地方を見ずして、店頭受取、オムニチャネルは実現できず
――そもそも、店頭受取を始めた理由とは?
メガネスーパーの自社ECサイトでは、コンタクトレンズが売れ筋商品の1つです。最初のきっかけは、実店舗にコンタクトレンズを買いに行った時、その日のうちに持ち帰れないのが不便だなと思ったこと。在庫リスクが高い商品なので仕方ないのですが、まるで受発注のような仕組みですよね。その不便さを解消するために、ECであらかじめ予約をしておけば、実店舗ですぐに受けとれるようにできないかと考えたんです。
社長にその旨提案したところ、「わかりにくいし、メリットはあるのか? シンプルに店頭受取にしたらいいんじゃないか」という指摘がありまして、確かにそうだなと。ちょっと、実店舗起点になりすぎていたのかもしれない。もう一度EC起点で考え直してみると、店頭受取のほうがシンプルでいいなと思い、今回の形になりました。
売上は、決済したところにつきます。ネットでフレームだけ決済して、受け取る際にレンズを実店舗で買ったら、フレームはEC、レンズは実店舗の売上ですが、社内の売上評価としては該当の実店舗にフレーム分もつけています。
――プロジェクトはどのように進めていかれたんですか?
ECチームで全体のフローを考えて、社内で提案をして、実店舗側から了承を得て進めていきました。店舗側からの抵抗は特別なく、何が起こるか具体的にイメージできないけれど、ついで買いの期待はできそう、という反応でしたかね。
その後、システム開発をして、テスト店舗で導入、5月1日から全国の約300店舗で開始しました。ECのシステム回りはecbeingさんにお願いしているのですが、すでに店頭受取の実績をいくつかお持ちだったので、苦労はなかったです。それよりも画面遷移をどうするといったユーザビリティにこだわりました。あとはいつもどおり、お金をできるだけかけない(笑)。
――利用状況はいかがですか?
まだ始めたばかりですが、東京駅近くの八重洲店や新宿駅近くの新宿中央東口店など、大都市圏を中心に利用が始まっています。理由をお尋ねすると、「なかなか自宅にいないので、ECで買っても受け取れないから」というのが多い。どうも、職場近くの店舗に受け取りに来てくださっているようです。そもそもネット通販の利用頻度も踏まえて考えると、まずは都市圏から広がっていくのではないでしょうか。
―― 店頭受取は、オムニチャネルの一部ですよね。目指す最終形とは?
最終的に目指している形として、まずはお客様から見て、実店舗とネットの差がないようにしたいと考えています。
当社側から見ると、実店舗とECがそれぞれ、双方の強みを活用して接客できるようになること。たとえば実店舗なら、その日に持ち帰れない商品を受け取りに店舗に来てもらうだけでなく、自宅への配送もご案内できるとか。ECなら、全チャネルの購買データを活用して、実店舗並みの接客ができるとか、いった具合です。
もう1つ、企業視点では、在庫をいかに効率的に回せるかも重要なポイントです。全国約300店舗の在庫を、ECを活用することで、全店舗で全社の在庫で売れるようになれば無駄がないですよね。そのためには、ECではタブーと言われている、店舗の在庫を常に引き当てられるようにしないと。