円」は、将来への布石として設備投資などにそれだけのキャッシュを投じたと見ることができる。新規の投資を抑制し、手持ちの投資有価証券を売却したりして、投資CFが黒字(入金超)になったJTBとは対照的だ。
さらに、プライスライン・グループの財務CF「△766億円」は、配当や金融機関への返済にキャッシュを持ち出したことを意味する。いずれも、日本の同業社が遠く及ばない数値と言える。