AIはあくまで「言葉の計算機」 推論させないように情報を置こう
河野 ちなみに、世の中的にはAIに対してまだ“大きな誤解”があると思うんですよね。AIの回答が高度になっているので、つい「AIは考えている」と捉えたくなりますが、実際のところは「言葉の計算機」です。言葉を計算して「次に来る言葉はこれだろう」と予測して出力しているだけで、その背景や意味までは理解していませんから。「これは本当に求められているのか」「なぜそれが必要なのか」といった本質的な問いに対する回答は、AIには難しいんです。
森野 AIは「わかりません」って言いたくないから、無理にでも答えを出そうとしますよね。いきなり文脈と関係ないことを言い出したりもしますし。かといって、プロンプトを細かく書きすぎると欲しい答えが出てこないこともあります。
河野 わからないから無理やり答えを作ろうとした結果起こるのが、いわゆるハルシネーションです。情報に隙間があると、AIは勝手に推論してしまうんですよ。なので、AIには正確さよりも一定の“ゆるさ”を求めたほうが早く答えにたどり着くケースもあります。不思議ですよね。
森野 たとえば、買いたいものがあってAIに聞く場合、どうすると良いのでしょうか。パソコンなどスペックが明らかなものは「Windows11のパソコンでどれがおすすめですか?」といった質問から会話を重ねて自分に合った答えに近づいていけそうですが、自分のセンスや直感で選ぶような商品はAIとの会話が長くなって「もうGoogleで検索したほうが早いんじゃない?」なんて思ってしまいそうです。
河野 大前提として認識しておきたいのが、AIは「考えるための補助ツール」であって、「何でも答えてくれる魔法の箱」ではないということです。AIは、ある程度知識があって「まずはざっくり全体像を作れないかな?」「これで合っているかな?」「見落としはないかな?」と確認したいときに役立ちます。パソコンを買うにしても、どれを選べば良いか全然わからないレベルなら店頭で相談したほうが早いですが、選ぶ決め手が明確であればAIは答えを導き出せます。
森野 「今の売れ筋は?」や「動画編集におすすめのパソコンは?」といった聞き方をすれば、参考になる情報が出てきそうということですね。
河野 商品を探すにせよ、疑問を解決するにせよ、AIに聞く前に「自分は何を知りたいのか」を明確にするのが大切です。
(後編では、AI時代の中小ECの戦い方や広告・コミュニケーション戦略について語っていきます)
