この先も“実店舗が柱”は変わらない それでもEC事業を強化する理由
2024年2月に、「PLAZA」は「ライフスタイルストア」から「ライフモチベートブランド」へとリブランディングを実施した。新たなスローガンは「HEARTS UP!」。岡芹氏は「日常の心拍数を上げるようなブランド体験を提供したい」と話す。
リブランディングの1年前より、PLAZAが強化してきたのがオンライン接点だ。現在、全国に約140店舗の実店舗を展開する一方で、EC売上が拡大している。2024年11月に自社ECサイトを全面刷新すると、翌2025年3月にはコロナ禍でピークを迎えた2020年4月のEC売上を初めて上回った。2025年4月時点で、自社ECサイトの売上は前年同時期比の1.6倍、楽天市場の公式店舗は4倍に。EC売上合計では2倍に跳ね上がっている。

PLAZAのEC事業のスタートは早く、1999年からだ。しかし、あくまで実店舗を補完する位置づけにとどまっていた。「EC事業が成長しても実店舗が柱であることは変わらない」と岡芹氏は語る。
「当社にとって、実店舗の存在感は圧倒的です。その上で新たな顧客接点を創出する、お客様とつながる別の道もする。これが、EC事業を強化する目的です」(岡芹氏)

EC強化の裏には、社内での大きな体制変更がある。岡芹氏らが2023年4月にマーケティング本部を新設し、営業本部からEC部門を移管したのだ。
元々、EC部門は営業本部の傘下にあり、「ルミネ新宿店」といった高い売上をほこる実店舗と“横並び”で扱われていた。EC事業の売上や施策の成果が実店舗と比較されるため、数字だけを見れば「EC販売は需要があまりない」と判断されてしまう。結果的に、戦略的な投資対象としては優先度が低くなるという。そんな中、コロナ禍が小売業界のデジタル化を後押しし、PLAZAも顧客接点の多様化とOMO推進に本腰を入れ始めた。
「PLAZAは実店舗が主軸のため、オフラインでのマーケティングや販促に強みをもっています。その反面、オンライン上の施策に対する投資には積極的ではありませんでした。裏を返せば、社内的なリソースやスキル、ノウハウに伸びしろがあるともいえます」(岡芹氏)
ただし、体制を整えただけでは成果を見込めない。たとえば、人気商品の在庫を確保するにも、EC販路を「ニーズのある店舗」だと認識してもらう必要がある。こうしたハードルを乗り越え、社内をどう巻き込んでいったのだろうか。