SNS動画の広告手法が多様化 取得データの拡大も
SNSプラットフォームの動向とともに押さえておきたいのが、発信方法のトレンドだ。特に藤田氏は、TikTokの縦型ショートドラマに注目する。
「企業が広告としてショートドラマを制作し、TikTokで配信する事例が徐々に増えています。エンタメ性もありながら広告として活用しやすいからでしょう。そのため、TikTokもマネタイズしやすく力を入れているのだと考えられます」
動画コンテンツを生かしたTikTokの広告メニューに「インタラクティブアドオン」がある。スマートフォンを横に振るとランディングページへの導線が現れるなど、ユーザーの興味を引く仕掛けが施せるサービスだ。
インタラクティブアドオンには様々な機能があるが、その中から藤田氏は「ストーリーセレクション」を取り上げた。
「ストーリーセレクションは、動画の途中でその先のストーリーの選択肢が表示され、ユーザー自身がコンテンツの内容をカスタマイズできる機能です。参加型、かつ動画の内容を視聴している人の趣味嗜好に合わせられ、完全視聴率の改善が見込めます。ユーザーが自然と自身の好みでストーリーを選ぶため、解像度の高いデータの取得も可能です」
さらに、もう一つ藤田氏が紹介したのが、コンテンツ内で商品を使用するプロダクトプレイスメントの手法だ。映画やドラマを鑑賞しているうちに、主人公の洋服や持ち物などを欲しくなった経験はないだろうか。近年は、AIの発達によって既に収録した動画に商品を登場させたり、ロゴを入れ替えたりすることが可能となっている。実際に、サイバーエージェントは2024年11月から「ABEMA」で配信する動画コンテンツ内で、広告商品の画像を合成する技術を採用した。
「過去のドラマを再放送するごとに、動画内の広告商品を入れ替えることも可能です。もちろん、ステルスマーケティングとならないように注意を払う必要はありますが、広告だとわかっていても使いたくなる仕掛けだと思います。まだ国内のEC事業者で、TikTokの動画コンテンツに注力しているケースは、他SNSと比較すると多くありません。今回紹介したように、まだまだ工夫できる余地があるはずです」