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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

次なる顧客体験へ 大手企業の目線

三越伊勢丹・中島さんに訊く ショッピング新時代、小売ECサイトの役割とは


2016年3月17日、ECzineでは無料カンファレンス「ECzine Day 2016 Spring」を開催します。基調セッションのタイトルは、「ショッピング新時代、小売ECサイトの役割とは」とし、三越伊勢丹の中島郁さんにがご登壇。本記事であらかじめ、基本的なところをおさえていただくと、当日のイベントをより楽しんでいただけると思います。

人工知能にも興味があるのに、中島さんがテクノロジーの話はあんまりしませんよという理由

――今回、ECzineのイベントで基調セッションにご登壇いただき、小売企業さんを代表して、小売ECサイトの役割について話していただきたいとお願いしました。

キタムラの逸見さんとディスカッションするわけですが、お互い、EC事業の段階が異なります。キタムラさんは、オムニチャネルはこれからでしょうけれど、ECとしてはいったん、やり尽くしたんじゃないかな。一方こちらは、僕が三越伊勢丹に入ったのは2013年の4月、現在のシステムをリリースしたのが2014年の5月ですから、新しいテクノロジーをどんどん導入するというよりは、まだやるべきことが満載の段階なんです。

逸見さんも、「はじめの3年くらいは、無我夢中でした」とどこかの記事で書かれていたと思います。ECサイトは、はじめて3年くらいはやるべきことが満載です。そこを過ぎると、やり尽くした感がして、それでも伸ばしていくために新しいテクノロジーを導入したりします。僕もショップチャンネルにいた時はそうでした。はじめからどんどん新しいテクノロジーを導入しようとするのは、会社によほどコアな方針がない限り、なかなか難しいんですよね。

――業界ニュースを見ていると、人工知能ファッションアプリのSENSYさんとお取り組みをされたりと、新しいテクノロジー活用に積極的にも見えます。

会社の別の部署を含めれば、アプリやビーコンなどの取り組みもありますが、ECチーム、WEBチームとしては、もっと優先順位が高いものを優先しています。

長い目で見ると、将来的には、人工知能を活用したコンシェルジュ機能をやりたいので、今、勉強しているところです。いろいろなところにお声がけしているのですが、概ね、現状はシナリオベースであとは人間がやるしかないという回答をいただいています。できるAIもあるけれど、まだ実用の段階には至っていなかったり。

セミナーに登壇するたびにこの話をすると、1回につき何件もご提案いただくんですけれど、僕がやりたいこととはちょっと違う。検索とレコメンドを組み合わせたとか、画像認識とつながっているとか、それはそれで素晴らしいんですけど。

株式会社三越伊勢丹ホールディングス 顧問役員 兼 WEB事業部長
中島郁さん

――では、いま目下お取り組み中のこととは?

これまでの経緯を振り返ると、伊勢丹は97年、三越は98年から、お中元・お歳暮のようなギフトをメインに、ECがスタートしました。途中で会社が合併してもサイトは別々で、物販をしているのに、役割としては広告宣伝、メディアのひとつのような感じでした。組織としても、売上を上げるチームではなく、支援側というか、補助的なチームの位置づけだったんです。

その中に、店舗情報などをカテゴリごとにまとめているメンバーがいたので、彼らを集めて、2013年の4月にWEB事業部にしました。ECにかかわる部署のレイヤーが、2つくらい一気に上がった感じです。僕のポジションも、役員クラス。そこに外から人を招聘したのは、伊勢丹でははじめてくらいのことじゃないかな。僕も入社してみて、本気度にびっくりしたという感じでした。

97年、98年と古くからECをやっているのに、社内に専門的に詳しい人間はいないと言ってよいほどでした。たとえばイベントをやる際に、店舗でチラシを配って販促しようとしたら、Webのページはまだできていないなんてこともあったり。それでも、お中元・お歳暮の時期に、アフィリエイトやリスティングを少しだけやるだけで、数十億円の売上があったので、さすが三越伊勢丹だなと思いましたけれど。

一番特徴的なのは、「店舗で売れる商品とWEBで売れる商品は違う」と、多くの人が考えていたこと。一般的に、実店舗のやりかたをWEBでも踏襲すればうまくいくと信じて、失敗するところも多いと思いますが、三越伊勢丹はそうではなかったので新鮮でした。でも、お客様は新宿や日本橋、銀座の実店舗をイメージしてサイトに来られるのに、実店舗に置いてあるような商品が全然なかったり、サイトの雰囲気がまったく違ったりしたら、お客様はがっかりされますよね。ですから、お中元・お歳暮以外は、ひと握りくらいしかなかった一般商品を増やすことから取り組みました。

そうなると、商品登録が必要ですが、新宿本店だけでたぶん何百万SKUにもなりますし、一般に百貨店には単品登録の仕組みがないんです。三越伊勢丹では、幸い基幹システムにも仕組み自体は持っていたのですが、これまでそれほど使ってこなかったので、新しいワークフローが発生することになります。加えて、ささげもやってもらわないといけません。「なぜうちの部署が」と言われながらも、進めていきました。

14年5月にリリースした新しいECシステムは、今もまだ完全ではないのですが、とりあえず普通のECサイトにするというのが僕の最初のミッションです。2015年度は、これまで言っていたことを実証する時期だったと思いますが、2016年度も引き続き実証しながら、本来の百貨店のらしいこと、強みは何かを考えながら、実行に移していきたいと考えています。

――本来の百貨店らしいこと、強みとは?

大きく「商品」と「販売」のふたつがあると考えています。課題としては、現状のECで「商品」の「提案」があまりないこと。要は、○○ブランドのスカートであるとか、単品のレコメンドしかなくて、お客様に対して、「このコーディネションはどうですか?」という提案ができていません。それから、お客様との細かい接点も不足している。

商品の編集力と接客力、これをふたつあわせたものをどうやって出していくか。あるひとつの商品を買うなら、百貨店のECサイトで買う必要はないと思います。検索して、値段の安いところで買えばいい。でも上から下まで5商品の組み合わせだったら、それぞれ別のサイトで買うと、送料や手間がかかる。あわせて買ったほうがいい理由をちゃんと作って、なおかつサポートがある、問い合わせができる、きれいな箱・梱包で届くといったことをやっていきます。

実は、贈り物の「のし」を、目見でチェックしたりすることがあるんです。男女連名だと、もしかしたら結婚式の内祝いかもしれない。結婚の内祝いには、繰り返しては良くないと「結び切り」という「のし」を用いるのですが、お客さまが、何度あってもよろこばしいことに用いる「花結び」を指定されていたとしたら、「お客様ひょっとして、お間違いじゃないですか」といったことができます。そういうことも、いずれテクノロジーでできたらいいんでしょうが、現状は人でやる。それが当社のECの強みです。

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ECは小売のど真ん中 うまくいかなくてもやめる選択肢はない

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この記事の著者

ワダ スミエ(ワダ スミエ)

2013年11月11日〜2023年3月31日までECzine編集部在籍。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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