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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

ECzine Day 2023 Spring レポート(AD)

ライブコマースは顧客のエンゲージメントにも有効 企画のポイント4つを博報堂DYグループが解説

 コロナ禍を経て様々な形態のeコマースが登場しているが、特に注目を集めているのがライブコマースだろう。2023年3月16日開催の「ECzine Day 2023 Spring」では、株式会社博報堂 ショッパーマーケティング事業局 コマースDX推進グループ マーケティングプラニングディレクター 澤田航太氏、エクスペリエンスクリエイティブ局 統合ディレクター 福井健史氏、ライブ配信プラットフォーム「Tig LIVE」を提供するパロニム株式会社 代表取締役CEO 小林道生氏の3名が登壇。ライブコマースによる新しい顧客体験と取り組みを紹介した。

ライブコマースは「短期的ブーム」で終わらない

 博報堂DYグループには、同グループのナレッジやスキルを活かし、EC起点の事業コンサルに対応する組織「HAKUHODO EC+」が存在する。その中でもライブコマースに特化した部隊が、澤田氏と福井氏の所属する「HAKUHODO Live Commerce+」だ。コンサルタントやクリエイターが在籍し、ライブコマースのキャスティングから企画、制作進行、効果分析までをワンストップで支援する。

HAKUHODO Live Commerce+ 体制
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 セッション冒頭では、澤田氏がライブコマース市場の現状を解説。ライブコマースの特徴を3つ挙げた。

「1つ目の特徴は『SNSを用いた拡散』です。インフルエンサーや企業のSNSアカウント、ECサイト上でライブ配信が行われるため、起用されるインフルエンサーの拡散力で視聴の輪が広がります。

 次に『インタラクティブ』であること。視聴者によるコメントがリアルタイムで表示され、配信者との双方向での会話が可能です。

 最後に『即時購入』できることが挙げられます。ECサイトへの誘導や画面上の埋め込みボタンから、視聴者はライブ配信中に商品を購入できます」(澤田氏)

株式会社博報堂 ショッパーマーケティング事業局 メーカーDXグループ マーケティングプラニングディレクター 澤田航太氏
株式会社博報堂 ショッパーマーケティング事業局 コマースDX推進グループ マーケティングプラニングディレクター 澤田航太氏

 澤田氏によると、中国での大流行を受け2017年頃には日本でもライブコマースの第1次ブームが起こったものの、市場環境や文化の違いから定着しなかったという。しかし、コロナ禍でオンライン上の顧客接点が求められるようになると、2020年には第2次ブームとして再びライブコマースが注目され始めた。

 ここで澤田氏は、「ライブコマースの再注目は短期的ブームではない」と強調する。

「近年は、買いたい商品を発見した瞬間に買い物を終わらせる『パルス型消費』が広まっています。また、誰から商品を買うのか、どのような体験ができるのかが購入の後押しとなる傾向も見られます。こういった消費行動には、先ほど挙げた特徴を持つライブコマースが非常に有効です」(澤田氏)

 生活者の消費行動に合致し、売上増加が期待できるライブコマース。ただし、同社は単純な売上獲得装置と考えているわけではない。生活者の変化に対応したブランドになるためのマーケティング手法としてとらえているのだ。

「たとえば、新しい接客を実現する顧客接点と考えることもできます。さらには、リアルタイムで届いたコメントを商品開発に活かすこともできるでしょう。ブランドエンゲージメントを向上するきっかけとしてライブコマースを取り入れることが、生活者の変化に対応するための重要な論点なのです」(澤田氏)

ライブコマースを成功に導く4つのポイントとは

 では、実際にライブコマースを行う場合、どのような点に気をつけて企画すれば良いのか。福井氏からは、ライブコマースを企画する上で重要となる4つのポイントが紹介された。

株式会社博報堂 エクスペリエンスクリエイティブ局 統合ディレクター 福井健史氏
株式会社博報堂 エクスペリエンスクリエイティブ局 統合ディレクター 福井健史氏

1.ライブコマースの“役割”をはっきりさせる

 ライブコマースには多様な効果が期待できる一方、目的に合わせてその役割に優先順位をつける必要がある。図にあるような役割のうち、今回のライブコマースでは何を期待するのかはっきりさせることで、視聴者を引き込む企画となる。

1.ライブコマースの“役割”をはっきりさせる
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2.ライブコマースの“強み”を認識する

 ライブコマースの強みには「配信者と視聴者の一体感」「インタラクティブな対話」「予定調和でない生配信」の3つがある。これを理解することで、ライブならではの熱狂や視聴者とのコミュニケーションが生まれる。裏を返せば、この強みが活かせない場合はライブコマースにこだわる必要はない。

2.ライブコマースの“強み”を認識する
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3.ライブコマース“後の展開”を構想しておく

 「1回きりのライブコンテンツをどう作るか」だけで考えると、ライブコマースのポテンシャルを十分に引き出せない。ECサイトや店頭といった既存販路とのシナジー複数回で完結するシリーズ展開など、ライブコマースを起点にした、後の展開を構想しておく。すると、機能的なだけでなく、視聴者にも楽しんでもらえる企画になっていく。

3.ライブコマース“後の展開”を構想しておく
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4.ライブコマースの“構成要素”から考える

