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One to One施策の定着により生まれた新たな課題とは
消費者の意識としても、オンラインとオフラインの売り場の共存が当たり前となった2023年。双方への顧客の往来が活発になる中で、事業者に新たに生まれた課題は何だろうか。早田氏は、直近のプラスアルファ・コンサルティングに寄せられる相談内容から、こんな共通項を見いだしたそうだ。
「2023年は『自社が今手元に取得して可視化している情報だけでは、顧客理解やLTV向上の限界を感じる』といった相談を受けることが増えた年でした。数字を塊で見るだけではなく、メール・チャット・LINEなどに寄せられた問い合わせ内容や顧客の声をきちんと『個の意見』としてとらえ、顧客一人ひとりが何を考えているのか理解したい。マーケティングやCRMに関する部署がそう考え、下準備や最初の一歩を踏み出す動きが見え始めています」
データを見る習慣はあっても、購入「率」や離脱「率」といった集団をとらえた分析が主となっていたマーケティングやCRM担当者が個に着目し、示唆を得るために深掘りしていく。こういった動きは、One to Oneマーケティングの浸透やAIの進化といった時代の変化によって生まれた需要であることは間違いない。
また、逆に顧客の声を収集する側のカスタマーサービス部門からも、より密なコミュニケーションを実現するための要望が出てきているという。
「One to Oneのアプローチが一般したことから、現在は多くの事業者が顧客のステータスに合わせて多くの種類のメールやLINEを送っています。顧客ごとに受け取っている情報が異なるため、受信したメールやLINEに関する疑問や相談、クレームを受けても、カスタマーサービス側がリアルタイムで内容把握できておらず、その場での適切な回答ができない事象が増えているようです。そのため、『現状可視化できている顧客情報や購買情報に加え、マーケティングやCRM担当者がどんなアプローチをしているか、リアルタイムで知りたい(情報連携したい)』といった声が上がっています」