リールとDMが生み出した、新たな体験とコミュニケーション
続いて味澤氏は、直近のInstagramのアップデートに焦点を当てて振り返った。近年のInstagramの成長を牽引しているのは、短尺動画機能の「リール」と「ダイレクトメッセージ機能(DM)」の2つだという。
リールは、Instagramの利用時間のうち、占める割合がすでに50%を超えている。また、リール動画をDMなどでリシェアする回数は、グローバルで1日あたり45億回と非常に多く、過去数年間で視聴時間が年率20%で伸びているという。
このリシェアの傾向について、味澤氏は以下のように語った。
「自分のフォロワーにプラットフォーム上でシェアをするだけではなく、DMを使い興味がある動画やおもしろい動画を1対1もしくはグループでシェアをすることが非常に広がってきている」
リールの浸透が、DMでのコミュニケーション活性化にもつながっていることがうかがえる。また、リールのリシェアにとどまらず、写真や動画をシェアするためにも、DM機能が頻繁に使われている。
Metaではこうしたトレンドを踏まえたプロダクト開発にも注力。2025年9月には、iPad専用アプリがローンチされた。iPadの大きな画面で動画を楽しめるよう、アプリを開くと最初にリールが表示されるデザインとなっており、リールに最適化されたアプリだという。
さらにモバイルアプリについても、利用者がリールとDMによりアクセスしやすくなるよう、アプリ内のタブの順番を変更するテストが日本を含む全世界で開始される予定だ。結果が良ければ正式に導入される見込みである。
今後の戦略の中心はAIによるユーザー体験と広告効果の向上
今後のInstagramの戦略の中心となるのはAIである。Metaは大規模言語モデル「Llama(ラマ)」や「Meta AI」、そしてスマートグラスの「Meta AIグラス」の開発など、AIに大きな投資を継続しており、InstagramにおいてもAIによってユーザー体験を向上させる取り組みを進めている。
AI活用の柱の1つが、レコメンデーションと検索機能の精度向上である。AIの進化に伴い、興味関心に合わせたレコメンドの精度が向上し、Instagramの利用時間が前年比で6%増加しているという。
また、利用者が自身で興味のあるトピックについてフィードバックすることで、AIが学習し、アルゴリズムが変更される仕組みも開発中だ。
検索においても、すでに一部の国でMeta AIが検索画面に組み込まれており、検索結果の精度向上や要約、AIエージェントとしての質問・やり取りが可能となっている。
味澤氏は、日本市場での検索利用が多いことから、Meta AIで検索する機能の日本への導入も検討していると述べた。

2つ目の柱は、AIによる広告効果の改善である。Metaの広告テクノロジーに投資した1ドルあたりの広告費用対効果(ROAS)は平均で3.71ドルと、3倍を超える成果が出ている。さらに、自動化されたAIによる広告配信プロダクト「Advantage+キャンペーン」を活用した際、獲得単価(CPA)が9%改善された事例も示された。
3つ目の柱は、クリエイティブ関連のツールだ。Instagramの原点であるクリエイティビティを最大限に発揮できるよう、AIを活用したプロダクト開発が進められている。Meta AIが提供する画像・動画の編集機能「Restyle with Meta AI」がその一例である。動画の音声翻訳機能「Meta AI Voice Translations」についても紹介された。これは話者の声や話し方、唇の動きを維持したまま動画を翻訳できる画期的な機能だ。
どの機能も海外で先行リリースされており、現時点での日本導入時期は未定だが、今後AIを駆使してInstagram上の動画や画像、広告クリエイティブの生成がより行いやすくなる見込みだ。
最後に味澤氏は、「Instagramはクリエイティビティに一番の価値を置いている。そして、興味・関心につながることができることが原点」と改めて強調した上で、今後の展望について語りセッションを締めくくった。
「今後もAIを含めた最新のテクノロジーを活用して、Instagramをご利用の皆様に価値のある体験を提供していきたいと思っております」
