データ分析で見つけたD2Cの「勝ちパターン」
では、その価値をどのように成長させていくか。そして、D2Cの勝ちパターンとは何か。高橋氏は「まず、モノを売るよりも、人を集めることが重要。人が多く集まれば、商品を売るのは難しくない」と話す。
顧客IDをリスト化しているブランドであれば、より解像度が高い顧客に向けて商品や関連サービスを販売できるため、事業を広げやすくなる。そして、集まった顧客との対話を通じて商品開発ができる。
「モノを売って人を集めるのではなく、人を集めてモノを売る。バリューチェーンの逆流化といえます」(高橋氏)
ZENBでは、メディア広告などにおいて「便益」を訴求することを意識している。多くの人が生活の中で抱える悩みに対して、ZENBが貢献できるメッセージを発信する。たとえば、「糖質オフ」「豆100%」などがキーワードだ。
そして、集まった顧客の受け皿として、自社EC・Amazon・楽天市場の3つの売り場を用意している。
「Instagramやテレビ番組など、メディアも多様であるため、集客したメディアによって顧客が来る売り場も異なります。そのため、自社ECのみで販売することは不満につながります。Amazonや楽天市場で買いたい人もいる中で、自社ECを強制することになるからです」(高橋氏)
どのメディアから集客したかによって、売上が増える場所も変わる。テレビで紹介されると、最も売上が伸びるのはAmazonだそう。「テレビで取り上げられると、自社ECの売上は平常時の2倍に伸びるが、Amazonは5~10倍になる感覚だ」と高橋氏は話す。このことから同社は、様々なデータを分析しながら、メディア展開に合わせて戦略を変えている。
収集するデータの中でも同社が重視している指標が、顧客ロイヤリティを数値化したNPS(Net Promoter Score)だ。商品を多く購入したり、ポジティブな口コミを広げたりする「良い顧客」のNPSは高くなる。そういった良い顧客と、ネガティブな反応をする「良くない顧客」を見分けるために、同社はNPSを活用している。
当然、NPSが高い顧客に商品を売るが、そのためには5つの要素が必要となる。まず、入口となる商品を定義すること。ブランドで最初に接する商品で良い体験ができれば、継続して購入したり、他の商品へと興味が広がったりする。
次に、提供価値(便益)を提示すること。顧客の悩みや要望に応えられる商品だと明確にわかる売り方をする。たとえば、商品の名称。実際に、従来は「パスタソースセット8食」という名称で販売していた商品を「コレステロールゼロセット8食」に変更したところ、それだけで売上が100倍になったという。
3つ目と4つ目は、前出した「集客」と「売り場」。そして、最後が「決済」となる。高橋氏は「実は決済方法によって、NPSや販売単価、LTV(顧客生涯価値)にかなり差が出ている。より良い顧客が集まる決済方法を常に探している」と明かす。