ネット通販企業に打ち克つ ワークマンの「クリック&コレクト」
ワークマンはショッピングセンター運営のベイシアやホームセンターのカインズなどと売上高1兆円企業グループを組む。22年3月には東急ハンズも仲間に加わる。
作業服や安全靴、作業用品、アウトドアウェアなどの販売を手がけてきたワークマンは、新たな店舗ブランド「ワークマンプラス」や「ワークマン女子」を開発。アウトドアウェア、スポーツウェア、レインスーツなど、一般客や女子向け商品の売れ行きも好調である。
フランチャイズ(FC)加盟店を含めた全チェーン売上高は1,450億円を突破。2.6点の商品を選び、合計で2,800円強を支払う買い物客も右肩上がりで増えている。各店の1日平均客数は170人に迫っている。
ワークマンの概要
ワークマンは「店舗在庫による店舗受取通販」、いわゆるクリック&コレクトにシフトした理由をわかりやすく説明している。
「既存の宅配便利用ではアマゾンなどネット通販大手に対抗できない」
「ネット専業に配送コストでも負けないためには、全国の店舗網のメリットを活用すべき」
「店舗在庫の店舗受取ならば、配送コストと時間でネット通販大手に負けない」
「店舗在庫がない製品は、本部から店舗へ毎日行くチャーター便に載せる(追加コストなし)」
ネット通販事業の拡大をアピールすることはあっても、利益に言及する企業は皆無といっていい状況にあって、ワークマンはネット通販による“利益確保”をアピールする姿勢を示した、といえよう。
全国都道府県に店舗網を築いたことも大きい。ワークマンは、1980年の1号店開業から40年、2020年に宮崎県に出店し全都道府県店舗を実現。足元を見れば、ネット通販利用客の多くが店舗受取を選択していることも確認したという。
ワークマンが「店舗在庫による店舗受取通販」へシフトしたのは、FC加盟条件とも無縁ではない。
同社の最大の特徴はFC展開だが、法人契約が主体の神戸物産の「業務スーパー」などとは対照的に、個人契約が基本である。近隣に住む夫婦が店舗運営に直接従事することを条件にしている、といっていいだろう。
地方のワークマン店舗を訪れると、かつては当たり前だった隣近所の店という雰囲気が残る。そうしたFC店舗との共存も考慮したためと推定できる。実際のところ、「店舗在庫による店舗受取通販」による販売の多くは、FC加盟店の売上高になるという。
「店舗在庫による店舗受取通販」へシフトは、ワークマンだから可能ともいえるだろう。新たに立ち上げた自社オンラインストアの当初の売上目標は30億円。金額的には驚くような数字ではないが、実店舗主導型ともいうべきワークマンの通販事業の成否に注目したい。