海外への販路拡大のチャンス!コロナ禍で越境ECを始める企業も
市場概況の前に、日本の事業者にとって越境ECに取り組むビジネスチャンスが到来していることを伝えたいと村田さんは言う。その理由はふたつある。
「世界の消費者を見ると、『2020年と比較して海外のECサイトから購入することに抵抗を覚えなくなっている』が42%となりました。日本では一般的とまでは言えませんが、国によっては越境ECの利用が7割を超えるところもあります。そんな中、円安傾向により海外の消費者が日本の商品を購入しやすくなることから、日本にとって有利な状況にあると言えます。現在、多くの日本の中小企業様にもペイパルをご利用いただいていますが、我々のデータから見るにジャパンブランドへの評価は高く、日本の良い商品サービスを海外で販売するチャンスはもっとあるのではないかと感じています」
日本のポップカルチャーへの支持やインバウンド観光客の爆買いなど、越境ECが脚光を浴びる機会がこれまでもなくはなかったが、言語や通貨、物流などバックヤードの壁に阻まれてきた。
「従来、日本の中小規模の事業者様に越境ECについてお尋ねすると『優先順位が高くない』との回答が一定の割合でありました。しかしながら2021年12月に発表した『ペイパル 中小企業によるEコマース活用実態調査』では、45%が既に行っている、もしくは計画中との回答でした。既に行っていると回答した事業者のうち、39%がコロナ禍に開始しています。国内だけでビジネスを拡大するのが難しくなっていく中、海外に目を向け、成長を模索する動きが始まっています。越境ECにお取り組みになる中小企業様をペイパルではしっかりとサポートしていきたいと考えています」
意外と知らない日本のECサイトから購入する国とは
越境ECを始めるといっても世界は広く、言語や通貨はさまざまある。どこに向けてビジネスを行うかを考えるヒントとして、村田さんは「2022年ペイパル海外通販レポート」より、日本のECサイトから積極的に購入する傾向がありながら、それがあまり知られていない国として、ブラジルとメキシコを紹介してくれた。どちらも越境ECの購入先の国として、日本が3番目に高い割合となっている。
「レポートによれば、両国とも越境ECで購入する商品カテゴリとして『衣料品・アパレル』が4割強を占めています。利用者の年齢層を見ると、45歳未満が約7割を占め、若い層が消費を引っ張っていることがわかります。越境ECを利用する理由としては、価格の安さもありますが、『新しくて面白い商品が発見できる』が高い割合であることにも注目です。決済手段としては、ブラジルではペイパルが3割、メキシコでは5割となっています。このようなデータは、販路拡大の国と地域を定める際のヒントになるのではないでしょうか」
「2022年ペイパル海外通販レポート」よりブラジルの消費者基本データ
「2022年ペイパル海外通販レポート」よりメキシコの消費者基本データ
やはり距離が近いアジア地域についても、おさえておきたい。中国、香港は本レポートでも日本のECサイトからの購入が3割以上を占めているが、経済成長を遂げたシンガポールも気になるところだ。
「シンガポールは、越境ECを利用する年齢層が55-64歳が最多となっているのが特徴です。将来を見据えて若い世代にも注力すべきですが、現時点で多数を占める利用者層にいかにアプローチするかも重要でしょう。
コロナ禍の2020年以降、新たにペイパルを利用するようになったユーザーのデータを見ると、50歳以上の『シルバーテック』と呼ばれる層が世界的に急増しました。従来はリアル店舗を中心に利用していた層が、ロックダウン等でEコマースを利用するようになり、ロックダウンが解除されてもEコマースの利用を続けていると考えられます。シンガポールはまさに、シルバーテックの層が越境ECのトレンドを作っている良い例と言えるかもしれません」