AIは「新人スタッフ」挨拶から47都道府県のギフト提案まで教育
━━AIを導入する際、どのような考え方を最も重要視されましたか?
三浦 「AIにすべてを任せる」という姿勢を捨て、「AIと共に僕らも成長する」という構造を作ることを大切にしました。AIを一人の新人スタッフとして迎え入れ、共に育っていく。そんな「人として接する」考え方を根底に置きました。
人を育てるには時間がかかります。初心者からベテラン、そしてトップ販売員へと成長するステップがあるように、AIにも学習を積み重ね、1対1の最適な答えをカスタマイズして出せる状態を丁寧に作り込んでいます。
実際、社内ではAIエージェントに「人の名前」に近いIDを付けて管理しており、どのエージェントがどう成長したかを評価できるようにしています。
━━具体的には、どのような接客シナリオをAIに学習させているのでしょうか。
三浦 まずは挨拶から入り、「最近寒くなりましたね」といった季節感のある会話から、最適な商品を提案する。このように、お店の接客のようなやり取りを意識しています。
特筆すべきは、私たちのブランドの特徴である「47都道府県の職人と作るマグカップ」を活かした提案です。たとえば「今は東京で働いているけれど、仙台の両親に宮城の職人が作ったものをプレゼントしたい」といったお客様の背景に対し、地域性を踏まえた最適な回答を返す。
さらに進んで「宮城出身の夫と広島出身の妻の結婚祝いで、両方の地元のものをセットで贈りたい」といった、お客様のライフスタイルに踏み込んだ提案まで、理想の形として作り込んでいます。最終的には、クーポン配布やクロージングまでを会話の中でスムーズに行えるようになっています。
自分たちしか持ちえない情報の学習が接客レベルを上げる
━━技術的な側面での苦労や工夫はありましたか?
三浦 ただ世の中にある一般的な情報を学習させるだけでは、AIの回答は平均的なものになってしまい、差別化につながりません。
そこで重要になるのが、私たちしか持っていない「窯元の情報」や「職人の想い」といった一次情報を精査して与えることです。たとえば、焼き物の作り方は一見同じように見えて、江戸時代から続く情報統制の名残などで、地域によって微妙に発展の経緯が異なります。そうした「ネットに落ちていない深い知識」をAIに教えていくことが、独自の接客体験を生む鍵となります。
