爆買いで終わらせない!越境ECで海外のお客様期待にも応える!
2015年10月14日(水)に目黒雅叙園で開催した「ECzine Day 2015 Autumn」。最後の特別セッションは、通販評論家の村山らむねさんがモデレートする「爆買いで終わらせない!越境ECで海外のお客様期待にも応える!」でした。
パネラーは、天猫国際や京東に出店して話題の「Tokyo Otaku Mode」、8月に越境ECをスタートした「Factelier(ファクトリエ)」、イギリスにポップアップショップを開いた「kay me(ケイミー)」から、それぞれの越境ECサイトを統括する方にご登壇いただきました。
パネリスト
- Tokyo Otaku Mode Inc. EC事業部 MDチーム マネージャー 吉見晋平さん(Tokyo Otaku Mode Premium Shop)
- ライフスタイルアクセント株式会社 ファクトリエ代表 山田敏夫さん(Factelier)
- maojian works 株式会社 代表取締役 毛見純子さん(kay me)
モデレーターを務めた通販評論家・村山らむねさん(有限会社スタイルビズ 代表取締役 青山直美)。慶応大学法学部卒。東芝、ネットマーケティングベンチャーを経て、消費者目線のマーケティング支援のスタイルビズ設立。企業のソーシャルメディア運営やeコマース関連のアドバイザーを務める。経済産業省消費経済審議会、ケンコーコム社外取締役等を歴任。日経BP「マーケティング最前線 スマホ・SNSでEC激変 専門家が説く最新販売手法」(共著)、日経MJ 奔流eビジネス 日経DUAL、ECzineなど連載多数。
「越境ECで成功するための最重要ポイント」とは
村山らむね いきなり直球勝負ですが、「越境ECで成功するための最重要ポイント」をお聞きしたいと思います。
吉見(TOM) やはり、そのサービス自体の強みをシンプルに研ぎ澄ますことだと思います。越境ECは、決済、配送、関税など取り組むべきことがすごく多いので、あれもこれも目が移りがちなんですが、いちばんはやはり強みに特化すること。
Tokyo Otaku Modeは、そもそもメディアとして立ち上がっていますから、日本のポップカルチャーをいかにおもしろく伝えていくか、そこを研ぎ澄ませています。それを続けてきたことで、お客様とのつながりが深まり、自然にECの伸びにもつながっています。
村山らむね 現在、Facebookページへのいいね!は1,800万ですよね。よく拝見するのですが、投稿に対して1,000くらいいいね!がついていると思ったら、それはシェアの見間違いだったり。ただ数が多いだけでなく、アクティブで熱いユーザーがついていらっしゃるなと感じています。それだけのファンがいれば、ECでも売れて当然だろうと思ってしまうのですが、いかがですか?
吉見(TOM) メディアのユーザーはアジアに多いのですが、購買されるお客様はGDPの高い北米が多く、客層が異なっています。そして、メディアとECでは運営方法も異なります。ECはウェブだけでは完結せず、配送や関税のステップがあり、運営が大変ではありますが、すべてのステップを丁寧に対応することが支持につながると考えています。
Tokyo Otaku Mode Inc. EC事業部 MDチーム マネージャー 吉見晋平さん。
楽天株式会社入社後、パッケージメディア事業部にて音楽・映像コンテンツに関するB2Cのバイイング業務に従事。事業開発を通し、商品戦略やサプライチェーン戦略を担当し、シンガポールにて海外ECを立ち上げ。2014年Tokyo Otaku Modeへ。日本のコンテンツを世界に発信するメディア運営、及びプロダクトの越境ECサイト運営を行う。現在は、EC事業部のMDマネージャーとして日本の商品を海外へ届ける。
◆Tokyo Otaku Mode Premium Shop
村山らむね kay meさんは6月に英国法人を作られて、ポップアップショップも現地で展開されましたね。「越境ECで成功するための最重要ポイント」いかがでしょうか。
毛見(kay me) ターゲットを絞り込んだビジネスをしていますので、越境ECとはいえ、そのお客様像を細部まで考え抜いて、忠実に施策を打っていくということでしょうか。たとえば、kay meのお客様は、医師や弁護士といった職業の方が多く、一般的なファッション誌よりビジネスメディアをお読みになる頻度のほうが高い。そうなると、わかりやすく例えれば、ファッション誌に広告、というより「日経新聞」に記事として取り上げていただくほうが見ていただきやすいのです。
セールも決してやらないのですが、それは時間を大切にされているお客様に、セールの時期を待ってお買い物をしていただきたくないから。明け方に数万円のスーツが売れることもあるのですが、その時お客様は、どんな気持ちでそのスーツを購入されたんだろう、お仕事お疲れ様です、といったヒューマンな部分も大事にして、サービスに活かしていきたいと考えています。
村山らむね お聞きしていると非常に納得するのですが、これまでの「売り手のルール」に縛られず、お客様だけ見ていらっしゃるからこその発想ですよね。ファクトリエさんの越境ECは、2015年の春に「やるぞ」と決断されて、8月にスタート。そのスピード感が素晴らしいと思うのですが、2ヶ月ほど運営されていかがですか?
山田(ファクトリエ) 大事なことは「やると決めたら徹底的にやる」「オープンマインドでいろんなところに手を出す」のふたつです。
まず「やると決めたら徹底的にやる」ですが、たとえば、中国、韓国、ヨーロッパなどを対象に国際商標を取得すると、200~300万円の投資が必要になります。サイトの翻訳についても、ファクトリエはページ数がかなり多いので、何百、何千ページの翻訳をやり切るのにも、労力とコストがかかります。海外の配送への対応も同様です。このように、さまざまなコストがかかってくるのですが、やると決めたら投資をして、徹底的にやる。
もうひとつの「オープンマインドでいろんなところに手を出す」ですが、オンライン試着サービスや、コードを入れるだけで多言語サイトになるサービスなど、新しいテクノロジーを積極的に採用していまして、それがサイトに来訪されたお客様が違和感なく、買いやすい状況を作り、通常のECの2~3倍のコンバージョンに結びついているのかなと考えています。
新しいテクノロジーに関しては、できるだけCEOに会って、なぜそのサービスを作るのか、どういう環境で作っているのかを直接聞かせてもらう。彼らはファクトリエを実験台みたいに使いたがっているから、コストはほぼゼロで導入できるんですね。そのようにオープンマインドで、将来、サービスが完成したら、月額何百万円になるかもしれない新しいサービスを破格で使わせてもらって、海外のお客様から見ても使いやすいサイトを作っています。
村山らむね お話を伺っていて、越境ECで成功するポイントは、商品やサイトによって異なるのだなと感じました。お三方とも、自社の商品やサイトを徹底的に理解し、その行くべき道が見えているところが強みでいらっしゃるんでしょうね。