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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

次なる顧客体験へ 大手企業の目線(AD)

検証チェックシートでPDCAを高速化 JCBカードは手応えのないA/Bテストからどう脱却したのか

 手応えのないA/Bテスト、PDCAサイクルを“なんとなく”実施し続けてはいないだろうか。オンライン上で商売に挑むプレーヤーが増える今、広告効率や売上・LTVを高めるには、うまくいった理由やいかなかった原因を臆測でなく、データからきちんと読み取ることが重要だ。今回は「良質なPDCAサイクルの作り方」「CVR改善に前向きに取り組める体制構築」について、JCBカードの入会フローなどを絶えず改善する株式会社ジェーシービー コミュニケーション本部 メディアデザイン部 WEB統制グループ 役職主査 西野広一氏と、Contentsquare Japan合同会社 カントリーマネージャー 伊奈憲一郎氏が意見を交わした。

「Plan」と「Check」に重きを置いた施策改善 仮説の精度が上がったきっかけは

──クレジットカードをはじめとし、デビットカードやプリペイドカード、ギフトカードなどあらゆる金融商材の入会・販売促進を行っているジェーシービーですが、西野氏は現在同社の中でどのような役割を担っているのでしょうか。

西野(ジェーシービー) 私は、ジェーシービーのWEBサイトのCVR向上や、集客の最適化に向けた支援をする部署で、全社横断的に数字の改善に向けたサポートを行っています。実際の広告出稿は、各商材を担当する事業部の担当者が手掛けており、WEB統制グループでは、各事業部のWEBマーケティングのリテラシー向上や、スキル補完に向けたサポートなども行っています。現在は、9名がチームに在籍しています。

株式会社ジェーシービー コミュニケーション本部 メディアデザイン部 WEB統制グループ 役職主事 西野広一氏
株式会社ジェーシービー コミュニケーション本部 メディアデザイン部 WEB統制グループ 役職主査 西野広一氏

伊奈(Contentsquare Japan) ジェーシービー様には、2020年より顧客体験分析ツール「Contentsquare」を導入いただいていますが、WEB統制グループが日々追っているKPIやそれらの達成に向けてどんな施策を行っているのか、教えてください。

西野(ジェーシービー) CVR改善のために、A/Bテストを継続的に実施しています。2023年度は、クレジットカードなどの6券種で83本の施策を走らせ、コンバージョン数やCVR、寄与収益額といった目標を達成するためのA/Bテストを行ってきました。打ち手の精度を高めるために、PDCAサイクルの中でも特に「Plan」と「Check」に重きを置いています

ジェーシービーのサイト改善PDCA
ジェーシービーが取り組むサイト改善PDCAのフロー(※クリックすると拡大します)

伊奈(Contentsquare Japan) PDCAサイクルの中に「Contentsquare」をはじめとする複数のツールが記載されていますが、現在のサイクルに行き着くまでには試行錯誤をされたのでしょうか。

西野(ジェーシービー) 「Contentsquare」を導入する前からA/Bテスト自体は行っていましたが、「何がよかったのか・悪かったのか」といった検証の解像度を上げるのが機能上難しく、ナレッジ化や施策の精度を高める点に課題を抱えていました。検証を本格化させるためにフローの見直しやツールの刷新をしたいと考えていたところで、当社のデジタルマーケティングを長年にわたって支援し続けてくれている株式会社ギャプライズから紹介を受けたのが「Contentsquare」でした。

 「Contentsquare」は、単に施策の勝ち負けを判断するためでなく、「ユーザー行動がどう変わったか」を確認する目的で活用しています。結果だけにフォーカスしても、メンバーの中にナレッジが蓄積されず、施策の再現性を高めたり、成功率を上げたりといった継続的な成果につながりません。「Contentsquare」が、A/BテストやWEBサイト改善のラストワンマイルを埋めるピースとしてうまくはまってくれたと感じています。

