クオリティが高くても発信しなければ伝わらない
長年にわたって技術を磨いてきた日本の製造業界。一方、この数年で他国の技術力も向上している。その上、エネルギーシフトによるEVの台頭など、新たな市場とプレーヤーも生まれ、単にクオリティが高いだけでは勝負できない時代となりつつある。
そんな中でも他社と差別化し事業成長を続けるには、どうすればいいのか。20年近くBtoB企業のデジタルコミュニケーションを支援してきた氣賀崇氏は、『BtoB製造業のコミュニケーション革命 顧客接点のデジタル化がもたらす未来』(東洋経済新報社/氣賀崇 著)で、「どんなにいい商品でも、その存在が伝わらなければ存在しないのと同じ(P.4)」と課題点を指摘する。
1980年代から進んだ国際的な自由競争市場では、チャンスも増えましたが、競争も増えました。社会の高度化で、扱う製品や提案すべきソリューションは複雑でわかりにくくもなっています。自らの存在感を示し続けないと市場に埋没するのが、世界中の製造業が置かれた環境なのです。(P.15)
とはいえ、製品をアピールしようにも、何から手を付けていいかわからないケースは少なくないだろう。本書では、次のステップで実践方法を紹介している。
- 自社が提供できる価値を正しく認識する
- 情報ごとに最適な表現を見つける
- しかるべき相手にコンテンツを届ける
中には「自社にはわざわざ発信する情報がない」と考える読者もいるかもしれない。しかし、製品数や製造方法、開発中の新サービスなど、実際にはコンテンツの宝庫だ。まずは、自社が潜在顧客層に提供できる価値の見直しから始めよう。
情報発信の仕組み作りもDXの一つ
ウェブサイトやSNS、オンライン広告など、顧客とコミュニケーションを取る手段は様々だ。氣賀氏は、各顧客接点の活用ポイントを次のように語る。
例えば、新商品の発表の際には、ウェブサイトに商品ページを用意しておき、広告や広報、SNSで集客するとともに、データ解析で見出した見込み客には詳細情報を送るといった連携プレーが必要です。ただそのためには、自社が手掛けているデジタルコミュニケーションの全体像を把握しておかねばなりません。(P.92)
本書では、ウェブサイトを軸に潜在層を集客しニーズのある情報を提供する施策や、情報を管理するシステム構築の注意点などを詳しく解説している。その上で、5年かけて情報発信の仕組みを改革した実例を紹介。プロジェクトの進め方までわかる内容となっている。
近年叫ばれるDXには、こうしたデジタルコミュニケーションも含まれるといえるだろう。BtoB企業は、この機会に自社の価値とその発信方法を見直してみてはいかがだろうか。