ブランドを意識されづらいコンビニ業界 選ばれる決め手は
コンビニエンスストアといえば、もはや日本の文化の一部といって良いだろう。大手がしのぎを削る、競争が激しい市場。その名のとおり、多くの消費者が利便性に魅力を感じて利用する。言い方を変えると、個性を際立たせた差別化は容易ではない。それでも独自路線を見つけ出したのが、ファミリーマートだ。同社の小竹氏が「NRF 2025 APAC」で裏側を明かした。

同社は、2019年より「コンビニエンスウェア」としてアパレル商品を拡充。ハンカチや下着といった小物のみならず、Tシャツ、パンツなど実店舗の一角がアパレルショップと化している。中でも同社のコーポレートカラーが入ったラインソックスは、2025年2月末時点での累計販売数が2,400万足を超えた。
こうした取り組みにより「厳しい市場環境にもかかわらず事業は非常に好調」と小竹氏は話す。2025年5月度の営業報告によれば、45ヵ月連続で既存店の日商が前年を上回り、過去最高益を記録した。背景にあるのが、まさに独自路線の開拓だ。
「日本のコンビニ業界は模倣の海です。大手コンビニチェーン同士が、お互いの施策や商品を真似し合って競争してきました。ほとんどの消費者は、他カテゴリーと比較するとコンビニのブランド名をさほど意識していません。そんな中で頭一つ抜け出るにはどうすれば良いか。私たちが見出した答えは、独自の商品やサービスを生み出すことでした」(小竹氏)
近年、ファミリーマートは“コラボレーション”を重視してきた。コンビニエンスウェアのクリエイティブディレクターに、「NIKE」などと協業した経験があるファッションデザイナー・落合宏理氏を起用。さらに2025年2月には、ライフスタイルブランド「HUMAN MADE」の創業者・NIGO氏との連携を発表した。次世代店舗の創造、マーケティングキャンペーン、新商品のデザイン、オリジナル音楽やオリジナルキャラクターフィギュアの制作など、多様な分野で協業する予定となっている。
「これが、ファミリーマートが小売業界で地位を確立する上での“ゲームチェンジャー”となるでしょう。従来の枠組みを飛び越え、コンビニをライフスタイル“インフラ”へと進化させます」(小竹氏)
実際、クリエイターの力を借りることで同社のアパレル事業は大きく拡大している。今後は、毎年少なくとも30%ずつ売上を伸ばす計画だ。