伊奈(Contentsquare Japan) CVR改善は、継続性をもって取り組むべき施策だといえます。デジタル顧客接点におけるOne to One強化の流れを踏まえれば、ユーザーがいかにストレスなくWEBサイトやアプリを利用できるかA/Bテストなどをしながらきちんと分析し、体験向上に向けて働きかけていくべきですが、2023年9月に「Google Optimize」が廃止されたのを機に、なし崩し的にA/Bテストをやめてしまった企業もいるのが事実です。

 直近のトレンドに目を向けると、プレーヤーが増え、広告による獲得コストが上昇する一方で、CVR低下の課題を抱える企業が増えています(Contentsquare Japan発表「2024年 デジタルエクスペリエンス・ベンチマークレポート」より)。ユーザーの離脱につながるWEBサイトやアプリ利用中のフラストレーションスコアも、前年比約40%上昇しており「ユーザー行動の把握」を課題感とする企業が増えている様子が見えますが、ジェーシービー様の現状はいかがでしょうか。

西野(ジェーシービー) ジェーシービーでは扱う商材柄、コロナ禍以降のキャッシュレス化の追い風もあり、そこまで顕著なCVR低下などの状況には陥っていません。

 「ユーザー行動の把握」という課題感に対しては、「Contentsquare」の導入以降、CTRやCVRといった全体像を把握するための数字だけでなく、スクロール率や個別ユーザーの行動など、より踏み込んだデータまで追えるようになったので、まだ完全ではないものの、課題をある程度解消することができました。

 またユーザーの行動が見えてきたことで、「次にどのようなアプローチをすべきか」といった仮説立案の精度が向上しました。各事業部と議論する際の説得力が増したことで信頼を獲得し、より円滑に施策を実行できるようになったと感じています。

CVRが20%向上 A/Bテストの有用性を証明するジェーシービー流検証フローを紹介

伊奈(Contentsquare Japan) 先ほど、良質なPDCAサイクルを回す工夫として「ユーザー行動がどう変わったか」を確認していると話していましたが、A/Bテストの結果はどう可視化しているのでしょうか。

Contentsquare Japan 合同会社 カントリーマネージャー 伊奈憲一郎氏
Contentsquare Japan 合同会社 カントリーマネージャー 伊奈憲一郎氏

西野(ジェーシービー) 2022年度の下期から、施策ごとに検証チェックシートを作成しています。シートには、施策実施前に記載する項目として「テストを行う目的」「解決したい問題」「問題を解決するために実施する内容」「仮説:その変更によってどの指標がどのように変化するのか」といった項目があり、施策実施前には必ず仮説の根拠や検証観点を整理しておくようにしています。

 そして、施策実施後に記載する項目としては、各指標の実数に加えて「想定通りだった点」「想定外だった点とその考察」「この施策からいえること」などがあり、施策実施前後で左右に分けて、各指標の変化だけでなく、事前の仮説とその検証の結果を並べて確認できるようにしています。このように、仮説とその結果をしっかりつなぎ合わせて、施策実施前後の状況を俯瞰的に確認できるようにすることがナレッジ蓄積の肝だと考えています。

伊奈(Contentsquare Japan) 仮説検証の本質を捉えた素晴らしいシートですね。ナレッジ蓄積の肝について、こう考えられるようになった理由も詳しくお聞かせください。

西野(ジェーシービー) 結果ばかりにフォーカスしてしまうと、最終的にCVRさえ改善していれば、ユーザーの動きに仮説と異なる部分があったとしても誰も気にしなくなってしまうからです。場合によっては、結果にひっぱられて後付けで仮説が歪曲されるようなことも実際にありました。

 しかし、本当に価値のある示唆が得られるのは、得てして仮説と異なる結果が出てきたときだといえます。そのギャップにこそ、担当者が気づけていないユーザーの行動やインサイトが隠れているからです。そのため、「仮説は必ず事前に・詳細に記述する」「結果は仮説とのギャップを軸に語る」を心がけています。このような形で検証チェックシートの運用を既に1年半ほど続け、100施策以上のナレッジが蓄積できています。

伊奈(Contentsquare Japan) 「Contentsquare」の活用と、検証チェックシートの作成を始めてから得た発見や手応えはありますか?

