2部門でファイナリスト、Brand Storytelling APACアワードを受賞
――最初にXnurtaの会社概要と、今回ファイナリストに選出された取り組みについて紹介いただけますでしょうか。
ケイラー Xnurtaは、中国を拠点とするエージェンシーSparkXGlobalが開発したツールを基盤とした企業です。広告戦略の運用自体はSparkXGlobalが行っておりますが、弊社はそのツールプロバイダーとして、本社をシアトルに置き、ヨーロッパやアジア圏にもサービスを提供しています。
日本市場へのツールプロバイダーとしての本格的な進出は2025年3月からと、まだ日が浅いのですが、グローバルでは長年にわたりAmazon Adsに関わっています。私自身も9年間、日米でAmazon Adsの運用に携わってきた経歴を持っています。
そして今回、Amazon Adsパートナーアワードでファイナリストに選出されたのは2つの事例です。一つはJackery Japan様との取り組みで、フルファネルでのAmazon Ads活用が評価された「2025 Full Funnel Advertising APACアワード」です。
もう一つはUGREEN様との事例で「2025 Brand Storytelling APACアワード」のファイナリストになりました。競合他社との差別化を図るブランディング戦略が評価された事例です。UGREEN様との事例に関しては、Brand Storytelling APACアワードを受賞することができました。どちらもAmazon Adsの購買シグナルを起点に、戦略的なアプローチを行ったことが成功の鍵となりました。
※Amazon Ads パートナーアワードは、デジタル広告における革新的な取り組みやイノベーションを推進したパートナーを称える表彰プログラムです。
Full Funnel Advertising部門は、フルファネルマーケティングにおける新たな基準を確立したパートナーを表彰するもので、XnurtaとJackery Japanの取り組みは、アッパーファネルのブランド構築とパフォーマンスマーケティングを統合した包括的なアプローチが評価されました。
Brand Storytelling部門は、キャンペーンの目標を実現させたパワフルなストーリーを通じて、優れた創造力がどのようにブランド認識を変え、オーディエンスとの感情的なつながりを築いたかを示したパートナーを表彰します。XnurtaとUGREENの取り組みは、複数のタッチポイントでゲーミングコミュニティとの繋がりを築いたファンファーストのストーリーテリングが評価されました。
AMC活用で国内市場に最適なオーディエンスを発見
――Jackery Japanは蓄電池などを提供しており、アメリカでは特に高いシェアをお持ちですが、日本市場ではどのような課題を抱えていらっしゃったのでしょうか。
ケイラー Jackery Japan様は、日本国内の大容量ポータブル電源の売上が伸び悩んでおり、より利益率の高い大容量製品の販売強化が喫緊の課題でした。
この課題を解決するために、我々が提案の柱としたのがAmazon Marketing Cloud(以下、AMC※)の活用です。これまでの広告運用はA/Bテストを繰り返し「手探り」の状態で効果の出るクリエイティブを見つけてきましたが、AMCでは様々なシグナルを活用することで、明確なインサイトを抽出できるようになります。
具体的には、これまでのAmazon内におけるJackery Japan様の商品購入者がどのようなオーディエンスカテゴリーに属しているのかを分析しました。その結果、大容量製品の購入者には「グランピング」に関心がある層と、「防災対策」に関心を持っている層が多いことが判明したのです。
※Amazon Marketing Cloud(AMC)とは
Amazonが提供する、クラウドベースのクリーンルーム。プライバシーを守りながら、Amazon Adsのファーストパーティーシグナルや広告主の持つシグナルを突合し、自社にあったオーディエンスを発見する、カスタムオーディエンスとして拡張配信に使うといったサポートをするソリューション。
――御社のツールを活用することで、AMCの分析も手軽に行えたとうかがっています。
ケイラー 我々が提供するツール「AMC Hub」は、カスタムクエリのテンプレートを備えており、ノーコードで必要なインサイトを簡単に、かつ迅速に抽出できます。このスピード感も提案の実現に大きく貢献しました。
広告費増加はわずか2%、注文数は83%増でROAS大幅改善
――「防災対策」や「グランピング」というインサイトをもとに、具体的にどのような施策を実行されたのでしょうか。また、その成果について詳しく教えてください。
ケイラー 抽出したインサイトに基づき、クリエイティブの最適化を徹底的に行いました。特に「防災対策」のニーズに応えるため、海外ではあまり使われない「地震などの災害時に家電が使える安心感」を訴求するクリエイティブを制作し、日本市場に合った訴求を心掛けました。
また、購入者のインサイトから女性の購入者が多いことも判明したため、女性を意識したクリエイティブも制作しました。さらに、Fire TVでの広告も活用して認知も拡大し、認知から購買まで一貫して同じメッセージに接触させるフルファネル戦略を徹底しました。

