「広告」ではなく「情報」を届ける リテールメディアが持つ価値とは
最後に両氏は、リテールメディアの現状、特徴と価値について説明を行った。前出したSafewayのアプリでも、オリジナル動画2~3点の間に広告が差し込まれている。SNS広告に近しいフォーマットの広告商品を、小売企業が自ら展開しているのだ。
「アメリカでは、購入意欲の高い顧客はリテールのメディア上に多いというデータもすでに発表されています。さまざまな媒体で従来のようなリターゲティングを行うよりも、すでにEC上にいる顧客に対して最適な商品を届けることが大きな価値となっていくのではないか。そう感じています」(瀧澤氏)
日本でも、実店舗にチラシやポップ、サイネージを設置してメーカーからリベートを受け取るといった形で「店舗のメディア化」は行われてきた。しかし、店舗単位での取り組みは管理・運用の手間やコストが大きい。デジタルであれば配信の管理がしやすく、広告効果の計測や可視化も容易となる。
加えて、デジタルは顧客と1to1でつながりやすい点もメリットだ。自社で収集した会員情報、購買履歴や趣味嗜好などの情報を管理し、それらに基づいた最適な情報配信ができれば、顧客にとっても得るものが大きい。
「収益を得ること前提で広告を貼り、売場をメディア化するのではなく、メディアとしてのおもしろさ、買い物の楽しさを提供した上で収集したファーストパーティデータを使い、カスタマイズされた広告を配信する。こうすることで、広告でも顧客にメリットある情報として理解していただくことができるはずです。このストーリー作りを間違えてしまうと顧客が離反してしまうため、注意は必要です」(逸見氏)
ここで逸見氏は、かつて自身がAmazonの広告販売を行っていた経験を振り返った。トップページやバナーに書籍の広告を掲載すると認知度が上がり、Amazonだけでなく書店での売上も上昇したと言う。
「オンライン上のメディアに出稿することで接点が増え、実店舗と異なる顧客にもリーチすることができます。だから、Amazonに広告を出してAmazon以外でも売れるということが起きるのでしょう。これは10年以上前の話ですが、今まさに同様のストーリーが多くの企業や商品で起きていると実感しています」(逸見氏)
リテールメディアに取り組む際には、「企業と顧客の信頼関係が必要になる」と逸見氏は強調する。ショート動画を活用して自社ECサイトをエンタメ化し、顧客がウェブやアプリ経由で買い物をする習慣を作り上げる。そして取得した情報を基に、正しいレコメンドやCRMを実現する。こうしたコントロールをしっかりと行った上で、さらなるステップとして小売のエンタメ化、リテールメディア展開を考えていくべきだと逸見氏は続ける。
「顧客と関係が築けていれば、自社で販売する商品以外の情報をリテールメディア上で届けても問題ありません。たとえば百貨店であれば、売場には陳列できない自動車の広告を出すといった具合です。顧客の需要に合った動画配信であれば、それは『広告』ではなく『情報』となります。ここまで突き抜けると、小売業も再び活気づいていくでしょう」(逸見氏)
「Fireworkにも、最近はEC企業から『リテンションを高めたい』『買わなくてもいいから、毎日サイトに来てもらえるようにしたい』といったようなご相談が増えています。逆に、メディア企業はEC販売に興味を持っており、双方が融合しつつあることを感じています。動画はそのどちらにもフィットさせることが可能です」(瀧澤氏)
自社メディア・EC起点で顧客体験を向上 2022年はより動画が重要に
スマートフォンでの動画視聴が当たり前になり、ショッピングの形も変わりつつある現在、SNSプラットフォームも「動画×コマース」に注力した機能を続々とリリースしている。企業はこうした場を活用し、コンテンツ展開しているケースが多いが、それでは自社で顧客情報の取得ができず、露出や拡散状況などのコントロールも困難だ。
Fireworkが目指す世界は、情報発信元である自社メディアやECサイトに顧客や情報を集め、そこを起点にSNSへのコンテンツ投稿やメール配信、リテールメディアへの広告出稿を行う流れを作ることだと言う。自社運営する場であれば、会員情報を集めながら、CVRやAOV(Average Order Value:平均注文金額)などのデータも計測できる。これらを実現するためにも、「SNSと変わらない顧客体験を提供する、自社メディア・ECサイトのアップグレードをサポートしていきたい」と瀧澤氏は語った。
ショート動画を軸に据えたコミュニケーション戦略は、小売業だけでなくD2Cブランドやメーカー、メディア、代理店などさまざまなジャンルで活用できる。コロナ禍によるオンライン消費の伸びと、スマートフォンでのコンテンツ消費の拡大、5Gなど通信環境の進化を背景に、2022年はますます動画が重要なキーワードとなっていくことは間違いない。Fireworkではこうした背景を踏まえ、「スマートフォンにフィットした縦型動画配信の環境だけでなく、目的を整理した上での動画制作のサポートや、配信後の計測、エンゲージメントの強化、CRMの構築など、顧客と継続的な関係を作るためのソリューションを提供する」と意気込んだ上で、このように語りセッションを締めくくった。
「日本市場もこれから大きな変化を見せるはずです。皆様から質問などをいただきながら、一緒に小売業を進化させていきたいと考えています」(逸見氏)
「自社メディアやECサイトの価値を高める点と、スマートフォン活用に当社はフォーカスしています。ぜひ各社の動画活用、DX推進をお手伝いできればと思っています」(瀧澤氏)
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