味を想像させる“色”の力
昨今、低価格でも一定の品質が保証された商品が、容易に手に入るようになった。もちろん、商品の質は顧客に選ばれる重要な要素だが、質だけで競争に勝てる時代は終わったといえよう。
では、何が事業成長を左右するのか。その答えを心理学の観点から紐解くのが、『買い物の科学 消費者行動と広告をめぐる心理学』(実務教育出版/越智啓太 著)だ。法政大学 文学部 心理学科で教授を務める臨床心理士の越智氏が、EC事業者やマーケターが見落としがちなポイントを紹介している。
たとえば、食品のパッケージの色。本書によると、国や文化を問わず、商品の味とパッケージの色には典型的なつながりがあるという。ポテトチップスを想像してほしい。バーベキュー味なら暗紅色、チキン味ならオレンジ色、トマト味なら赤色と、イメージする色がすぐに思い浮かぶのではないだろうか。
マーケティングの観点からいえば、商品と違うイメージの色をパッケージに使った場合、スーパーの棚などで発見しにくくなる可能性があるわけです。(P.32)
この法則を知っていれば、味のイメージに合致する商品パッケージを制作する、あえて新鮮さをアピールするために色を変えるといった戦略が立てられるだろう。
あなたのブランドが人間だったら?
もう一つ、本書で解説されているポイントとして興味深いのが、ブランドのパーソナリティ分析だ。
現在、小売やメーカー、D2Cなどの業態に関係なく、熱いファンの創出が叫ばれている。LTV向上の一環として、ブランディングに力を入れている企業も多いはずだ。しかし、そもそも自社ブランドの個性を確立できていなければ、適切な施策を実行できない。そんな課題に対して、「元気で活発な○○好き」のようにブランドを擬人化してみるのも一つの手だ。
我々は他人やそのパーソナリティを認知するのには慣れているので、このような擬人化を使えば直感的にブランドの個性を把握することができるのです。(P.151)
加えて、本書ではファンに愛され続けるためのマーケティング手法や、ブランドの価値を下げずに値下げ施策を行うコツ、比較広告の落とし穴などを、多数の研究や事例を通じて説明している。自分が日常的にどう買い物しているのか、照らし合わせながら読むのもおすすめだ。