老若男女に親しまれる米をギフトに 目を引く商品づくりでUGCを生む好循環を
橋本隆志さんが江戸時代後期の1787年から続く家業を存続しながら、2006年に設立した株式会社八代目儀兵衛。設立のきっかけは米の消費量や生産農家の減少、食生活の変化による米の価値低下に創業者の橋本さんが危機感を覚えたことにあったと神徳さんは振り返る。
「正しいお米の価値を伝えるには、商圏を絞らずに販売する必要がある。そう考え、八代目儀兵衛は創業当初からECでの販売を行っています」
米をギフトで届ける点に着目した理由としては、日本に住んでいれば誰もが一度は食べたことがあり、年代・性別を問わず贈って喜んでもらえる商材であることに加え、八代目儀兵衛独自のギフトとして楽しめるアプローチができると考えたからだと言う。
「当時は市場が空白の状態であったことも舵を切った理由のひとつですが、当社の創業者は『五ツ星お米マイスター』の資格を持っており、高級料亭やホテルなどへ料理に合ったブレンド米を卸していました。そこで『洋食に合うお米』『おむすびに合うお米』というように用途に合わせたお米を提案し、バリエーションを楽しんでもらうギフトとして生まれたのが、いちばん人気の商品『十二単「満開」』です」
「十二単『満開』」は、2合米12種を米の種類別に色分けした風呂敷に包んだギフト商品だ。主に内祝いとして購入されており、八代目儀兵衛は同商品を軸にさまざまなギフト需要・価格帯に応じた商品を展開している。
「2020年まではEC売上の98%がギフトでしたが、あるテレビ番組で取り上げていただいたことをきっかけにご自宅用の需要が増え、現在は約80%がギフト、20%がご自宅用という売上構成になっています」
八代目儀兵衛でギフトを購入する顧客の主な流入経路は検索、次いでInstagramとなっていると説明する神徳さん。顧客自身が手に取るのではなく、親族・友人・知人など大切な人へ贈るギフトの特性を踏まえ、開封した瞬間に華やかな気持ちになるような商品づくりを意識した結果、「Google ショッピング タブの一覧内でも目を引いて選ばれやすく、かつもらった人も『こんなにかわいいギフトをもらいました』と投稿したくなる好循環が生まれている」と語る。
「お米は見ためだけで差別化を図ることが難しく、ブランドが重要になる商材です。ネーミングバリューを重視するとどうしても『魚沼産コシヒカリ』のようにわかりやすいものが選ばれますが、産地や銘柄が一般の方には知られていなくても、おいしいお米はたくさん存在します。その価値を知ってもらいやすくするために、たとえば『ミシュラン3つ星レストランの●●で使われている』など実店舗の名前を挙げたり、京都の地の利を活かした商品名やストーリーを前面に出して商品開発をしたり、メッセージを伝えたりといったことを意識的に行っています。
また、多くの方に知っていただくという観点ではSEO対策に力を入れています。ギフト需要は主に『結婚祝い』『出産祝い』『法事・弔事』の3本柱で成り立っていますが、これらに関連するビッグワードは大手モールなどがすでに検索結果の上位を占拠しており、商品数やアクセス数の多さで当社は太刀打ちできません。そこでビッグワードに紐づくサジェストに目を向け、たとえば『香典返し 喜ばれる』『結婚祝い おしゃれ』というキーワードで上位を獲得できるように工夫を施しています」