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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

おさえておきたいEC・通販先進企業

OMO化を進めるデイトナ・インターナショナルのデジタル活用

 セレクトショップを運営するデイトナ・インターナショナルは、実店舗のネットワークと自社ECサイト「FREAK'S STORE ONLINE」を融合させた、OMO化を進めているアパレル企業です。本稿では、実店舗とECをどのように運用しているのか、そしてDXが進みづらいとされるアパレル業界で急進的にDXを実現した同社の施策などについて解説します。

 株式会社デイトナ・インターナショナルは「FREAK'S STORE(フリークスストア)」をはじめとするアパレル実店舗でおなじみの企業です。近年は実店舗営業だけでなく、独自のECサービスの展開にも注力し、ビジネスのOMO(Online Merges with Offline)化を進めています。

 この記事では、そんな同社がどのようなデジタル活用やECサービスの展開を進めているのか、スピーディなDXを実現できた背景にはどんな取り組みがあったのかについて、紹介します。

株式会社デイトナ・インターナショナルの企業情報・事業内容の概要

 まずは、株式会社デイトナ・インターナショナルの基本情報から見ていきましょう。

株式会社デイトナ・インターナショナルの企業情報

 以下では、株式会社デイトナ・インターナショナルの企業情報をまとめています。

社名 株式会社デイトナ・インターナショナル
本社所在地 東京都渋谷区神宮前3-25-15 3F
設立年月 1990年4月
代表者名 代表取締役 佐々木 聡
株式公開 未上場
資本金 非公開
おもなグループ会社 なし

株式会社デイトナ・インターナショナルの事業内容

 株式会社デイトナ・インターナショナルは、セレクトショップであるFREAK'S STOREの運営や、コンセプトストア「Firsthand(ファーストハンド)」の運営などを手がけるアパレル企業です。

 近年は、ファッションマガジンをコンセプトとした雑誌アパレルブランド「CAHLUMN(カウラム)」を立ち上げたほか、ギャラリースペースや協業規格住宅、コワーキングスペースなどの提供も行っています。加えて、再生可能エネルギー事業や店舗DXソリューション事業など、多角的な事業を展開している企業です。

株式会社デイトナ・インターナショナルの沿革

 以下の表は、株式会社デイトナ・インターナショナルの沿革を一枚にまとめたものです。

沿革
1986年

茨城・古河にFREAK’S STORE1号店出店

1990年 デイトナ・インターナショナル設立
2003年

本社所在地を原宿に移転

FREAK’S STORE 旗艦店である渋谷店オープン

2006年

FREAK’S STORE ONLINE 開業

「ZOZOTOWN」へ出店

2013年 FREAK’S STORE を関西・九州・中国地方へ続々出店し本格的な全国出店開始
2017年

旗艦店の渋谷店がリニューアル

併設ギャラリースペース「OPEN STUDIO」開業

住宅メーカー「LIFE LABEL」と協業し、セレクトショップ業界初となる注文住宅をディレクションする「FREAK’S HOUSE」スタート

2019年

PUBLUXレーベル誕生

サスティナブル・アート・ファッションを軸とするコンセプトストアFirsthand青山店オープン(現在RAYARD MIYASHITA PARKに移転)

2020年 ウィメンズブランドAresenseを新宿ルミネ1に出店。同年、FREAK’S STORE 古河店をアウトドアショップ「Orange」と協業した「“The Camp”FREAK’S STORE」としてリニューアルオープン
2022年

コミュニティ型コワーキングスペース「&FREAK.」開業

再生可能エネルギー「フリークス電気」プロジェクトがローンチ

自社オンラインストアを「Daytona Park」としてリニューアルオープン

2023年

洋服とともにファッションマガジンを制作する「CAHLUMN」ローンチ

店舗DXソリューション「+PLUS Series」外部提供開始

 茨城県で創業したFREAK’S STOREは、1990年にデイトナ・インターナショナルとして法人化し、2000年代から首都圏を中心とした店舗展開を進めてきました。アパレルEC黎明期である2006年から自社ECを立ち上げ、ZOZOTOWNへの出店も早期から行っていた点は注目ポイントといえるでしょう。

 2010年以降は、全国的な店舗展開を進めつつ、ギャラリースペース事業の立ち上げや住宅プロジェクトなどもスタートさせました。

 またセレクトアイテムの販売にとどまらず、新しいブランド・レーベルも立ち上げ、オリジナル商品の販売も始めています。

 2022年にはコワーキングスペース事業や再生可能エネルギー事業を開拓するとともに、ECサイトのリニューアルも行い、2023年には自社DXノウハウを活かした店舗DXソリューションの提供もスタートさせています。

OMO化を実現する株式会社デイトナ・インターナショナルのEC施策

 株式会社デイトナ・インターナショナルでは、事業を多角化しながら、本業であるアパレル分野においても次々と新しいソリューションを投下し続けています。

 ここでは、同社が近年進めている、ECと実店舗を融合するOMO施策について見ていきましょう。

特定ブランドに偏らないECモール「Daytona Park」をオープン

 2022年11月、株式会社デイトナ・インターナショナルは自社サイトを完全リニューアルし、特定ブランドに偏らないECモール「Daytona Park(デイトナパーク)」をオープンしました。

 自社ブランド以外にも多くの商品を取りそろえる同サイトの最大の特徴は、OMOを前提としたプラットフォームとしての役割を有していることです。実店舗にAIカメラによるレコメンド機能を導入し、ECサイト上でもそのレコメンドに合わせた商品紹介を実践するなど、シームレスな購入体験を実現しています。

 また、モール型ECとして同サイトが立ち上がったことをきっかけに、社外ブランドのオンライン・オフラインでの陳列も可能になりました。ほかのモール型ECにはない、実店舗をうまく活用したプラットフォームとしての運用が期待されています。

