伸びるネット広告のうち、3割をしめるフィード広告とは
イベント翌日に、データフィード専門の新会社「MicroAd DFs」設立を控えていた、マイクロアド。同社DF事業部 事業責任者の井上さんは、まずフィード広告の市場規模を説明するところから、講演を始めた。
「この図は、インターネット広告費の伸びを表しているものですが、そのうちフィード広告が占める割合は、2013年が10%、2014年が20%、2015年は30%と伸び続けています。当社のDSP『MicroAd BLADE』で配信している広告も、20~30%はフィードを使っており、もはやフィード広告は、インターネット広告において欠かせないものになっています」
通常の静止画広告よりも、フィードを活用したダイナミックリターゲティング広告は、CVRやCTRといった数値が良好だと言う。媒体にもよるが、平均してPCが0.3~0.5%、スマートフォンが0.2~0.5%といったところ。業種では、とくにEC、人材、不動産といった商品数の多い広告主で効果を発揮している。
それではそもそも、データフィードとは何なのか。マイクロアドでは、「商品データベースの分身」と定義。具体的には、膨大な商品データを各広告媒体のフォーマットにあわせて成形する仕組みだ。マイクロアドでは、「SKY」というツールを開発し、フィードの生成や加工を無料で請け負っている。
「広告主様のなかには、自社でフィードを管理していらっしゃるところもありますが、非常に手間がかかります。そこで、間に入ってデータフィードを作成する『SKY』のようなサービスが増えているわけです」
データフィードの作成方法は2つ。「商品マスタデータ接続」と「サイトクローリング」だ。後者のサイトクローリングに関しては、サイト上から商品名、価格、画像URLといった広告配信に必要な情報を抜き出していくというもの。
「商品点数が30~100万点ほどお持ちのサイトの場合、クローリングの際にサーバへの負荷がかかります。その場合には、商品データベースに直接アクセスさせていただくほうが、安全かなと思います。 難しい場合は、夜中の1~4時など、アクセスが少ない時間帯に行うようにしています」
商品マスタやECサイト上で変化があれば、データフィードも随時更新される必要がある。データフィードの運用において、井上さんは以下3つが非常に重要だという。
フィード運用で重要な3つのポイント
- 正確さ……サイトの情報とフィードの内容に誤りはないか
- 更新……都度更新し、在庫切れ等が配信されてないか
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鮮度……新商品が反映され、ユーザーに届けられているか
さらに、広告配信であるから、必要最低限の情報以外にもちょっとしたアクセントになる情報も欲しいところ。
「カスタム1、カスタム2といった具合に、情報を追加することも可能です。そういった欄に、『大感謝祭実施中』であるとか、『1万円以上購入で送料無料』といった情報を組み込んでいくことも、広告配信においては重要だと考えます」
こうしてデータフィードが整ったところで、いよいよフィード広告の配信である。
データフィードを活用した広告、EC事業者はPLAへの対応を
データフィードを活用した広告配信は、大きく分けて2つ。「ディスプレイ広告」と「サーチ広告」である。
まず、ディスプレイ広告では、リターゲティングやオーディエンスターゲティング、アフィリエイトに活用されている。
「ダイナミックリターゲティングは、ユーザーがウェブサイトである商品を見ると、その閲覧情報をレコメンドエンジンに送り、レコメンドエンジンが溜まった情報をデータフィードに送り、ユーザーが見た商品以外もレコメンドして配信されるという仕組みです。各レコメンド事業者ごと配信する仕組みは異なりますが、『この商品を見た人は、こちらの商品も見ています』といったような、オススメ商品も配信されるのが特徴です」
次にサーチ広告だが、検索ワードに対して関連する商品を直接、検索結果で見せるというもの。代表的な広告に、Googleの商品リスト広告(PLA)がある。商品を検索すると、フィードを管理している「マーチャントセンター」から画像付きの広告がユーザーに対して配信されるというものだ。
ここで、ゲストスピーカーとしてグーグルの寺崎テレサさんが登壇。PLAについて詳しく解説した。
