不正が疑われた人の75%が実は優良顧客? 家電など2つの事例で学ぶ
──実際に決済の改善に成功した事例を教えてください。
元重 「BAKUNE」などリカバリーウェアを展開するウェルネスブランド「TENTIAL」が良い例です。TENTIALは2019年の販売開始以降、D2Cブランドとして大きな成長を遂げました。そして、同ブランドを運営する株式会社TENTIALは2025年2月、東京証券取引所グロース市場への新規上場を果たしています。
そんな同ブランドは以前、不正利用の被害に悩まされていました。その解決のために「Stripe Radar」を活用しています。ダッシュボードで決済購入率などのデータを分析し、不正利用を的確にブロック。導入から半年で、約2億円もの不正利用を削減しました。仮に改善しないままだった場合、同額の損失が出ていたことになります。

──約2億円の損失とは、非常に大きな数字ですね。不正利用をどのようにブロックしたのでしょうか。
元重 企業によって、被害の特徴は様々です。どのような行動をしているユーザーが不正利用なのか、ダッシュボードで見極める必要があります。その上で、ブロックする条件を細かくカスタマイズするのがポイントです。たとえば「突然大量購入している」「1度の購入単価が異常に高い」「違うカード番号で何度も決済を試みている」といった行動は、不正利用が疑われます。
不正利用をブロックする際に注意したいのは、優良顧客まで排除しないようにすることです。当社のデータでは、不正利用の疑いによって購入がブロックされた人のうち、実は75%が正当な顧客だったと明らかになっています。大まかな条件だと、本当は購入意欲が高い顧客まで決済ができなくなってしまいます。実際の不正利用の特徴を分析した上で、ルールを決めなければなりません。
最近では「特定の国のクレジットカードだと不正利用の可能性が高い」というケースもあります。世界規模でEC購入が当たり前となっている現在は、企業側が意図しなくても、他国からECサイトを閲覧されているかもしれません。海外から不正利用の対象として狙われることもあり得ます。さらに、そのトレンドも常に移り変わっています。

──特に注意が必要な商品カテゴリーはありますか。
元重 家電のような高額商品は、不正利用のターゲットになりやすいです。これも良い事例があります。韓国の家電メーカー・LGエレクトロニクスの日本法人、LGエレクトロニクス・ジャパン株式会社です。
同社は、日本向けに自社ECサイトを立ち上げた際、当社の決済プラットフォームを導入しました。有償サポートを通じて、当社の専任担当者が一緒にダッシュボードを確認。不正利用対策ツール「Stripe Radar for Teams」の設定など、自社ECサイトに必要な対策・チューニングを実施しました。また、クレジットカードでの決済時に本人確認を行う3Dセキュアにおいても、必要なときに認証がしっかり実施されるよう、細かなルールを設定しています。その結果、有償サポートの利用期間中には、チャージバックの発生はゼロに。決済成功率も、90%近くにまで改善しました。
当社は、このような支援によって、世界100万社以上の決済データを蓄積しています。同じ商品カテゴリーで、どのようなユーザーが不正をはたらいているのか、パターンをつかみノウハウとして貯めてきました。そのデータベースにもとづいて、クレジットカード利用者のリスクを判定したり、各社のルール設定を支援したりすることが可能です。