――認知獲得から購買まで、シームレスな体験設計を行ったのですね。定量的な成果はいかがでしたか?
ケイラー 結果として、注文数は83%増加し、ROASは135%改善しました。驚くべきは、この大幅な注文数増加に対して広告費の増加はわずか2%に抑えられた点です。これは、予算を大きく増やすことなく、オーディエンスやタッチポイントを最適化したことで、ROIを大幅に向上させることができたことを示しています。
また、AMCのインサイトから「動画広告の接触から21日後にコンバージョンが発生する傾向」があることも突き止めました。このインサイトをもとに、リマーケティングキャンペーンのタイミングを正確に合わせることで、無駄な広告費を徹底的に削減し、効率的な運用に繋げることができました。
Z世代へのリーチに最適なTwitchとFire TV
――UGREEN様との施策に関しては、実施に際しどのような課題があったのでしょうか。
ケイラー UGREEN様は国内で一定の市場シェアを獲得していましたが、競合他社と比較して、ブランドとしての「個性」や「ロイヤリティ」が低いという課題を抱えていました。そこで、ブランド力を強化し、特に若年層のロイヤリティを高める戦略を考えておりました。
その中で、UGREEN様は主力製品であるPC周辺機器と相性の良いZ世代をはじめとした若年層のゲーマーをオーディエンスに据え、人気ゲームタイトル「原神」とのコラボレーション商品を発売しました。この商品の認知並びにUGREEN様のブランディングを強化する施策を提案しました。
――具体的には、どのチャネルを活用してオーディエンスにアプローチしたのですか。
ケイラー Amazon Adsでは、ゲーマー層へのリーチに向いているサービスであるTwitchとFire TVの広告の活用を提案しました。TwitchはZ世代のゲーマーが多く集まるサービスであり、ゲームタイトルとのコラボレーション展開との相性も抜群です。
また、Fire TVはプライム会員の利用者が多く、統計的にも比較的世帯収入が高い傾向にあります。単なる認知だけでなく、ファンとしてグッズを購入してくれる層へのアッパーファネルでのアプローチに活用できると判断しました。
動画広告接触者の15%が検索、その施策の裏側に迫る
――TwitchとFire TVで、Z世代に響くようにどのようなクリエイティブや配信設計を工夫されたのでしょうか。
ケイラー クリエイティブは主に2種類を用意しました。一つは「原神」のキャラクターとコラボ商品が流れる、シンプルな機能訴求型の動画です。もう一つは、あえて高画質を避け、昔懐かしのゲームにあるような8ビット調のドット絵を採用した、ゲーム感を強調するクリエイティブです。

この8ビット調クリエイティブは、Z世代にとって「昔っぽさ」が逆に新鮮に映り、高いエンゲージメントを獲得できました。配信設計では、動画広告を閲覧したオーディエンスをAMCで抽出し、その層にディスプレイ広告でリマーケティングを行いました。
この際、スポンサー広告でもカスタム画像を活用し、オーガニック検索結果に並んだ際も「原神」の世界観を視覚的に強調することで、認知から検討・購入への流れをシームレスに繋げました。

――得られた成果について教えてください。
ケイラー Twitchでの動画広告のCTRは、カテゴリーのベンチマークを大きく上回りました。また、Amazon内のブランド検索数を調査したところ、動画広告の接触者のうち、なんと15%が「原神+UGREEN製品名」といったブランドキーワードを検索していたことが判明しました。
ゲームタイトルとのコラボレーションに合わせたチャネル、そしてAMCを活用したデータドリブンなアプローチが、ロイヤリティの低い層に対して明確な効果を発揮した事例と言えます。
Amazon Adsの運用に関して最も信頼されるパートナーに
――最後に、Amazon Ads運用におけるXnurta様の強みと、今後の展望についてお聞かせください。
ケイラー 弊社の最大の強みは、グローバル単位でナレッジを共有している点です。中国の運用チームはアメリカをはじめとする様々な市場の運用を支援しており、豊富な経験を持っています。その知見は日本市場でも活かされています。
そして、我々の強みは、人の知見だけでなく、テクノロジーを駆使したサポートにあります。過去にAmazon Ads パートナーアワードの「テクノロジーイノベーションアワード」を2年連続(2023年、2024年)で受賞しており、Amazon Adsに関してはイノベーションの最前線を走っていると自負しています。この受賞は、スポンサー広告のAI最適化エージェントや、AMC Hubによるレポーティング・オーディエンス作成の自動化が評価されたものです。
さらに、Amazon DSPのAI最適化ソリューションも開発しており、時間帯別の予算調整や入札額調整などをAIでコントロールできるようにしています。また、LLMを活用したレポーティングエージェントも開発しており、チャットで求めるレポートを自動で作成し、インサイトまで提示することで、広告代理店様の工数削減にも貢献しています。
今後の展望に関しては、グローバルで「Amazon Adsの運用で最も信頼されるパートナー」になることを目指しています。日本市場においては、弊社の最先端テクノロジーを日本の広告代理店様にも活用していただき、広告主様のパフォーマンスを向上させることに注力したいと考えています。

