「日本の商品は売れない」 なぜ言い切れるのか
現場で得たノウハウとIT投資の掛け合わせが強みのビィ・フォアード。オンラインを通じた取引によって売上を伸ばしてきた一方で、今でも“リアルな情報”を重視する姿勢は変わらない。たとえば、約280名の従業員のうち80名ほどのマーケターが、オフラインで得た顧客の要望を社内に共有。部門横断のミーティングで情報システム部やデジタルマーケティング部に、落とし込んでいく。
「オンラインで世界中に商品が売れるからといって、単に自社ECサイトに情報を掲載するだけでは、誰も閲覧しにきません。あくまでも、オフラインあってのオンラインです。お客様や取引先との直接的なコミュニケーションが、改善のヒントとなります」
海外展開の対象地域を拡大する際も、ビィ・フォアードの社員が何度も現地に訪れる。
「もちろん、事前に可能な範囲で市場調査は行います。その上で、現地の自動車関連会社にアプローチして、必ず訪問します。実際に現地の様子を見ることで、どのような商品やサービスが必要かわかるからです。ただし、多くのプロジェクトは失敗します。それでも、私たちは失敗を繰り返しながら事業成長してきました」
今まで様々な失敗を経験したからこそ、山川氏は「多くの日本の商品は想像以上に売れないと学んだ」と話す。ビィ・フォアードは、過去に新規事業としてスマートフォンやパソコン、ベビー用品の販売に挑戦したことがある。しかし、結果は芳しくなかった。その後、新規事業は撤退している。
「一部カテゴリーを除いて、商品の質の高さで日本は世界の国々に置いていかれています。国内では有名なメーカーの名前も、海外ではあまり知られていません。越境ECで人気な商品は、アニメキャラクターのフィギュアなど、ほとんどが日本独特のホビーグッズです。これらは商品単価があまり高くないため、大きく収益を伸ばすのはハードルが高いでしょう。本気で越境ECに取り組むならば、オンライン上にあふれる情報だけで判断せず、こうした状況を自分の目で確かめるべきです」
物流網の拡大に必要だったアフリカ現地でのブランディング
越境ECは、国内向けサービスに比べると物流に関連する負担が大きいといえる。たとえば、コストを抑えるために大量輸送を行う工夫などが求められるだろう。そんな中、ビィ・フォアードの場合は、特にアフリカで力を入れてきた“ブランディング”が効率的な物流体制の構築に生きた。
同社は、現地での広告出稿やオリジナルグッズの配布、SNSの活用を通じたプロモーションを積極的に行ってきた。その結果、認知が高まり中古車の注文数が増加。輸送時のボリュームディスカウントが適用されやすくなったという。また、安定して輸送を依頼することで、現地の物流企業などから信頼も得られた。
これにより増えるのが、自社で輸送手段をもたず荷主と直接契約して商品を届ける現地のフォワーダーなどからの契約希望だ。
「海外向けの物流は日本市場での常識が通用しません。取引のルーズさやエンドユーザーまでの輸送の遅れが目立つフォワーダーには、理由を伝えて任せる仕事量を調整しています。物流品質の担保が目的です」
認知と信頼の獲得によるメリットは、物流網の拡大とコスト削減だけではなかった。具体的には、前払い制度の導入が実現したのだ。
「アフリカ展開を始めた当初、商品代が振り込まれないケースは珍しくありませんでした。とはいえ、前払いの習慣がない地域で『事前に支払ってほしい』と依頼しても、現地のお客様からすれば不安ですよね。そのため、まずは認知と信頼を得ることが事業成長に必須でした」