2019年で40周年を迎える商業施設「SHIBUYA109」。これを記念して、2018年4月にシンボルとなる新ロゴマークを公募。9,537件の応募のなかから、審査員・事務局が最終候補を4つにしぼり、ウェブで一般投票を実施。7月22日に新ロゴマークが発表された。日本各地の商業施設「SHIBUYA109」に新ロゴが設置されるのは、2019年からだと言う。
かつて、若者のファッションシンボルとして地位を確立したSHIBUYA109。今でも館内は若者で賑わいを見せるが、「リアルな商業施設」「カリスマ店員」「ジャンルに特化した雑誌」といったメディアは、以前ほどの影響力を及ぼさなくなってきている。代わりに台頭したのはデジタル、とくにSNSだ。
こうした状況下に、SHIBUYA109でオムニチャネルとデジタルマーケティングの両方を担うのが、澤邊亮さんだ。商業施設の現場運営、新規商業施設の開発、本社部門に・携わった後、2013年からSHIBUYA109の公式通販の運営、『109ニュース シブヤ編集部』の立ち上げ、全社のICT戦略策定などを推進し、2017年4月よりSHIBUYA109エンタテイメントで現職を務めるに至る。
SHIBUYA109の主役は、カリスマ店員からインフルエンサーを経て、アンバサダーへ。この変化が示すSHIBUYA109と若者のコミュニケーションのありかたとは。澤邊さんに話を聞いた。
アンバサダーの取り組みは 若者に情報を届けるため
商業施設「SHIBUYA109」には、2種類のお客様がいる。商業施設に出店するブランドと、ブランドのアイテムを買いに来るエンドユーザーである。ブランドのデジタル活用を支援しながら、エンドユーザーともデジタルでコミュニケーションを図り、つながっていくというふたつの仕事があることになる/。そのどちらにも共通するのが、エンドユーザーである若者への理解である。「イマドキの若者はなにを考えているのか」を探っているわけだ。
「当社のブランド・ステートメントとして、“Making You SHINE!”を掲げています。SHIBUYA109のショップスタッフとして働いている方、お客様も含め、若い人の今を輝かせ、夢や希望を叶えようという意味です。取り組みのひとつとして、当社が運営するニュースメディア『109ニュース シブヤ編集部』があります。ショップスタッフやSNSで影響力のある人たちがここ4年間で50名ほど、ライターとして、ファッションに限らず、自分が興味を持ったテーマで記事を書いてくれています。『ライター』という肩書を持ってもらうことで、モチベーションが上がるのではと見ています。
もうひとつ、若者マーケティング研究機関である『SHIBUYA109 lab.(以下、ラボ)』があります。所長は、社内から26歳(当時)の女性を抜擢しました。毎月、SHIBUYA109にいらっしゃるお客様200人ほどにインタビューをすることで、定量データと定性データを組み合わせて分析しています。ラボでは独自のネットワークも持っていて、『アニメが好き』『音楽が好き』など、嗜好別に100人、200人という単位になっています。『こういうことが聞きたい』と呼びかけると、皆さん答えてくださる。『109ニュース』のライターとラボの皆さんをあわせると、けっこうな人数になってきています。この方たちにSHIBUYA109を使っていただきながら、『アンバサダー組織』としてお付き合いしていきたいと考えています」
2014年時点では、インフルエンサーという言葉も一般化していなかったはずだが、とくに『109ニュース』立ち上げの背景について、澤邊さんはこう語る。
「それ以前は、LINE公式アカウントを活用するなどの手法で情報発信していました。しかし、それだけで本当に、若者に情報が届くのかと私自身疑問を持っていましたし、社内からもそういった声が上がっていました。そんな時に、ショップスタッフの皆さんのSNSアカウントを見てみたら、フォロワーも多いし『○○さんがいる日にお店に行きます』といったコメントもついていて、信頼関係にある人からの情報はすごく伝わりやすいんだと実感しました。そういった方たちに、ライターとしてモチベーションを持って発信していただくことで、より情報が届き、共感していただけるのではと思ったんです」
その考えのもと実施したキャンペーンが、実際に目に見える形で成果につながったのが、SHIBUYA109の公式通販サイトリニューアル時のことだった。
「リニューアルの際のプロモーションに、芸能人の方に出ていただくことも検討したのですが、やはりSHIBUYA109はショップスタッフの方が大事だということになり、彼女たちに看板やポスターに登場してもらいました。すると自発的に、SNSで拡散してくれるんです。その結果を定量的に見ると、通常の500%ものアクセスがありました。SNSに投稿したくなるようなプロモーションをSHIBUYA109が行うことで、『伝えたい』という思いでSNS上に伝播していく。SHIBUYA109はそういう場所なんだと。企業としては、それを組織化することでよりパワーが発揮できるのではと考えています」