寺崎さんによれば、小売関連のGoogle検索数は、年間平均成長率30%で伸びており、PLAのクリック数は2年で2倍に。とくに、モバイルでのクリックが拡大していると言う。
「消費者が何かを知りたい、購入したい、と思った時に、瞬間的にスマホやパソコンを利用する習慣のことを『マイクロモーメント』と言います。この瞬間をいかにとらえるかが、ビジネスの鍵となっているわけです」
マイクロモーメントは大きく3つに分類でき、「知りたい」「行きたい」「買いたい」となる。とくに最後の「買いたい」に応えるのがPLAで、最近では商品レビューを追加することで、事前にユーザーの期待値をある程度コントロールすることで、さらに購買率がアップしているとのことだ。
「PLAを出稿するには、Googleのマーチャントセンターにフィードをアップロードしていただく必要があるのですが、その情報と検索クエリの関連性によって、PLAが表示されるか否かが決まります。この最適化に非常に手間がかかります。EC事業者様には、本業の『商売』に集中していただくためにも、ぜひマイクロアド様のような専門家に協力していただくことをオススメします」
寺崎さんの講演を受け、井上さんは「データフィードを活用したサーチ広告はこれから伸びていく領域。EC事業者様は、なるべく早くデータフィードを整え、フィード広告を配信していくことで、広告効果が得られるはず」と述べた。
フィード広告の未来「ユーザー情報×商品情報」
これまで、フィード広告で現時点において実現可能なことを見てきたが、井上さんは「今後重要になってくるのは、ユーザー情報と商品情報の掛け合わせだ」と言う。というのも、井上さんが広告主から寄せられる悩みに「新規ユーザーの獲得が難しい」があるが、その課題は、リターゲティング広告など、一度来訪・購入したことがあるユーザーを対象にした広告商品では解決が難しいからだ。
ユーザー情報と商品情報を掛けあわせることで、まだサイトに来訪していないユーザーにアプローチする。それを可能にするのが、「ダイナミックオーディエンスターゲティング」だ。
「マイクロアドでは、ユーザーがどんなサイトにどんなワードで訪れているかといったことから、興味、エリア、年代などを日々分析しています。それをもとに、ユーザーの趣味嗜好にあわせた商品リストを自動生成し、広告を配信することができます。これにより、他サイトの来訪履歴等を元に、未来訪だけれども興味を持ちそうな新規ユーザーを、サイトに呼ぶことができるわけです」
ダイナミックオーディエンスリターゲティングは、2015年7月にリリース。広告主の「新規ユーザーの獲得が難しい」に応えるサービスだけあって、同社のDSP『MicroAd BLADE』の配信のうち、2割を占めるに至っている。
フィード広告で新規ユーザーを獲得したアパレルECの事例
未来訪の新規ユーザーの獲得への貢献が期待できる、ダイナミックオーディエンスターゲティング。すでに実施したEC事業者は、次のように活用している。
「メンズアパレルをメインで取り扱うEC事業者様は、売上ランキング、ジャケット、価格、色を基準に商品リストを作成し、ファッション好き×男性×30代というユーザーに訴求し、CTRを2倍、CVRを1.5倍に向上されました」
新会社『MicroAd DFs』、新ツール『SKY』が提供する未来
こうした事例から、フィード広告にさらなる可能性を感じ、データフィードを用いたネットマーケティング支援を専門的に行う新会社『MicroAd DFs』を設立。
「『MicroAd DFs』では、データフィードの生成や加工を『SKY』というツールを使って無料で行い、配信や予算配分を自動化します。『SKY』の特徴は、配信実績を蓄積し、データフィードに活かせること。次のマーケティングの施策にも活かせるデータを、皆様にご提供できるかなと考えています」
さらに井上さんは、商品、広告主をまたいだ商品リストという未来を見ている。
「あるユーザーが興味を持つ、複数社の広告主様の商品を、あわせて提案していくような仕組みを作りたいなと思っています。『SKY』では、さまざまな広告主様のデータを管理していますから、そこで得たデータや実績を、広告主様をまたいで提供し、配信していく。その実績をまた『SKY』に戻し、拡張データとして使っていく。このような商品リストタイプのオーディエンスターゲティングができればと考えています」(了)