実働3名で自社EC・複数モールを運営 体制構築の秘訣は?
2010年に自社ECを立ち上げ、当時の自社ブランド「にしきや」の販売を開始した同社だが、「需要が増えたきっかけはコロナ禍だった」と大場氏は振り返る。
「2020年頃から、巣ごもり需要やテレビ番組での紹介をきっかけに注文数が増加しました。こうした反響を踏まえ、2021年3月にはNISHIKIYA KITCHENへのリブランディングを実施。さらなる売上拡大を目指し、同年6月にはLINEギフトへ、そして2023年1月には楽天市場への出店を行っています。販路拡大とともに売上も増加し、2024年のEC売上は過去最高を記録しました」

表を見る限り、2021年比で約3倍のEC売上を記録する現在のにしき食品だが、驚くべきはその成長を支える組織体制だ。なんと、EC運営を担う通販部は4名(うち1名は育休中)で構成されているという。
「大手企業のように潤沢なリソースがないからこそ、チャネルごとの戦略最適化を実施し、限られた人員で対応できる体制を整えてきました。
自社ECとモールの棲み分けもその一つです。前者では、NISHIKIYA KITCHENで販売する全商品を取り扱い、ブランドのファンになってくださった方がいつでもどこからでも購入できる窓口として機能させています。一方、LINEギフトや楽天市場は認知拡大の場と位置づけ、利用者層の拡大や購入意欲の高いお客様との出会いを推進するアプローチを図っています」
“ある工夫”で売れなかった商品がヒット LINEギフトの商品企画成功例を共有
ここで大場氏は、NISHIKIYA KITCHENの飛躍的な成長に貢献したLINEギフトでの取り組みについて、解説を行った。

同モールでは、「売り場の特性に合わせた商品企画が鍵を握る」と大場氏は説明。一例として、LINEギフトの売上上位にランクインした経験もある「1人暮らし応援!カレー食べ比べセット」を紹介した。
「LINEギフト展開当初は『カレー3個セット』と名付けて販売していたのですが、まったく売れませんでした。ところが構成はそのままに、贈り手へ購入理由を明示できるような商品名にアレンジしたところ、売上が何倍にも伸びたのです。この経験から『週末おつカレーセット』など、LINEのトーク上で気軽に贈り合えるようなネーミングの工夫を施したところ、一定の成果を得られたので、商品企画の重要性を痛感しました」
また、商品だけを届けるのではなく、誕生日や母の日・クリスマスといったイベントに合わせたカード・シールを同梱するなど、贈り手のぬくもりを伝えられるような工夫を施したところ、2023年には「クリスマスに贈られた配送ギフト グルメ部門第1位」、2024年には「母の日に贈られた配送ギフト グルメ部門第3位」「ベストセラー グルメ部門第3位」などの好成績を獲得。「気軽に贈れるeギフトでありながらも、きちんと贈り物としての工夫を施すのが大事だとわかった」と同氏は振り返った。