リテールメディア化が進む楽天市場 他社ページに広告配信する戦略も実現可能か
楽天市場では、コンテンツページに加えて、レコメンド機能の拡充も進められている。2024年6月、商品説明文の下におすすめ商品を表示するレコメンドパーツの対応範囲がアップデートされた。これにより、「楽天市場アプリ」の商品ページ下部に同じ店舗でよく一緒に購入されている商品が表示可能となった。羽田野氏は「店舗内の回遊性や購入単価の向上が期待できる」と話す。
また、楽天市場アプリの商品ページ内に設けられた「注目商品」枠の下に、広告を表示できる新機能も提供開始された。検索連動型広告「RPP」を活用している店舗の商品、かつ関連度が高いと認められたものが表示される仕組みだ。つまり、自社の商品ページにも他社商品の広告が配信される可能性がある。
「今後は、競合他社の商品ページにあえて自社商品を配信するといった広告戦略が実現できるでしょう。すると、楽天市場内の競争はさらに激しさを増す可能性があります。自然検索のみで戦うのではなく、広告を活用しながら認知を獲得する手法がスタンダードとなり、ますますRPPの重要度が高まるはずです」
そんな中、羽田野氏は「機能改善は利便性を上げる一方で、気づかないうちに自社にマイナスの影響を与えているケースもある」と注意を呼び掛ける。たとえば、2024年6月に店舗内サーチの新機能として導入された「セマンティック検索」。これは、AIが顧客の検索キーワードの意図を汲み取って結果を表示するものだが、リリース以降、いつも.には同機能に関するクライアントからの問い合わせが増えているという。
「事前に検索キーワードと表示される商品を紐づけて設定しても、関連性の低い商品が顧客に提案される現象が起きています。AIが、出店者の想定外の商品を「顧客の検索意図と関連性が高い」と認識しているようです。この現象を解決するには、HTMLで説明文を設定する際などに、商品と紐づけたいキーワードをダブルクォーテーションで囲む必要があります。既存の設定が意図したように機能しているか、確認しておきましょう」
各プラットフォームのアップデートを細かくチェックしておけば、こうしたイレギュラーな現象にいち早く気づくだけでなく、先行者利益も得られるはずだ。プレーヤーが多いモール市場では、こうした小さな積み重ねを忘れてはならない。
「この数ヵ月で発表された楽天市場の機能改善は、顧客にとっても店舗にとっても使い勝手が良くなるものが多くありました。出店者は、顧客体験と売上向上のために、積極的に手を動かして新機能を試してみてください」