業種や商品は変われど、共通する「EC売上アップの本質」
実際に、2社にわたってEC事業に携わり成果を上げてきた経験上、業界や商品特性、企業規模によって具体的なやりかたに味付けは必要なものの、「共通する本質」が存在すると考えています。それは、以下の「3つの要素の掛け算」です。
難しいことをシンプルに考える。特に、一見複雑に見え、他者を巻き込む必要があるECの戦略こそ、シンプルなほうが他者にも伝わりやすく、結果が出やすいと考えます。
この方程式は、昨年、あるセミナーで登壇させていただくにあたり、前職のレディースアパレルのEC事業を2倍以上にし、メガネスーパーの自社ECを1.7倍にした過程で何をやってきたかを体系化しまとめたものです。当時も、方程式のそれぞれの要素を意識していましたが、現在、私はこの方程式を明確に意識して日々事業に取り組んでいます。
世間一般のEC売上アップのためのノウハウやコンサルティングは、「集客」に集中しています。いわゆるWEBマーケティングの領域です。これに対して、今回の方程式のポイントは、「販売手法×在庫(MD)」を整えること、すなわち、「売れるお店」にしてから集客を増やすということです。では、それぞれ詳しく解説していきます。
要素その1:「販売手法」軸の戦略・施策とは
ここで言う販売手法とは、EC上での販売に関わるあらゆることを指しています。例えば、販売促進に関わる施策から、デザインやUIのようなECサイトの店構え、また実現したい販売施策を行うためのシステム改修といったサイトの裏側の部分まで含みます。重要なポイントは以下の3つです。
販売手法における3つの重要ポイント
- 「実店舗での購入体験」に近づけられているか
- ユーザー目線に立った「サイトの表現」ができているか
- 予算(目標)達成のために「施策」を実行できているか
1.「実店舗での購入体験」に近づけられているか
実店舗ありきのECは、「ユーザーの購入体験」は実店舗が基準になっています。「ECで購入してもらう付加価値」のことを考える以前に、実店舗と違う部分があると違和感が出てしまうということです。
具体的には、販売開始日、キャンペーン、実店舗で行っている売りかた、店舗(ブランド)の見えかたなどをできる限り合わせることで、「実店舗での購入体験」に近づいていくと考えています。
2.ユーザー目線に立った「サイトの表現」ができているか
ユーザーは正直なので、理解できない表現のバナーはクリックしてくれませんし、購入しづらいサイトでは離脱をしてしまいます。それを細かく分析していく以前に、「自分がターゲットユーザーとしてこのサイトを使うとしたら情報が伝わるか、買いやすいか」ということを考えて、それをサイトの表現に落とし込んでいく必要があります。
実際に、ECのユーザーに直接聞いてみるのも良いでしょう。例えば、以前勤務していたレディースアパレルでは、少数ながらも『「SOLD OUT」って何?』というご意見をいただき、衝撃を受けたことを覚えています。SOLD OUTの表記は変更しませんでしたが、バナーなどではなるべく英字を使わないようにしました。
3.予算(目標)達成のために「施策」を実行できているか
事業としての結果を出していくには、上記の2つを揃えたとしても、常に目標に対してアクション=施策を実行していく必要があります。目標意識が高く、実行力があるほど、EC事業の実力がついていきます。
ECのいいところとして、なりゆきでどれくらいの売上が取れるかを予測しやすいという側面があり、目標値と成り行きの数字の差額を埋めるために施策を行えばよいのです。無論、何も手を打たなければ成り行きの数字のままでしょう。
例えば、わかりやすい値下げ施策としては、クーポン配布、滞留在庫の値下げなどがありますが、バナーに変化をつける、見られているページからの導線を増やす、おまけ(ノベルティ)をつけるなど値下げ以外の方法もあります。