法人向けサービスを強化するTikTok
2024年も終わりに差し掛かろうとしている。広告商品の多様化や新興プレーヤーの台頭など、様々な変化があったこの1年。藤田氏はまず、主要SNSの動向を振り返った。
「特にアップデートが目まぐるしかったのがTikTokです。法人向けサービス『TikTok for Business』を通じて、広告主への啓発活動に力を入れた1年だったのではないでしょうか。白書などで、トレンド情報を積極的に発信しています」
2024年9月末には、TBWA HAKUHODOのマーケティング組織「65dB TOKYO」と共同で、レポート「最新データで紐解く『TikTokトレンド徹底解剖』」が公開された。同レポートは、2023年から2024年にかけて流行したハッシュタグを分析し、ブームの再現性や“乗っかりやすさ”を整理したものだ。
「同レポートは2024年12月5日に発表された『TikTokトレンド大賞2024』と併せて、目をとおしてほしいです。今年の大賞には『#ギリハピダンス』としてバズったヒップホップユニット『KOMOREBI』の楽曲『Giri Giri』が選ばれました。こうした情報に目を向けることで、流行の理由や次に人気を得るであろうトピックスが、少しずつ見えてくると思います」
加えて、TikTok for Businessは、効果的な動画広告について脳波から検証した結果をまとめた白書「コンテンツ全盛時代の『ヒト起点の動画広告』」も発表している。藤田氏は「トレンドのメカニズムを解明しようとする意図がうかがえる」と話す。
「これらの発表からは、一人ひとりに寄り添うアプローチを重視するTikTokの考え方が読み取れます。現在『ネット広告は嫌われる』といわれていますが、消費者のインサイトを知り、来年以降の打ち手を準備する材料としてチェックしてみてください」
そんなTikTokと比較すると、XとInstagramでは大きな変化は見られなかったという。イーロン・マスク氏に買収された後、運営体制が大きく変わったXだったが「2024年はユーザーの離脱は激しくなく、落ち着いた印象」と藤田氏は分析する。
「今年のアメリカ大統領選では、イーロン・マスク氏が投票に関する投稿を繰り返すなど、大きな影響力を示しました。それにより、一部からはXが情報発信ツールとして再評価され、寿命が延びたといえるでしょう」
一方のInstagramは、24時間で削除されるストーリー機能がより重要になっているという。具体的には、同じく24時間で消えるコメントがストーリーに表示できるようになった。
「企業やブランドが、顧客に自社のストーリーへコメントを投稿してもらうなど、アプローチやコミュニケーションの方法が進化するきっかけになります。細かなアップデートが行われている様子から、Instagramが優先度の高いSNSプラットフォームであるという位置づけは、すぐには変わらないでしょう」