過去の中古車情報をデータ化 IT投資が越境ECの道を切り拓いた
ビィ・フォアードが世界に輸出している中古車の数は、年間で約16万台(2024年6月期時点)にのぼる。創業初期より、最大の輸出先は人口増加と経済成長が見込まれるアフリカだ。販売方法は主に自社ECサイトで、多いときで月間6,000万PVを超えたこともあるという。その影響力から、過去には「なぜ日本のウェブサイトにアフリカからのアクセスが集まっているのか」と、当時のGoogle本社・副社長からヒアリングを受けた。
創業者である山川氏は、一貫して自動車販売に携わってきた。大学卒業後、日産東京販売株式会社に入社。1997年に中古自動車買取企業に転職した後、1999年、同社グループ内で独立し有限会社ワイズ山川を立ち上げた。ここでの経験が、海外展開につながる。
「ワイズ山川では、買い取った中古車をオークションに出品していました。そのとき、オークション会場に外国人バイヤーが多いことに気づいたのです。彼らは、日本の中古車を購入し、海外で販売して利益を上げていました。それならば、私も自ら買い取った中古品を直接海外向けに販売したい。そう考えたのが、ビィ・フォアード設立のきっかけです」
2004年にワイズ山川の中古自動車輸出部門を分社化し、ビィ・フォアードを立ち上げた山川氏。当時、国内の中古車販売はオフラインが主流だったが「同じことをしても競争に勝てない」と考え、自社ECサイトをオープンした。
「既に越境EC事業に参入している企業も数社ありましたが、お客様と相談して価格を決める『Ask』形態がほとんどでした。さらに、掲載している写真が5枚程度と少なく、商品の詳細がわかりづらい自社ECサイトばかりです。それにもかかわらず、問い合わせに丁寧に対応している企業は多くありません。だから私は逆のことをしよう、つまり商売人の基本である『顧客視点』を追求すると決めたのです。
今でも、自社ECサイトで全商品の価格を公開し、自社在庫の場合は写真を必ず35枚掲載しています。また、当初から17時までにいただいた問い合わせには、必ずその日中に返信するよう徹底してきました」
こうした取り組みと並行して、山川氏が重視してきたのがIT投資だ。仕入れと販売に関する山川氏のスキルとノウハウをデータ化。仕入れる商品の査定・判断の作業を半自動化している。
「以前は私がオークション会場に足を運び、1日に200台ほどの中古車を落札していました。元々現場に出るのが好きだったからです。その中で、過去に購入した車の年式、車種、色、走行距離、状態、発送先、購入が決まるまでの時間、お客様からの問い合わせ内容を『いつか使えるかもしれない』と、データとして蓄積してきました。それらをもとに、現在は独自開発のシステムが、仕入価格と販売価格の相場を予測する仕組みです。予測結果を参考に、最終的には社員の目で確認して落札しています」
同社の基幹システムは、すべてスクラッチ開発だ。自社ECサイトも、設計段階まで内製。A/Bテストの検証結果などを迅速に社内で共有し、既存システムに反映できる体制となっている。