西野(ジェーシービー) 「JCB一般カード」のポイントサービス訴求のA/Bテストは、「Contentsquare」がなければ得られなかった示唆があった施策だと思います。

 JCBカードでは、JCBブランドのクレジット・デビットカード利用で獲得したOki DokiポイントをAmazon.co.jpでの買い物に使える「パートナーポイントプログラム」というサービスを提供しています。同プログラムは、特別な手続きを踏むことなく、Amazon.co.jpの決済画面上でポイント利用ができるのですが、改善前のLPではその点に触れずに、ポイント還元率といった「お得感」の訴求のみにとどまっており、メンバーから「ポイント消費の簡便さも訴求する価値があるのではないか」と仮説が立てられました。

JCBゴールドにおけるパートナーポイントプログラムの訴求変更イメージ図
JCB一般カードにおけるパートナーポイントプログラムの訴求変更イメージ図(※クリックすると拡大します)

西野(ジェーシービー) そこで、利用率を踏まえてAmazon.co.jpの訴求位置を上部に変更しつつ、お得感の訴求だけでなく「交換手続き不要」の旨をLPに追記する施策を実施したのですが、結果はCVRも次ページ遷移率も向上しませんでした。「Contentsquare」がなければこれ以上のことはわからず、この施策は「負け」で終わっていたのですが、検証チェックシートと「Contentsquare」を使うことで、単に「負け」では済まされない2点のユーザー行動の変化に気づけたのです。

 1点目は、UI変更後の当セクションの閲覧時間が、UI変更前に比べて約6倍長くなっていたことです。この事実から、UI変更は間違いなくユーザーの関心にヒットしたことがわかりました。2点目は、当セクションへのスクロール率が、施策実施前と比べて大幅に低下しており、ここまでたどり着くユーザーが大きく減少していたことです。この理由を突き詰めたところ、当欄よりも上部に存在する要素のUI変更にありました。つまり、この施策とは無関係なところに原因があったのです。

 この分析結果を踏まえ、多くのユーザーに「パートナーポイントプログラム」の説明を見ていただけるよう、UIは変更後のものを活かしつつ、当セクションをLP上部に移動する施策を実行しました。すると、CTR・CVRともに20%以上向上しました。

伊奈(Contentsquare Japan) 「LPの訪問者数や滞在時間が長くなった=成果があった」と判断するのではなく、「訪問者のうち、何%がこのセクションを閲覧したか」まで見えると、具体的にどうすべきか見通しを立てやすくなりますよね。

 しかし、検証チェックシートの記載内容もクオリティーが高く、驚きました。このシートを作成するにはWEBマーケティングの知識も必要だと思いますが、ジェーシービー様ではどのような教育を行っているのでしょうか。

西野(ジェーシービー) 2023年度から、各事業部に対してWEBマーケティングに関する研修を実施しています。初期は基礎編として、WEBマーケティングの基本的な考え方や基礎知識に加え、「Contentsquare」など各種分析ツールの使い方に関する研修を行いました。

 また直近では、比較的高いWEB分析スキルを有する一部部署に対して、自ら分析・課題抽出した上で改善施策を実施し、検証チェックシートの記入までしてもらう応用編の研修を行いました。各事業部が独立して分析・施策立案ができるところを目標としています。

データを見始めてより自覚した「ユーザーの声」の大切さ

──組織として、ナレッジ共有を始めて得たメリットや新たな発見があれば教えてください。

西野(ジェーシービー) 検証チェックシートを作り始める前のジェーシービーでは、CVR改善の取り組みから得られた知見が、実際に施策を実施しているメンバーにだけ蓄積され、中途入社や部署異動で加わったメンバーや他部署に対して、これらのナレッジをどうレクチャーするか課題を抱えていました。同シートを基にナレッジ共有を進めたことで、メンバーの経験の違いによる情報格差や、部署間のコミュニケーションコストが少しずつ減らせていると感じています。

 一方、年間で100本近くもの施策を行っているため、既にシートの数が膨大になりつつあり、一つひとつを見るには時間を要するのも事実です。その状態では過去の施策を探す負担が大きく、ナレッジも活用しづらくなってしまうため、蓄積したナレッジを抽象化して、短時間で理解・吸収できる「ナレッジ一覧表」を作成する取り組みも行っています。

