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【リアル×オンラインのハイブリッド開催】ECzine Day 2025 October (2025.10.9)

300Bridge代表 藤原義昭氏と探る 小売×デジタルの次なる転換点

スタッフと一緒に挑戦していきたい パインバレー矢嶋氏が試行錯誤して見つけたローカル中小企業の戦い方

 コメ兵、ユナイテッドアローズでDXを推進した後に、現在は株式会社300Bridge 代表取締役として経営、事業戦略、デジタルに関する各社のサポートや情報発信を行う藤原義昭氏。同氏が2018年から2019年にかけて連載していた「オムニチャネルの次の話をしよう」が、アップデートして帰ってきました。連載第3回は元ビームス執行役員 DX推進室長で、現在は株式会社パインバレー 代表取締役社長を務める矢嶋正明氏と対談。後編は経営者になって見えたブランドや顧客体験の描き方、今後の展望について話を聞きました。

前編はこちら

「ESあってのCS」だからこそ取り組んだ意識醸成

藤原(300Bridge) 前編では、矢嶋さんがビームスからパインバレーに移られた経緯や、社長就任後に行ってきた施策についてお話いただきました。せっかく店舗にお邪魔して話を聞いているので、店舗とECの連携についてもお聞きしたいなと思うのですが、パインバレーのEC化率は現在何%程度なのでしょうか。

矢嶋(パインバレー) 約40%ですね。ハーレーのパーツはニッチな商材なので、全国のお客様からご注文いただくのですが、ECで購入される場合でもお電話で問い合わせをいただくケースが多いんです。「私のバイクにこのパーツはつけられますか?」といった、適合を確認する意味合いですね。

 安心してご購入いただくには、こうしたお電話にきちんと対応するのはもちろんですが、同時にECサイトの商品詳細ページの情報をわかりやすく工夫する必要があると考えました。スマホも含めてUI/UXを見直して、改めて商品情報も調べ直して掲載したら、問い合わせ件数が減ったんですよ。

株式会社パインバレー 代表取締役社長 矢嶋正明氏
株式会社パインバレー 代表取締役社長 矢嶋正明氏

藤原 そうすると、スタッフも他のことができますね。

矢嶋 そうなんです。スタッフの人数を増やさなくても、業務の生産性を上げられます。売上至上主義のままだとどうしても数字を追い求めてしまうので、ひたすら商品数を増やし、気づいたときにはスタッフのキャパを超え、全員が疲弊するような悪循環になります。なので「お客様の顧客体験をきちんと見直すと、結果的に自社の利益にもつながる」と伝え、KPIとアクションを一緒に変えていきました。

藤原 まさに、ビームスで培った考えそのものですね。

矢嶋 よく「ES(従業員満足度)とCS(顧客満足度)向上どちらから手をつけるべきか」といった議論を見かけますが、私はESの先にCSがあると思っています。なので、スタッフが安心して働ける職場作りや、頑張った結果がきちんと評価されるような人事制度の構築、業務の見える化や仕組み化を優先して取り組みました。

 パインバレーは、いわゆる趣味領域の商材を扱う会社なので「誰からどんな体験で買うか」が大事です。特に店舗スタッフは、お客様から“指名される人”を目指してほしいんですね。では「どんな人から買いたいか」と考えていくと、知識や経験も必要ですが、やはり「その会社やブランドが好きな人」「売り込みではなく信頼できる情報やサービスを提供してくれる人」「商品に対して愛がある人」に行き着くと思うんです。

藤原 とはいえ、売上至上主義というこれまでのスタイルが身についている人ほど、行動を変えるのは難しいのではないでしょうか。

矢嶋 スタッフともたくさん話すように心がけました。従来のやり方を変えるときはもちろんですが、2024年度の決算が出た際も「残念ながら売上は減収だったけど、大きく増益して黒字化を達成しました」と結果を伝えるだけでなく、「筋肉質な経営体質を目指す取り組みが、こういう数字に表れています」と因果関係も含めて説明しています。まだまだ道半ばですが、少しずつ変化の兆しは見えていると思います。

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ものを売るのは“全員野球” 目指すは「顔が見えるハーレー屋」

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この記事の著者

ECzine編集部 木原 静香(キハラシズカ)

立教大学現代心理学部映像身体学科卒業後、広告制作会社、不動産情報サイトのコンテンツ編集、人材企業のオウンドメディア編集を経験し、2019年に翔泳社に入社。コマースビジネスに携わる方向けのウェブメディア「ECzine」の編集・企画・運営に携わる。2025年4月1日より、ECzine 副編集長を務める。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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