ブラックボックス化しているリアル店舗のデータ
プレミアムビール「ザ・プレミアム・モルツ」をはじめとする酒類や清涼飲料、健康食品など、数多くの人気ブランドを展開するサントリー。多種多様な商品を市場に届ける上で、小売・流通業界との連携は欠かせない。内藤氏は、スーパーや量販店への営業経験を活かしながら、リテールDX推進に向けた取り組みを進めている。
本セッションにおいて、内藤氏はまず、「ECの“当たり前”をリアル店舗に取り入れる意味」をテーマに解説を始めた。

オンライン上のデータを収集しているECサイトでは、インプレッション数やコンバージョン率などの成果を数字で把握しやすいといえる。そのため、「顧客がどこから流入し、どのようなコンテンツが刺さったから購入に至ったのか」「どのコミュニケーションによってファンになったのか」などが可視化できる。
一方、内藤氏は「リアル店舗では、データ活用を進められている企業はまだ少ない」と話す。リアル店舗の場合、商圏客・来店客・購買客・使用客・ファン客など、顧客にも様々な段階があるが、各段階の顧客データを取得して連携するのは容易ではない。
「メーカーの立場では、特に購入後のデータが重要となります。誰が、どのようなシーンで自社商品を飲んだのか、そのお客様が継続的に購入しているのかは、非常に知りたい情報です。しかし、購買後のデータはそもそも取得できていなかったり、そのほかのデータも部署ごとに分断されてしまったりといった実情が存在します」
近年は、購入後のデータを取得、管理している小売企業も増えてきたが、依然としてブラックボックス化しているケースも少なくない。

そんな中、これまで分断されていたデータをつなげられるサービスやシステムも登場している。小売企業が自社の顧客データを活用した広告媒体の展開や商品訴求を実現できる、リテールメディアだ。
内藤氏によると、2010年代から北米などの流通企業でリテールメディアが流行。特にAIカメラなどを活用した、米Walmartの先進的な取り組みが注目された。この流れは日本にも波及したが、内藤氏は「リテールメディアという言葉だけがバズ化してしまった」と説明する。日本では複数の解釈が生まれ、メーカーや小売・流通企業を中心に、各社の取り組みが広がっている。