 ライブコマースの構成要素は、「キャスト」「企画」「インセンティブ」。キャストはライブコマースとの相性を踏まえて選ぶ。インセンティブはライブ配信でしか得られないメリットを考える。そしてキャストとインセンティブの相乗効果を、企画で生み出していく。

 中でもキャストは特に重要な要素だという。インフルエンサーや著名人がキャストとして参加するライブコマースの視聴者は、そのキャストのファンが中心になる。ファンが高揚感を得られるコンテンツにするためにも、キャスト起点で企画しなければならない。

4.ライブコマースの“構成要素”から考える
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 澤田氏はこれらを実装するにあたっての注意点をこう補足する。

「キャストはSNSアカウントのフォロワー数に加えて、ライブ配信の経験や事前告知に協力してくれるかも考慮して選びます。生活者がキャストに抱いているイメージも把握しておきたいところです。

 また、インセンティブもライブコマースの成功を左右します。わざわざライブ配信を視聴し商品を購入してもらうには、オリジナルグッズや配信者自身が選んだ商品を紹介するなど、その場だからこそ得られるメリットが必要です」

化粧品会社の事例から企画方法を紐解く

 本セッションでは、ライブコマースが事業成長に貢献した化粧品会社の事例も紹介された。

 同社では、自社ECサイトの周年記念として単発で実施予定だったライブコマースを継続的な実施に変更。これにより、ライブコマース経由で商品を購入した顧客の自社ECサイト来訪頻度が1.5倍、月間購入金額が1.7倍、ライブコマースで紹介された商品の月間売上個数が3.5倍に増加したという。

「本事例のポイントは3つです。1つ目は、キャスト。あえてファッションデザイナーや『推し活』の対象となるタレントを起用し、ブランドのファン層を拡大しました。

 2つ目に、コメントへのリアルタイムな反応を徹底しました。真実味を持たせながらの情報発信に注力しました。

 3つ目は、インセンティブです。インフルエンサーがコーディネートした洋服をプレゼントする企画や限定セットを用意することで、ライブ配信でわざわざ買うメリットを作っています」(澤田氏)

事例のポイント
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 企画は福井氏が担当。ライブコマースに留まらず、実店舗でも通常であればできない体験を準備した。それにより実店舗と自社ECサイトで顧客の分散も懸念されたが、ブランド全体のエンゲージメントが高まった結果、「通ってもらえる自社ECサイト」に育った。

ライブコマースからライブマーケティングへ

 ライブコマースの活用が徐々に広まる中で、そのUIも進化している。ライブ配信プラットフォーム「Tig LIVE」を提供するパロニム社の小林氏は、ライブコマースのUIを同プラットフォームにおける活用例とともに述べた。

パロニム株式会社 代表取締役CEO 小林道生氏
パロニム株式会社 代表取締役CEO 小林道生氏

アパレルにおける活用例

 配信者が実店舗内で商品紹介をしている最中、画面に映りこんだ別の洋服へのコメントが来る場合がある。Tig LIVEでは、コメントされた洋服の値札をバーコードリーダーで読み取ると、画面に商品情報を表示でき、顧客は画面をタップすれば購入ページに飛べる仕様になっている。

本屋における活用例

 小説を紹介するライブ配信で、「みんなの恋愛経験をこっそり教えて」といったアンケートを実施。その結果によって、紹介する小説を変えるなど視聴者に合わせた対応ができる。紹介された小説は画面上で試し読みしたり、配信者が一部を音読したりすることで、購買意欲を刺激している。

ライブコマース活用事例
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 ライブ配信中はもちろん、配信後にも顧客を離さない工夫が求められる。そのためパロニム社のTig LIVEでは、ライブ終了後のアーカイブ動画と、ライブ中に紹介された各商品の決済ページを自動連携し、円滑な購入導線を実現。さらには、該当商品が紹介されているシーンから自動的に再生されるUI/UXにもこだわっている。

 実際に過去のライブ配信をフローティング動画として表示したところ、あるアパレルモールでは購入者の7割が視聴していることがわかったという。

 このように双方向性を最大限に活かし、配信者と視聴者のコミュニケーションから有機的に変化するTig LIVEの形態を、小林氏は「セレンディピティ型」と位置付ける。

「Tig LIVEのライブコマースは、既に用意されたコンテンツではなく、視聴者の反応に合わせて内容が変化していきます。双方向のコミュニケーションを築くことができると、ライブ配信の視聴完了率や商品ページへの遷移率も高くなります。つまり、ライブコマースがエンゲージメントの向上に影響を及ぼしているということです」

セレンディピティ型ライブコマース
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 生活者の消費行動に合わせて進化を続けるライブコマース。最後に澤田氏は、小林氏が述べたUIとUXの進化を踏まえつつ、これから目指すライブコマースの形を語りセッションを締めくくった。

「HAKUHODO Live Commerce+は、『生活者と事業者どちらにも貢献するライブコマースとは何か?』を模索しています。また、パロニム社とは実店舗での体験をデジタル上でも実現し、より上質な顧客体験を提供するための連携を進めています。

 今後はさらに、ライブコマースをライブマーケティングにまで拡大していきたいと考えています。そのための取り組みをクライアント企業様とともに行っていきたいです」(澤田氏)

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提供:博報堂DYホールディングス

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://eczine.jp/article/detail/12619 2023/05/15 11:00

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