ライブ前日に商品不良のトラブル 解決できた理由は
──現在は、旅客機の空きスペースを活用した配送を取り入れていると伺いました。何がメリットなのでしょうか。
梶井 2024年9月頃から、株式会社ロジレスが全日本空輸株式会社(ANA)とともに提供している「ロジレス便」を通じて、航空便を組み合わせた配送を行っています。貨物専用の航空機ではなく、搭乗客の荷物を入れる旅客機の貨物室の空きスペースに商品を載せて運ぶサービスです。活用するのは、主に関東から関西、中四国、九州に向けた出荷。倉庫から空港、空港から配送先といった前後の工程は、ロジレス側で大手配送キャリアや地場の運送会社を組み合わせています。
基本的に混載便のため、当社の商品でスペースが埋まることもありますし、他社の商品と一緒に運んでもらうケースもあります。その分、コストが抑えられていますね。また、受注から発送までをシステムで一元管理することで、日中の旅客機の空きスペースを活用できるため、長距離トラックで最初から最後まで運んでもらうよりもコストメリットが出ています。
梶田 私たちフルフィルメント事業部は、物流コストの削減とより高品質な配送の実現を目標に掲げています。ロジレス便の活用によって、2024年9月から1年間で約500万円のコスト削減を確認できています。
梶井 最初の導入の目的はコスト削減ですが、今となってはリードタイムの早さが最大の魅力ではないかと感じています。関東から中四国より西側へのリードタイムは、陸便で通常2日かかります。それが、航空便なら1日です。倉庫が作業日を1日長く確保できることはもちろん、いち早くお客様のもとに商品をお届けして、楽しんでいただけるという体験価値の向上にもつながります。
梶田 たとえば、あるアーティストのライブの直前に、お客様にお届けしたグッズが不良品だったと発覚したことがありました。航空便の選択肢があったため、無事にライブ前に商品をお届けできたのが印象的でしたね。
梶井 陸便しか選択肢がなければ、私自身が新幹線や飛行機で持参する可能性も考えていました。そのぐらい、求められるタイミングで商品をお届するのが大切な仕事です。
梶田 物流において、トラック以外の選択肢を持つのは重要です。物流の2024年問題にともないリードタイムの延長が生じたり、自然災害や天候不良で高速道路が封鎖されたりしても、航空便でカバーできるケースがあるからです。今回のケースだけでなく、将来の不確実性に備える意味でも、複数のルートを用意しておいたほうが良いと思います。
