物流オペレーション改善にもつながるギフトECの必須要件とは
EC起点でビジネスを始め、「京の米料亭」「銀座米料亭」といった実店舗を展開するなどチャネル拡大にも積極的な八代目儀兵衛だが、2022年3月に抜本的な自社ECリニューアルを実施。2019年に入社し、CMOという立場からデジタル強化に取り組む神徳さんにとって、このリニューアルは必要不可欠なものであったと語る。
「八代目儀兵衛に入社し、さまざまな施策展開を検討する中で自社ECの課題が明らかになってきました。基幹システムもフロント・バックエンドのシステムも7、8年ほど前に作られたもので構築したメンバーはもう在籍しておらず、仕様書も存在しない。UI/UXやデザインの改善を行うにもコーディングの知識が必要で、限られたリソースの中で迅速に対応するのは難しい状況でした。顧客の使いやすさをより追求するため、そして八代目儀兵衛の世界観や商品そのものが持つパワーをより効果的に伝えるにはリニューアルが必要だと考え、動き始めました」
神徳さんの入社から3ヵ月後には基幹システム・自社ECリニューアルのプロジェクトが始動したが、各システムの選定に約3~4ヵ月、基幹システムの移行に約1年を要した。並行して進めた自社ECリニューアルは、プロジェクト開始から約1年半後にようやく実現したと言う。
「八代目儀兵衛の方向性をしっかりと提示すべく、『ブランドとして何を伝えるか』という構想から改めて練り直しました。急いでリニューアルを行っても失敗しては意味がないと考えて要件定義に時間をかけましたが、中でも苦労したのがカートシステムの選定です。
今回カートシステムを選ぶにあたり、『ギフト対応できること』を最優先としていましたが、のしの種類を選べるようにしたり、メッセージカードを入れたりといった当社の要件を十分に満たすカートシステムはなかなか見つかりませんでした。ところがある日、ほかの食品ギフトECを見ていた中で『aishipGIFT』と出会い、ギフトECに最適化された機能をきちんと実装できる点に魅力を感じました」
八代目儀兵衛でギフトを注文する顧客の中には、冠婚葬祭にともない初めてギフトを贈るというケースも多く存在する。百貨店などの実店舗では要望を聞いた上で適した水引や表書きの記載内容を提案できるが、ECでこれと同様のサービスを提供するのは難しい状況であった。
「顧客から『どののしを選んだら良いのか』といった問い合わせをいただくことも多く、リニューアル以前は実際に注文をいただいた後に当社が水引の種類や表書きの記載内容に不備がないか、メッセージカードに誤字・脱字がないかといった確認をすべて人の目で行うようにしていました。
もちろんリニューアル後も確認自体は行っていますが、水引や表書きの選択はギフトオプション設定時に顧客が『結婚祝い』『香典返し』といった目的を選ぶと、ビジュアルとともに適切な選択肢が自動で提示されるため、EC上で間違いの防止を実現しています。また、のしについてのマナーがわかるコンテンツなども作成し、顧客が自力で解決しながらスムーズに購入できる仕組みを整えた結果、リニューアル後の問い合わせ件数が大幅に減り、物流のオペレーション改善にもつながりました」
カートシステムをASP型に変更したことで、同社はコンテンツ更新の人員を増やすことにも成功した。従来はコーディングの知識を要したため、専任の担当者1名が自社EC運用を行っていたが、現在はかんたんなHTMLの知識を身につけた3名ほどで役割分担をし、季節ごとの訴求内容の変更や特集ページの作成も容易になったと神徳さんは続ける。
「リニューアルを機に、外部のメッセージカードサービスとのASP連携も実現しました。以前よりメッセージカードサービスは活用していましたが、別途同サービスへID登録をしてメッセージを作成し、カード番号を控えて注文画面の備考欄に記載いただくなど、デジタルなはずなのに、アナログな作業を要する状況でした。すると、面倒だと離脱してしまったり、心を込めてメッセージを作成している最中にセッションが切れてカートの中身が空になってしまったりとさまざまな問題が生じていたのです。
連携後は注文フローの中でメッセージカードの作成ができるほか、すでにカードを作成済の方はマイページから該当するメッセージを選べるようになりました。こうした1つひとつの改善が実を結んだのか、リニューアル初月の売上は前年比110%以上、翌月は前年比140%以上に成長しています。カートシステムを移行した直後は数字が落ちるかと思ったのですが、すでに前年以上の数字を記録しているので今後がより楽しみです。今回のリニューアルでデータ収集環境も整備したため、これからはCRMにも注力したいと考えています」