ライブコマースは「短期的ブーム」で終わらない
博報堂DYグループには、同グループのナレッジやスキルを活かし、EC起点の事業コンサルに対応する組織「HAKUHODO EC+」が存在する。その中でもライブコマースに特化した部隊が、澤田氏と福井氏の所属する「HAKUHODO Live Commerce+」だ。コンサルタントやクリエイターが在籍し、ライブコマースのキャスティングから企画、制作進行、効果分析までをワンストップで支援する。
セッション冒頭では、澤田氏がライブコマース市場の現状を解説。ライブコマースの特徴を3つ挙げた。
「1つ目の特徴は『SNSを用いた拡散』です。インフルエンサーや企業のSNSアカウント、ECサイト上でライブ配信が行われるため、起用されるインフルエンサーの拡散力で視聴の輪が広がります。
次に『インタラクティブ』であること。視聴者によるコメントがリアルタイムで表示され、配信者との双方向での会話が可能です。
最後に『即時購入』できることが挙げられます。ECサイトへの誘導や画面上の埋め込みボタンから、視聴者はライブ配信中に商品を購入できます」(澤田氏)
澤田氏によると、中国での大流行を受け2017年頃には日本でもライブコマースの第1次ブームが起こったものの、市場環境や文化の違いから定着しなかったという。しかし、コロナ禍でオンライン上の顧客接点が求められるようになると、2020年には第2次ブームとして再びライブコマースが注目され始めた。
ここで澤田氏は、「ライブコマースの再注目は短期的ブームではない」と強調する。
「近年は、買いたい商品を発見した瞬間に買い物を終わらせる『パルス型消費』が広まっています。また、誰から商品を買うのか、どのような体験ができるのかが購入の後押しとなる傾向も見られます。こういった消費行動には、先ほど挙げた特徴を持つライブコマースが非常に有効です」(澤田氏)
生活者の消費行動に合致し、売上増加が期待できるライブコマース。ただし、同社は単純な売上獲得装置と考えているわけではない。生活者の変化に対応したブランドになるためのマーケティング手法としてとらえているのだ。
「たとえば、新しい接客を実現する顧客接点と考えることもできます。さらには、リアルタイムで届いたコメントを商品開発に活かすこともできるでしょう。ブランドエンゲージメントを向上するきっかけとしてライブコマースを取り入れることが、生活者の変化に対応するための重要な論点なのです」(澤田氏)