化粧品会社の事例から企画方法を紐解く
本セッションでは、ライブコマースが事業成長に貢献した化粧品会社の事例も紹介された。
同社では、自社ECサイトの周年記念として単発で実施予定だったライブコマースを継続的な実施に変更。これにより、ライブコマース経由で商品を購入した顧客の自社ECサイト来訪頻度が1.5倍、月間購入金額が1.7倍、ライブコマースで紹介された商品の月間売上個数が3.5倍に増加したという。
「本事例のポイントは3つです。1つ目は、キャスト。あえてファッションデザイナーや『推し活』の対象となるタレントを起用し、ブランドのファン層を拡大しました。
2つ目に、コメントへのリアルタイムな反応を徹底しました。真実味を持たせながらの情報発信に注力しました。
3つ目は、インセンティブです。インフルエンサーがコーディネートした洋服をプレゼントする企画や限定セットを用意することで、ライブ配信でわざわざ買うメリットを作っています」(澤田氏)
企画は福井氏が担当。ライブコマースに留まらず、実店舗でも通常であればできない体験を準備した。それにより実店舗と自社ECサイトで顧客の分散も懸念されたが、ブランド全体のエンゲージメントが高まった結果、「通ってもらえる自社ECサイト」に育った。
ライブコマースからライブマーケティングへ
ライブコマースの活用が徐々に広まる中で、そのUIも進化している。ライブ配信プラットフォーム「Tig LIVE」を提供するパロニム社の小林氏は、ライブコマースのUIを同プラットフォームにおける活用例とともに述べた。
アパレルにおける活用例
配信者が実店舗内で商品紹介をしている最中、画面に映りこんだ別の洋服へのコメントが来る場合がある。Tig LIVEでは、コメントされた洋服の値札をバーコードリーダーで読み取ると、画面に商品情報を表示でき、顧客は画面をタップすれば購入ページに飛べる仕様になっている。
本屋における活用例
小説を紹介するライブ配信で、「みんなの恋愛経験をこっそり教えて」といったアンケートを実施。その結果によって、紹介する小説を変えるなど視聴者に合わせた対応ができる。紹介された小説は画面上で試し読みしたり、配信者が一部を音読したりすることで、購買意欲を刺激している。
ライブ配信中はもちろん、配信後にも顧客を離さない工夫が求められる。そのためパロニム社のTig LIVEでは、ライブ終了後のアーカイブ動画と、ライブ中に紹介された各商品の決済ページを自動連携し、円滑な購入導線を実現。さらには、該当商品が紹介されているシーンから自動的に再生されるUI/UXにもこだわっている。
実際に過去のライブ配信をフローティング動画として表示したところ、あるアパレルモールでは購入者の7割が視聴していることがわかったという。
このように双方向性を最大限に活かし、配信者と視聴者のコミュニケーションから有機的に変化するTig LIVEの形態を、小林氏は「セレンディピティ型」と位置付ける。
「Tig LIVEのライブコマースは、既に用意されたコンテンツではなく、視聴者の反応に合わせて内容が変化していきます。双方向のコミュニケーションを築くことができると、ライブ配信の視聴完了率や商品ページへの遷移率も高くなります。つまり、ライブコマースがエンゲージメントの向上に影響を及ぼしているということです」
生活者の消費行動に合わせて進化を続けるライブコマース。最後に澤田氏は、小林氏が述べたUIとUXの進化を踏まえつつ、これから目指すライブコマースの形を語りセッションを締めくくった。
「HAKUHODO Live Commerce+は、『生活者と事業者どちらにも貢献するライブコマースとは何か?』を模索しています。また、パロニム社とは実店舗での体験をデジタル上でも実現し、より上質な顧客体験を提供するための連携を進めています。
今後はさらに、ライブコマースをライブマーケティングにまで拡大していきたいと考えています。そのための取り組みをクライアント企業様とともに行っていきたいです」(澤田氏)