DX本部を立ち上げたことによる社内の変化

 株式会社デイトナ・インターナショナルが積極的にデジタル化を進める背景として、2021年4月の経営体制変更があります。新たな経営陣は上場を目指す過程において、DX推進を最優先事項と位置付け、DX本部を立ち上げました。

 経営陣直轄のDX本部の立ち上げが売上にもたらした影響は大きく、ECの売上高は設立1年で前年同月比2倍以上を達成し、2年目においても40〜50%増で推移しています。EC化率においても6割前後の割合に達しており、自社ECの割合は約35%にまで到達しました。

 EC運用に大きな役割を果たしているのは株式会社ZOZOの存在で、同プラットフォームに最適化したEC業態を構築し、好調な成果を収めています。今後同社では、2025年までに自社ECがZOZOを上回るよう、自社EC主体のビジネスモデルを構築していくとのことです。

株式会社デイトナ・インターナショナルの最近の動き

 続いて、株式会社デイトナ・インターナショナルの近年の動向で注目しておきたいものを、ピックアップして解説します。

CXプラットフォーム導入による顧客体験の改善

 2022年11月、株式会社デイトナ・インターナショナルは自社ECにCXプラットフォーム「KARTE(カルテ)」を導入しました。OMO施策の一環として導入された同ツールは、ショップ上の顧客行動をリアルタイムで解析しながら、最適なレコメンドや広告の効率化を行うことで、顧客体験を向上させます。

 店舗に設置している診断サービスの結果に反映させたり、割引クーポンの配布を行ったりと、リアルタイム解析ならではの強みを生かしたアクションを可能にするツールといえるでしょう。

ツール導入で店舗スタッフのECコミット率を向上

 2020年、株式会社デイトナ・インターナショナルはオンライン接客サービス「STAFF START(スタッフスタート)」を導入しました。

 同サービスでは、これまでECと接点を持つことが難しかった実店舗のスタッフが自社ECや店舗のSNSにコーディネートを投稿することで、ファン獲得につなげられます。これにより、店舗スタッフのECへの貢献度合いが可視化され、スタッフの積極的なコミットが期待できるようになったそうです。

 同ツールを通じて実店舗スタッフのECへの貢献を正しく評価できるようになるだけでなく、実店舗スタッフのモチベーションを高めたり、店舗とECの融合がより加速されたりといったことが期待されます。

新ECサイトへAI検索機能の実装でさらなる利便性を実現

 生まれ変わった自社ECサイトDaytona Parkでは、AIを実装した高度な検索機能を利用できます。画像検索機能を使うと、そのアイテムと同一、あるいは類似した商品が紹介されるため、オンラインにおけるより感覚的な購買体験の実現が可能です。

 これにより、「SNSで見かけた商品が気になるけど名前がわからない」といったケースにも、多様で簡便な検索機能で対応できるようになりました。

株式会社デイトナ・インターナショナルの気になるトピックス

 そのほか、株式会社デイトナ・インターナショナルの気になるトピックスを以下にまとめています。

2023年5月26日:ローカルのパワーとファッション企業のデザイン力が食料危機を救う!?静岡県とFREAK’S STOREが未利用資源・未利用魚をテーマにした「食べて・着て・知る、SDGsプロジェクト」を発足!

 デイトナ・インターナショナルは、静岡県水産・海洋技術研究所と共同で未利用資源を使用した特産品「焼津鰹のペペロンチーノ」を開発・発売開始した。

2023年5月22日:【アパレル企業の枠を超えた試み】店舗DXソリューション「+PLUS Series」の外部提供をスタート!

 デイトナ・インターナショナルは、オフラインとオンラインを融合させたOMOの取り組みとして、オリジナルインタラクティブミラー「+PLUS MIRROR(プラスミラー)」を企画・開発した。

2023年4月7日:FREAK’S STOREからラジオが誕⽣!『ラジオフリークス』 powered by FREAK’S STORE

 全国約50店舗を展開するセレクトショップ「FREAK’S STORE」がLuckyFM茨城放送のラジオ番組をプロデュース。2023年4⽉7⽇〜6⽉の毎週⾦曜⽇19:30〜20:00期間限定での放送が決定した。

2023年3月17日:フリークス電気プロジェクトからうまれた信州産クラフトビール「爽快電撃ビア」がFREAK’S STOREからローンチ!

 全国約50店舗を展開するセレクトショップ「FREAK’S STORE」は、再生可能エネルギー「フリークス電気」プロジェクトから生まれた信州産クラフトビール「爽快電撃ビア」を開発し、3月18日(土)より発売を開始した。

2023年2月15日:⻑野県庁とデイトナ・インターナショナルが協業した企画「ジビエ フリーク」

 デイトナ・インターナショナルは、FREAK’S STORE出店地域において、地元アーティストや地⽅⾃治体、⾏政、企業などのローカルコミュニティと直接つながり、地域によって異なる課題に⽬を向けた施策を強化している。

まとめ

 この記事では、株式会社デイトナ・インターナショナルが実践するEC施策やDX推進のアプローチについて解説しました。

 アパレルEC黎明期からECを展開してきた同社では、実店舗の強みも活かしつつデジタル空間でも存在感を発揮するべく、両者を融合するOMO化を強力に推し進めています。

 多角的な事業展開だけでなく、実店舗スタッフのEC寄与度を可視化したり、検索機能を改善したりといった抜本的な取り組みにも注力する同社の成長から、今後も目が離せません。

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この記事の著者

EC研究所(イーシーケンキュウジョ)

ECについての情報を調べ、まとめてお届けします。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://eczine.jp/article/detail/13235 2023/07/29 00:00

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