売上が1億円の月もあれば、100万円の月も エンタメECの難しさ
──BEENOS Entertainmentは、エンタメ商材のECシステムの構築や運営を行うサービス「Groobee」を展開されています。EC運営に物流は欠かせない要素ですが、エンタメ商材を取り扱う上での難しさはありますか。
梶田 当社は、10年以上にわたって、アイドルのEC運営をサポートしてきました。近年は、アニメキャラクターのグッズなどIP関連の商材も取り扱っています。こうした商品は、ほかとは販売傾向が異なり、物流の波動が非常に大きいのが特徴です。ECサイトによっては、ある月には1億円以上もの売上が生まれる一方で、別の月には100万円程度にとどまることもあります。
梶井 圧倒的にSKU数が多く、多品種小ロットである点も特徴的ですね。たとえば、アイドルグループの画像・イラストを印刷したアクリルスタンドは、メンバーごとに制作されます。加えて、各メンバーでポーズが数パターン存在するため、アクリルスタンドだけで数十SKUになることも珍しくありません。
もちろん、ライブの時期にはほかにもグッズが販売されるため、1回の販売で多いときに300SKU以上もの商品を取り扱います。細かい点までこだわっているため、すぐに見分けがつきづらい商品もあり、取り違えないように配慮が必要です。
これらのグッズは、多くの場合、ライブ前に配送することが求められます。ペンライトがなければ、お客様がライブを全力で楽しめないですよね。また、CDであれば、オリコンチャートに反映されるため、商品がいつお客様に届くかがアーティストにとって非常に重要なのです。
こうした側面からも、エンタメ商材は素早く確実な配送が求められる世界。一部作業を外部倉庫に委託していますが、認識の齟齬を防ぐために密なコミュニケーションを行っています。
──そんな複雑な物流作業をスムーズにこなす上で、何が重要なのでしょうか。
梶井 1番は、倉庫側に「ここまで複雑な商材である」と前提を理解してもらうことです。倉庫側と毎週定例会を行い、商品のビジュアルや納品時の状態、納品日、販売スケジュールなどを細かく共有しています。ライブ前など出荷件数が多い場合には、2〜3ヵ月前から予定を伝え、作業スタッフの準備に備えてもらっています。
アナログかもしれませんが、顔を合わせてやり取りすることで「対応が難しい」というアラートも早めに上がってきます。クライアントや製造メーカーともコミュニケーションを取りながら、納品時期や物流作業の調整を行い、日々の業務を安定的に回しています。
梶田 短いリードタイムであっても、「配送が間に合いませんでした」とは決していえません。だからこそ、商品が届くところまでを一つのビジネスとして捉え、委託倉庫と連携してフルフィルメント体制を構築しているのです。
