LINE Pay は、2018 年6 月末に「Payment Revolution」と名付けられたQRコード決済普及施策を発表。その施策のひとつのカギとなるのが、2018年6月にリリースされた実店舗向けの決済アプリ「LINEPay 店舗用アプリ」である。2014年のサービス開始以来、オンラインを中心にサービスを拡大してきたLINEが、リアルの世界への進出を加速している。そんな表れにも見えた。今や人々の生活になくてはならないものとなったコミュニケーションプラットフォームを武器に、LINEはこれからどのような決済戦略を展開していくのか。LINE が考える、キャッシュレスを進めるべき本当の理由とは。LINE Payで取締役COOをつとめる、長福久弘さんに話を聞いた。
コード決済に舵を切ったLINE Pay そのきっかけは中国
Payment Revolution が発表される半年ほど前の2017年12月。LINE Payはビジネス向けのLINEアカウント「LINE@」を運営するLINE Business Partnersとの合併を行った。これにはいったいどんな意図があったのだろうか。
「LINE Payが目指している、『どこでもキャッシュレス決済ができるような世界』を実現するためには、35万を超える店舗に導入していただいているLINE@と会社同士を統合することで、よりキャッシュレスを含めたLINE Payを拡大していくことができるのではないかと考えました。決済をして終わりではなく、その後に店舗のLINEアカウントと友だち登録をして、そこからまたお客様とコミュニケーションを取ることができるというのが我々のサービスの大きな特徴です。必然に近い形で、会社としては一緒になったという感じですね。そしてこの合併は、2017年の下期にLINEが決済事業拡大への舵を切ったことの表れでもあります」
2014年のサービス開始当初は、オンラインの決済サービスとしてスタートしたLINE Pay。LINEのファミリーサービスやECサイトで買い物をする際に、LINE Payを選んでもらうことを目指していた。2016年には、オンラインだけでなくオフラインでも利用できるチャージ式のプリペイドカード「LINE Pay カード」をJCBとの連携により発行。これにより、LINE Payの残高を、リアルの場でも使うことができるようになった。そして、2017年末にLINE PayとLINE@の合併、2018年8月には実店舗向け決済アプリのリリース。順を追ってみてみると、この3年間の事業展開でLINE Payが行き着いた普及のためのひとつの答えが、コード決済なのだろう。なぜその解にたどり着いたのか。長福さんによれば、中国の決済事情を目の当たりにしたことが大きいという。
「我々は、中国のWeChatPayやAlipayの活況をずっとウォッチしていました。その中で、これらのサービスが中心となって展開されているキャッシュレスやフィンテックといったものが、人々の生活を豊かにしたり、人々の生活を変えることができると確信を持てたのが2017年。それを機に、LINE Payとしてはオフラインでの決済にしっかり入っていくんだということを意思決定しました」
実際に長福さんは何度も中国に足を運び、中国におけるキャッシュレスの実情を視察している。2017年からおよそ2ヵ月に1回ほどのペースで中国を訪れる長福さんがいちばん衝撃的だったのは、初めて中国を訪れた2017年の夏。「消費者がみんな、本当に二次元コードで支払っている」ことに驚き、街なかのコード決済にも非常に勢いを感じたという。だが、その様相がここにきて変わってきているようだ。
「ここ最近は、どんどん落ち着いてきているという印象を受けます。つまり、本当に中国の人々の生活に根付き始めているんだなと。これが、LINEの成長ととても似ていると感じています。2011年~13年くらいまでは、一種トレンドのようにLINEが世間に広まっていきましたが、2014年以降からはLINEがとくに目新しいものではなくなり、今だとLINEを使っていること自体が話題にされることはありません。これと同じように、中国におけるコード決済に今は特別な勢いをあまり感じない。どちらかというと完全に生活に馴染んでいて、すでに当たり前のものになっている。なにかものを買ったら現金で支払うのと同じように、スマホで支払う。日本よりも2つ3つ、先を進んでいる印象です」