韓国の“今”がわかる聖水を探訪 ブランド思想が見える3店舗を紹介
今回の視察では、近年ソウルの若者に注目を集めるスポット・聖水(ソンス)にも訪れることができた。興味深い体験創出を行う店舗を中心に、いくつかピックアップしてお届けする。
最先端ロボットがその場で商品をカスタマイズする「AMORE聖水」

1945年に設立され、韓国で最も歴史が長いK-Beauty企業といわれるアモーレパシフィック。コスメに限らずアートなどの「美」も追求し、アートミュージアムの運営なども行っている同社は、2019年10月より体験型フラッグシップストア「AMORE聖水」を展開している。

同店は2階建てで、アートミュージアムを巡るように建物内を歩きながらアモーレパシフィックが展開する全ブランドの商品を手に取って試せるほか、自分だけのオリジナルリップやファンデーションが作れるブースも用意されている。

同店舗で興味深かったのは、入場時にスマートフォンでチェックインを行うとその場でクーポンが発行されるだけでなく、退店時に購入の有無に関わらず、その月限定のサンプルが配布された点だ。日本であれば、購入時に類似商品や新商品のサンプルを配布するのが一般的だが、ここでは「体験」そのものに対するリワードとしてサンプル提供がなされており、店舗のコンセプトそのものを体感できた。
あえて常設店の近隣で展開 hince「ロウグロウデューイーボール」POPUP STORE
聖水にはK-Beautyブランドの路面店が多数出店されているが、この時期に常設店とは別にPOPUP STOREを展開していたのがhinceだ。同ブランドは、新商品のツヤバーム「ロウグロウデューイーボール」を2025年3月15日に発売。このPOPUP STOREは、常設店と異なるトンマナで新たな顧客層を開拓すべく、同じ聖水内にスペースを構えたという。



日本同様、編み物などのDIYブームが起きている韓国。POPUP STORE内でも、来店特典としてノベルティのポーチにつけるストラップを作れるブースが用意されていた
「もしかすると、これまでのhinceは消費者の方からすると少しシックな印象があったかもしれませんが、ロウグロウデューイーボールはグリーンとピンクをテーマカラーとし、これまでのイメージとは一線を画すような展開を行っています。新たなhinceの顔をお見せするために、常設店の一角での展開ではなく、POPUP STOREを開催しました」(hince担当者・YUN氏)
ロウグロウデューイーボールの展開にあたり、日本ではQoo10のセール施策「メガ割」開催前日の2025年2月27日より先行販売を実施。hinceの担当者いわく「日本での商品・販売戦略は、ほぼメガ割合わせで考えている」とのことで、やはりQoo10は日本への販路拡大において欠かせない存在となっているようだ。
日本発ブランドも路面店を出店 「SHIRO Seongsu」

聖水は、韓国屈指のおしゃれスポットとして近年、国内外を問わずトレンドを扱うブランドがこぞって出店を進めている。日本発のブランドも例外ではなく、2025年4月26日にはSHIROがイギリス・ロンドン、台湾・台北に次ぐ世界3店舗目として、聖水に路面店「SHIRO Seongsu」をオープンした。筆者が来韓した際にはまだ建設中だったが、人気ブランドが軒を連ねる好立地に同店は位置していた。きっと、オープン後は多くの人々が訪れるスポットとなっているのだろう。
2000年初頭まで工業地帯として発展していた聖水は、近年多くの建物がリノベーションされ、アート・カフェ・ファッションの街として伝統を守りながらも刷新されている。この5年ほどでK-Beauty産業が大きく盛り上がったように、これからも驚くべき速さで進化を遂げていくはずだ。仕事・旅行などで韓国を訪れる際はぜひこうした街を歩き、全身でトレンドを体感してみると良いだろう。店舗やブランドの世界観作りなどに役立てられるポイントが、きっと見つかるはずだ。