 しかし、実際のページ制作などのシーンで、抽象化されたナレッジを具体的なUIに落とし込む難しさにも直面しています。なぜなら、担当者によってナレッジの解釈や理解の深さが異なる上に、制作するページの種類や性質も多様なためです。単にナレッジをUIに落とし込むだけでは、品質面で大きなばらつきが発生してしまうこともわかりました。

 また、日々新たなナレッジが増えているため、それらをどう統合・整理した上で更新していくのかも、今後の課題と捉えています。

伊奈(Contentsquare Japan) 新規獲得とLTV向上、どちらを目指すかによっても道筋が変わるため、パターン別にナレッジが確認できると、PDCAサイクルやビジネスそのものの改善にもつながりそうです。ちなみに、成果改善に向けたアクションとしては、今後どのようなことを考えていますか?

西野(ジェーシービー) まだまだクレジットカード領域における新規獲得支援についてはできることがあると考える一方で、徐々にLTV向上にも目を向け始めています。

 たとえば、新規ユーザーを獲得する際にも、クレジットカード入会後、年間を通して一定水準以上利用してくれそうなユーザーを予測した上でアプローチすれば、LTV向上が図れると考えています。これまでも会員の入会後の稼働状況の確認は行っていましたが、2023年度は会員の入会時の流入チャネルだけでなく、接触情報ごとにカード稼働状況を分析するなど、入会導線別の会員利用動向をさらに可視化できるようにしました。こうした分析を活かして、今後は稼働の見込めるターゲットユーザーごとの獲得施策をさらに強化していきたいと考えています。

 また、これまでは「新規獲得」と「継続利用の促進」の二軸でユーザーに対して別々のアプローチを取っていましたが、一連のカスタマージャーニーを的確に捉えたコミュニケーションも欠かせません。新規獲得担当だとしても、CPAを追うだけでなく、これまで以上にLTVを踏まえた長期的な視点を意識づけたり、「Contentsquare」で現状把握をした上で、CDPと連携した深い分析を実行したりと、施策の深みも増していきたいです。

伊奈(Contentsquare Japan) CDP連携は、クライアント様からのリクエストも多いですね。「Contentsquare」でも、実現に向けた開発に取り組んでいます。

 現状は、ツールやシステムごとにデータが分散しているケースも多いですが、Cookieレス時代にはより垣根なきデータ活用が鍵となります。前出の獲得チャネルごとのアプローチについても、「何に共感して申し込んだのか」「申し込んだ時点で何を理解していないのか」によって、その後のコミュニケーション方針が変わるはずです。もし、「Contentsquare」を使ってこれを可視化し、さらにはMAツールと連携して配信するメール文言を自動で最適化できれば、より細やかなパーソナライズを実現できます。当社は顧客を正しく理解し、カスタマージャーニーのボトルネックをなくせる世界を現実のものとすべく、今後もアップデートを続けていくのでご期待ください。

西野(ジェーシービー) WEBサイト改善をはじめとする施策実施に、終わりはありません。もちろん、A/Bテストを何度も繰り返しているLPは、徐々に成果が小さくなる可能性もありますが、商材そのものやサービス内容のリニューアルも含めれば、ブラッシュアップが完全に無意味になることはないでしょう。チャンスは多々ある状況なので、たとえ小さな改善でもやるべきことを見つけたら、一つずつ実行して成果を高めていきたいです。

 また、「このやり方で円滑に進められる」とフローが整った一方で、「データだけでは見えないこともある」と気づかされたのも事実です。定量・定性双方のデータをバランスよく見る重要性が理解できたため、2023年度からはユーザー調査も積極的に実施しています。たとえば、JCBゴールドを申し込むユーザーはどんなモチベーションからアクションを起こしているのか、クレジットカード発行後に実現したいことは何なのか、ユーザー像がより鮮明になれば、新規獲得の施策にも活きると思っています。定量と定性を行き来して、打ち手のアイデアを増やしながらより効果的な改善ができる組織を作っていきたいです。

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提供:Contentsquare Japan合同会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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