「これからも越境ECの勢いは衰えない」といえる理由
次のグラフは、越境ECで購入経験のある9ヵ国の消費者1,000名を対象とした「越境ECで購入する理由」に関するアンケートの結果です。回答率のトップは「自国の製品と比較して手頃な価格だから」が47%となりました。次いで「そのブランドが多様な製品を提供しているから」が37%、「自国の製品より品質が良いから」が28%と続きます。それぞれの回答からキーワードを抽出するとしたら、「安い」「好きなブランド」「品質」でしょう。

私は、消費者が越境ECで購入する理由は、このアンケート項目以外にもいくつかあると考えています。一つは同じ言語圏です。たとえば英国、米国、オーストラリアのような英語圏同士だと、あまり言語の壁が気にならないため、消費者は購入しやすいでしょう。ほかにも、国同士の地理的な近いのも、配送時間が短くて済むため越境ECで購入しやすい理由の一つです。さらには、その国でしか手に入らない「希少性」も理由の一つでしょう。日本からフィギュアやキャラクターグッズが越境ECで数多く購入されていますが、まさにその代表例です。
このように、越境ECで購入する理由は多岐にわたります。これから先、越境ECの市場規模が大きく下落するような事態は、私は到底想像できません。
以上は、消費者の視点からの考察です。もちろん、販売側の視点でも越境EC市場規模が伸びる理由はあります。それは、自国内での売上が飽和してしまい、さらに売上を増加させるのが難しいケースです。たとえば、現在中国では景気の悪化により個人消費が伸び悩んでおり、大量の在庫を抱えている企業が多いと聞きます。必然的に、海外消費者に目が向くでしょう。

日本の個人消費額が約30年間横ばいで推移していることは、以前のコラムで述べたとおりです。ほかの先進国でも、どこかのタイミングで国内の小売市場が成熟化したり、一時的に停滞したりすることはあります。そのような状態をきっかけに、海外消費者に目を向け始める国々はこれから増えると私は見ています。これが、世界の越境EC市場規模がこれからも拡大すると予想できる根拠です。