2003年に設立し、2017年10月に東証マザーズに上場した株式会社SKIYAKIは、ファンクラブ・EC構築プラットフォーム、電子チケットサービス、スマホ決済など、アーティスト向けのサービスを展開している会社である。ゆずや[ALEXAN DROS]、10-FEETなどのミュージシャンほか、「セーラームーン」、ミュージカル「刀剣乱舞」などのサイト制作実績を持つ。
従来の、いちからサイトを作るのに比べてコストが抑えられるため、これから売り出していこうという段階のアーティストのサイトを作るのにも、事務所等が投資しやすいのが導入が進む理由だ。しかしSKI YAKIが目指すのは、テクノロジーの活用によってエンタメ業界の制作ハードルを下げたり、利便性を上げることだけではない。“Fan Tech”分野で新たなマーケットを作ろうとしているのである。
熱狂的なファンがたくさんいるものの、彼らと濃いコミュニケーションをとる術がなく、「Make Amba ssador」がしにくかったエンタメ業界を、どう変えようとしているのか。同社の創業メンバーで、開発チームを統括する取締役の那須淳さんに話を聞いた。
EC、決済、電子チケットも オムニなFanTechサービス
今回の特集テーマであるアンバサダーは「ブランドについて積極的に関わり、発言・推奨する熱量の高いユーザー」と定義されている。熱量の高いユーザーがいる場所といえば、Twitterが思い浮かぶ。トレンドをのぞいてみれば、アーティストや漫画、アニメなどに対するファンの熱量の高さを感じることができる。通常のビジネスを行う企業には真似できない、アートやエンタテイメントならではの熱狂ぶりだ。
こういったファンの熱量をテクノロジーで可視化しようというのが、株式会社SKIYAKIである。ECや電子チケットサービス、スマホ決済など、エンタメビジネスを営むのに必要なサービスをオムニチャネルにそろえ、“Fan×Technology”を意味する造語である“FanTech”事業を展開している。
従来、アーティストなどクリエイティブな活動をする人たちは、活動の場を確保するため、マスメディアやエンタテイメントにおける「枠」を取り合うことを余儀なくされていた。枠を獲得するには、「人気」が必要で、有名になればなるほど人気は一極集中する。多くの人に支持される「スター」の存在が求められていた。インターネットが登場したことで、活躍の場はマスメディアだけではなくなったが、たとえばYouTuberも、その影響力を基準に評価されている。まるでテレビの視聴率のように、SNSのフォロワーの数で人気を問われているのが現状だ。
しかしSNSでフォローしているだけの人と、何度もライブに行きグッズを大量に購入する人とは、同じ熱量ではないのではないかというのが、SKIYAKIの発想である。ECにおいても、長年利用し続けてくれる顧客には特別価格で提供するといった施策があるように、エンタメでも、熱量の高いファンにはそれ相応のフィードバックがあってもいいはずである。企業もクリエイターも、熱量の高いファンとは、長く、濃く、付き合っていきたいはずだ。そういったファンの熱量をテクノロジーによって可視化しようというのが、SKIYAKIのサービスの「bitfan(ビットファン)」である。
「ECや電子チケット、スマホ決済など、さまざまなサービスをオムニチャネルに展開していますが、すべてbitfanとつながっています。ECやライブ会場でのグッズ購入、ライブへの参加回数が多い人とそうでない人では、同じファンでも熱量が異なるはず。bitfanはそれを可視化するサービスです」
サービス名の由来は、わずかなを意味する「bit」とfanから。ひとつひとつはわずかな熱量だが、小さなファンの思いをたくさん集めることで、これまでにない体験を届けたいという思いが込められている。
ファンクラブへの入会・継続、ファンクラブサイトでのログイン履歴、ECサイトでのグッズの購入状況、Twitter等による応援・拡散など、ファンのさまざまな行動履歴を収集し、独自のアルゴリズムによってファンに「トークン」を付与。そして、付与されたトークンに基づいて評価したランキングを表示することで、ファンのアーティストに対する熱量を可視化する仕組みだ。トークンは、ブロックチェーンの概念を取り入れている。