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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

AIとの融合で広がるEC業界の可能性

石川森生氏×ビービット藤井氏が日本のAI活用の未来を議論 「最初の一歩」に適する領域はどこなのか

 近年、あらゆる場面で耳にする機会が増えた「AI」。そのポテンシャルに目を向け、世界規模で様々な角度からデータ活用や業務改善などのアップデートが進んでいますが、日本ではどうでしょうか。「なんだかよくわからなくてまだちょっと怖い」という方は、ぜひこの連載から学び、前に進むヒントを得ましょう。第2回は、ルームクリップ株式会社 KANADEMONOカンパニー管掌の石川森生氏と、株式会社ビービット 執行役員CCOの藤井保文氏が「EC×AI活用の現状とこれから」について意見交換した様子をお届けします。

「RoomClip」のトライ&エラーでわかった、生成AIがUGCを宝の山にする可能性

藤井(ビービット) ビービットでは、様々なソリューションを提供していますが、先を見据えて、数年前からAIを使った「次なる顧客体験の創造」も模索、実践しています。国内外を問わず情報収集を進める中で、EC業界でのAI活用は注目度が高まりつつも、まだこれからという段階なのではと感じていますが、石川さんとしてはどうお考えでしょうか。

石川(ルームクリップ) 私はこの10年ほど、事業会社に所属してECやデジタル推進をしながら、現在はルームクリップ内の事業の一つとなっている「KANADEMONO」というインテリアブランドを立ち上げたり、ブランドコンサルティング支援会社を共同創業し、事業会社のコンサルティングを手掛けたりと、事業側・支援側双方の視点から活動してきました。

 自身の興味もあり、AI領域の取り組みは今ほど精度が高くない時代から取り組んできたので、近年の生成AIの話題っぷりと、この半年ほどで急速に精度が向上している点は、目を見張るものがあると思っています。

ルームクリップ株式会社 KANADEMONOカンパニー管掌 石川森生氏
ルームクリップ株式会社 KANADEMONOカンパニー管掌 石川森生氏

藤井(ビービット) 打席に立つ数が多い分、成功・失敗を問わず既に経験を蓄えているかと思いますが、直近でECと連動してAIを活用した事例があればお聞かせください。

石川(ルームクリップ) 最近では、「RoomClip」で生成AIを活用した画像解析システムの開発などを進めてきました。RoomClipに投稿されている、約600万枚の部屋の写真を画像解析し、写り込んでいる家具やインテリア雑貨と商品情報をひもづけて、商品を取り扱うECサイトへ送客する機能実装を模索しています。

ルームクリップがAIを活用して2024年4月に公開した新機能のイメージ図
ルームクリップがAIを活用して2024年4月に公開した新機能のイメージ図

藤井(ビービット) この機能は、なぜ実装に至ったのでしょうか。

石川(ルームクリップ) 発想の起点は、「『いいな』と思った家具やインテリア雑貨がすぐに購入できれば便利だな」と考えたところにあります。まったく同じ商品はひもづけられなかったとしても、似た商品が出てくれば比較検討や購入のきっかけを創出できますよね。自社で運営している「RoomClipショッピング」に該当商品がなくても、アフィリエイトを使えば利益を生み出せます。便利でおもしろいだけでなく、CXも向上しますし、事業メリットが大きいと考えました。

藤井(ビービット) これは自社開発ですか?

石川(ルームクリップ) ルームクリップは創業者たちがエンジニアなこともあり、しっかりと開発体制を整えているため、内製で進めています。この機能は実は2~3年ほど前から構想自体はしていたのですが、家具の識別は非常に難しく苦労しました。

 従来、家具のカテゴリーを見極めるには、「リビングか寝室か」といった部屋の属性が重要でした。また、ソファとベッドのように、写真の写りでは構造的にあまり差がない家具の判定は非常に難しく、提案の品質を高めるための学習には時間を要しました。それも、ここ半年ほどで著しく判定のレベルが上がったように感じています。

藤井(ビービット) 石川さんとしては、AIのラーニングが進んだからではなく、AIの全体品質が底上げされたから判定レベルが上がったと捉えている、ということでしょうか。

石川(ルームクリップ) そうですね。劇的にレベルアップしたと思います。このペースで今後も進化するのであれば、画像とECの関係性が飛躍的に変わり、UGCの価値も大きく向上するでしょう。テキストの力を借りずにコンテンツマーケティングが実現でき、画像から一気にコンバージョンポイントにまでたどり着けるようになるわけですから。発信者が想像している以上の価値が生まれるに違いありません。

藤井(ビービット) これまで持て余していた非構造データに価値が生まれるのが、生成AI時代だと私も実感しています。

 ビービットで最近、チャットボットの会話データを生成AIに読ませた上で購入確率を予測してもらうテストを実施したのですが、この結果も興味深いものでした。AIに購入確率を聞いた上でユーザーインタビューの結果を照らし合わせたところ、予測と実際の回答にほぼずれがなかったのです。

 会話の履歴から顧客の欲求を分析し、その結果をチャットボットが自らの提案に反映してくれれば、事業者目線では購入確率をより高められます。顧客目線でも自分に合った提案がされて気持ち良い体験になるし、メリットが大きいなと思いました。

石川(ルームクリップ) 私もかつて、顧客対応窓口で解約防止用のプログラムを開発しようとしたのですが、当時は顧客応対データをテキスト化して読み込ませても、解約防止策を打つべきかAIが適切な判断を下せず、結局「スーパーバイザーが手動でフラグを立てるのが最も効率的だよね」という結論になっていました。今であれば、フラグの抽出や問い合わせ種別をタグづけするのも容易にできますよね。

藤井(ビービット) これまでは「AIを使う」といっても、心もとなさから人が手放せない工程が存在しましたが、今や画像から要素抽出をしたり、感情の読み取りもできたりと、本当に劇的な変化を遂げていますよね。「人がやらなくては」と思い込んでいた領域も、改めて見返すと「AIに任せられるね」と判断が変わる可能性が大いにあると思います。

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの製作などを経て独立。ビジネス系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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