海外のユーザーの反応を見ながら、求められる情報を発信した
――まず、Facebookページで1,700万いいね!超えというのが真似できないと思いますが、海外向けメディアとして成功した秘訣を教えてください。
「Facebookで始めたタイミングがよかったと思っています。僕らが始めた2011年頃を境に、日本やアジア地域で、Facebookユーザーが増えていったんです。国内の企業さんの多くは、ある程度ユーザーが増えたところで、日本のユーザー向けに日本語の情報を発信する、というふうにやっていったと思うんですが、僕らはそれより早く始めていて、しかも、日本から海外向けに英語で情報発信をしていたので、同じようなことをやっているところが他になかったんです。
その頃は、海外のユーザーさんたちが、日本のアニメのファンページを自分たちで作り、運営していました。『ドラゴンボール』や『ナルト』などの人気アニメのページや、そうした人気アニメのキャラクターごとのページなど、そういったファンページがたくさんあったんです。ニーズは確実にある、と思いました。彼らにとって『TOM』は、はじめはなんだかよくわからなかったけど、どうも、自分たちが知りたい情報を英語で発信しているページらしい、と認識してくれるようになった。そして、はじめは『ドラゴンボール』が好きだったんだけど、『TOM』で流れてくる別のアニメの情報もおもしろいね、というふうに広がっていったんだと思います。
それから、発信する情報ですね。海外にもいわゆる『オタク』な人たちがいて、感度高く日本のコアな情報を求めているんですけど、実は、もう少しライトな情報で満足している人たちもたくさんいます。だから、日本のオタク向けの情報をそのまま翻訳して発信すると、マニアックすぎるのかもしれない。
そもそも創業メンバーは、むしろオタクと言えないような人たちが集まっていたので、『この萌え系のコンテンツはすごく素晴らしいから、海外に伝えたいんだ』というような偏ったこだわりはなかったんです。海外のユーザーの反応を見て、出すコンテンツを変えていったのが成功の秘訣かもしれません。もし、創業メンバーに1人でもすごく詳しいオタクがいて、自分たちが出したいコンテンツだけを発信し続けていたら、ここまでこられていたか……。
日本のアニメやマンガは人気がありますが、海外のユーザーはそもそも『オタク』という言葉を知らない。言葉自体に先入観がないのであれば、ファッションや日本独自の文化もアリになってくる。日本人的な『オタク』でとらえると、『TOM』はオタクじゃないって言われるかもしれない」
――メディアとしてすでにファンがついている「TOM」で販売したい、という声はメーカー等から寄せられていますか?
「そうですね。実際にどういったユーザーが購入してくれているのか、海外では何が流行っているのかといったことに、すごく関心をお持ちです。一方で、そもそも日本での販売が大前提で、海外での販売について契約が結ばれていなかったり、先方の社内調整に時間がかかったりといったハードルもいくつかありますので、売りたいものがすべて売れるような状況とは言い難いです。それに関しては、僕らがきちんと『海外でも売れる』という実績を作っていく必要があると考えています」