年間接触頻度が約2回→最大6回に カスタマージャーニー変革5年の軌跡をたどる
オートバックスセブンは、理想的なカスタマージャーニーを描くため、段階的かつ戦略的にデジタル基盤の構築・リニューアルを進めてきた。その中核をなすのが、オンライン上の導線リニューアルと顧客情報基盤(CDP)の構築である。
「まず私たちは『SAP Commerce Cloud』を用いてECサイトの再構築を行いました。2020年から2021年にかけて段階的にリリースしています。
さらに、オンライン上に新たな導線を生むため、2023年にはアプリを起点とした新会員制度を導入しています。同年にモビリティライフ情報サービス『MOBILA』も立ち上げました」

アプリにはオイル交換やタイヤ交換、車検といった車のメンテナンス予約ができるサービスを搭載。従来は電話予約など煩雑だった手続きを、いつでもどこからでもできるようにすることで体験を向上している。
「MOBILAは、単に商品紹介や宣伝をするのではなく、顧客のモビリティライフに寄り添うオウンドメディアとして立ち上げました。こうしたタッチポイントの増強により、従来は購買でしか得られなかった顧客の年間接触頻度を、4回~6回へと引き上げています」
チャネル増強とCDP構築 両輪で回してわかった“データ活用の本質”とは
CDP構築についても、横断型組織「データマネジメントセンタープロジェクト」を立ち上げ、タッチポイント増強と併せて取り組んできたオートバックスセブングループ。ECサイト再構築後の2022年にCDPの本格利用を開始し、ECサイトやその後に生まれたアプリ、MOBILAから得られるオンライン上の行動・購買データと、実店舗(オフライン)での購買・サービス利用履歴を「SAP Customer Data Cloud」を用いて統合。顧客の解像度を高めることにも成功している。
「実際に取り組んでみて、オートバックスセブンにおいては、“人だけ”もしくは“車だけ”を追いかけても意味がないとわかりました。たとえば、同じ車種に乗っていても毎日車を運転する人と、週末にしか運転しない人ではライフスタイルが大きく異なります。また、車を複数台持つお客様もいらっしゃるので、一人ひとりに最適化したコミュニケーションをするには、どちらもかけ合わせたデータマネジメントが必要です」

このような発見を得られたのも、オンラインチャネルの増強とCDPの立ち上げを同時並行で行ったからこそだ。則末氏は「ここがこのプロジェクトの重要なポイント」と強調し、次のように説明をした。
「データを蓄積・統合し、顧客によりパーソナライズされたサービスを提供するには、シナリオを描いた上で戦略的なプロセスを踏む必要があります。
まずはオートバックスセブンに足りなかったデジタル接点を創出し、データを貯め込む場を作り、分析環境を整える。収集と分析の場が整った上で、さらなるチャネル増強とデータのマージ、利活用を行っていく。実際にやってみて、『オンオフ統合されたカスタマージャーニーを構築し、得られたデータを活用する』といった教科書通りの取り組みをするだけでも、大変な苦労があることがわかりました」
