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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

ECとメーカーの未来をデータで探る

地方メーカーが大都市の商圏を目指さざるを得ない理由 EC業界や地域商社を巻き込む力が求められる

 EC販売の大きなメリットの一つが、日本全国、そして世界の顧客へ商品を届けられる点です。販路拡大に悩む地方の中小メーカーならば、利用しない手はありません。株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役 ECアナリスト 本谷知彦氏が、データを基に日本のEC市場を解剖する本連載。今回は、地方の中小メーカーが置かれている現実と、新たなビジネスモデルを生む方法を解説します。

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消費者の母数が少ない地方でチャンスを拾えるか

 東京や大阪などの大都市には、多くの消費者が住んでいます。そのため、スケールの大きなビジネスを展開できます。一方の地方はそうではありません。ビジネス規模に限界があります。

散布図A:小売拠点数/小売1拠点あたり人口によるマッピング
散布図A:小売拠点数/小売1拠点あたり人口 出典:総務省統計局 令和3年経済センサスおよび人口推計(2022年(令和4年)10月1日現在)をもとに筆者が作成(クリックすると拡大します)

 データで可視化してみましょう。ヨコ軸を「都道府県別の小売拠点数」タテ軸を「小売1拠点あたりの人口」として散布図を作成しました。ヨコ軸は右にいけばいくほど、小売の店舗数が多いことを示しています。また、タテ軸は上にいけばいくほど、小売1店舗に対する消費者が多いことを表しています。

 右上のポジションは、小売店舗数が多いだけなく1店舗あたりの売上額も期待できます。つまり「小売パワー」が大きい都道府県だといえるでしょう。東京大阪神奈川愛知といった大都市が位置しています。反対に左下のポジションは、小売パワーが小さい県です。次にある散布図の拡大版からわかるように、多くの県が塊となって位置しています。

散布図B:散布図Aの拡大版
散布図B:散布図Aの拡大版 出典:総務省統計局 令和3年経済センサスおよび人口推計(2022年(令和4年)10月1日現在)をもとに筆者が作成(クリックすると拡大します)

 企業にとって、年齢、性別、収入、家族構成、嗜好性といった消費者属性は、ターゲットを定める上で重要なキーとなります。しかし、それ以前にどれだけの消費者をターゲットにできるかという「母数」は重要です。当たり前の考え方ですが、母数が多ければ多いほど、ターゲットの数も多くなります。

 これは地方の中小メーカーにとって大切な視点です。散布図が示すように、ビジネスのパワーは都道府県間で大きな格差があります。ビジネスのパワーが小さい地元のみをターゲットにするだけでは、事業拡大は難しいでしょう。

 とはいえ、自力で大都市圏の販路を開拓するのは容易ではなく、仮にチャレンジしても非効率です。したがって、地方の中小メーカーは多くの場合、卸売業者を頼ることになります。卸売業者の力を借りることができれば、販路が拡大します。結果的に、メーカーは良い製品の製造に集中できます。

 しかしながら、単に卸売業者の力を借りれば確実に売上が上がるわけではありません。そこで、地方の中小メーカーの多くはEC事業を通じ、自らが販売者となるビジネスに乗り出しています。実際、楽天市場、Amazonでは数多くの地方の中小メーカーが製品を販売していることがわかります。

 また、それらのプラットフォームに依存せず、自社ECサイトを主力チャネルとしている中小メーカーも数多くいるでしょう。日本政府や地方自治体も後押しすべく、IT導入補助金、小規模事業者持続化補助金などを通じて積極的に支援しています。こうした背景から、EC事業がうまくいっている地方の中小メーカーはいくつも存在します。

 一方で、苦戦を強いられているケースも少なくありません。「どうすれば地方の中小ECを活性化できるのでしょうか?」という相談が、私宛てに持ち込まれる機会も増えています。人流がリアルチャネルに回帰しているトレンドもあって、大手ECですら当面の間苦戦を強いられる状態が続きそうです。そこで、次のページでは地方の中小メーカーがEC事業で苦戦する理由を紐解きます

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この記事の著者

株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役 ECアナリスト 本谷知彦(モトタニ トモヒコ)

シンクタンク大和総研にてITの主任研究員、金融システム系コンサルタント等を経て、2013年より国内外の産業調査・コンサルティング業務にシニアコンサルタントとして従事。2017年担当部長兼チーフコンサルタントに就任。EC業界のスタンダードな調査レポートとなっている経済産業省の電子商取引市場調査を201...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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