「本物らしさ」が強みになる 日本製品が伝えるべき価値とは
中国の安価な製品が多く流通する市場で競争するには、否が応でも相対的なポジションを取る必要があります。その際に重要な要素の一つが、価格戦略です。中国製品に対抗して、同じように安価な価格で販売する、あるいは良いモノを相応の値段で販売します。
次のグラフは、世界の消費者を対象とした、越境ECでの1回あたりの平均購入金額に関するアンケート結果です。1,600円以下が8%、1,600円~4,000円が21%となっており、合計すると4,000円以内は30%程度に過ぎません。
一方で、1万2,000円~1万6,000円は11%、1万6,000円~2万4,000円は8%、2万4,000円~3万2,000円は5%、3万2,000円以上は6%となっています。1万2,000円以上がちょうど30%になるのです。つまり、安価な製品を好んで購入する消費者と、高額な製品を好んで購入する消費者数は、実は同程度だとわかります。こうした状況を踏まえて、日本企業の場合は、自信をもって良いモノを相応の価格設定で販売すべきだと私は考えています。

越境ECビジネスを展開するBeeCruiseの調査によると、海外消費者が越境ECで日本製品を購入する理由のトップは「自国で購入できないから(約80%)」です。同じく、越境ECビジネスを展開するZenGroupによるアンケートでも、「希少性」が日本から購入する理由の1位となっていました。

マーケティングの世界では、近年CEP(カテゴリーエントリポイント)が重要だといわれています。CEPとは、商品やサービスを購入する際に、消費者によって想起される状況や目的のことです。表に記述したとおり、「自国で購入できないから」「品質が良いから」「価格が安いから」といった理由の一つひとつが、CEPの要素だといえます。その中でも、「自国で購入できないから」や「希少性」は重要なポイントでしょう。
ただし、TemuやAliExpressなどを見てみると、中国製品であるにもかかわらず、あたかも日本製品であるかのように販売されているモノも多数存在します。また、昨今は機能や品質が向上している中国製品も多いです。こうした製品の存在を十分に認識しておく必要はあります。
模倣品ではなく、明らかに日本企業の製品であること、製品の効能・メリットなどを丁寧かつわかりやすく説明するのが大切です。たとえば、ショート動画で紹介するといったひと工夫があるだけでも、効果的なはずです。以前は言語が障壁となっていたかもしれませんが、今は生成AIによってスムーズに翻訳できる時代となっています。ショート動画でなくても、画像や文章で“伝える”。これで差がつくと思います。