Web3において、ブランドを一歩先のステージへと進化させるヒントは、「ロードマップやビジョンに対して、いかに価値を感じてもらえるか」に加え、「コミュニティとともに創造していくこと」だ。それを実現するには、「コミュニティ接点の拡大」「優れたコミュニティ体験の提供」「コミュニケーションといった切り口から、提供するサービスの向上を目指すこと」が必要とされる。また、テクノロジーが発展する現代から未来にかけては、顧客がより主体的にブランドの運営やものづくりにまで参加できる場づくりも欠かせない。その中で注目が高まっているのがメタバースやNFTなど、Web3時代の新たな空間や技術だ。
株式会社1SECは東京とロサンゼルスに拠点を構え、デジタルファッションレーベル「1BLOCK」やデジタルファッションをARで着用できるiOSアプリ「METADRIP」の開発、クリエイターエコノミーの創出など、先進的な取り組みを多数行っている。同社でPRを担当する小濱庸子さんに、デジタルファッションやNFTが秘める可能性に加え、今後の顧客とブランドの関係性について話を聞いた。
XR世界の実現を見据えパーツを揃える
この数年、「NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)」という言葉を耳にする機会が増えたと感じている人も多いだろう。Googleトレンドを見ると、人々の関心度の高さは2021年2月を契機に上昇している。また、コロナ禍が世の中のデジタル化を後押ししたことも相まってブランドのNFT活用も進み、2025年には市場規模が800億ドルに達すると予測されている状況だ(ジェフリーズ調べ)。
「当社の創業者(宮地洋州さん)は、ロサンゼルスに居を構えていた2017年頃からXR領域に高い可能性を感じていたと聞いています。当時、すでにOculusからVRヘッドセットが販売されており、その後も『Pokémon GO』でARフィルターが活用されるなど、人々の生活の中に仮想現実・拡張現実が広がり始めていました。今後はこれらを総称したXRが浸透し、可処分時間の多くが費やされていく。そう確信した宮地は、バーチャル上ですべてが完結するエコシステムの構築を目指し、2019年に1SECを設立しました」
同社は、まずバーチャルインフルエンサー・バーチャルヒューマンの企画開発に着手。バーチャル上で「人間」を表現するところに目をつけた理由について、小濱さんはこう説明する。
「バーチャルヒューマンは現時点で予想できるXRの最終到達地点、かつもっとも表現することが難しい領域であると考えたためです。人々はVR空間にログインする際、性別を超越したり動物を模した姿になったりと『自分がなりたい姿』や『実際にはなることができない姿』をアバターに投影する傾向が強いと言われています。つまり、アバターを通してバーチャル上で『理想の姿になる』ことを望んでいる人が多いのでしょう。
実際にバーチャルヒューマン事業に着手して、精密かつリアルな表現をつくり出す難しさに直面しました。それと同時に目指すべきゴールも見えてきたため、現在はそこにたどり着くためのロードマップに沿ってバーチャルスニーカーやデジタルオートクチュールなどのNFT事業、クリエイターエコノミー強化サービスの展開などを進めているところです。バーチャルの世界での活動が活性化するにつれ、人々はアバターにおしゃれをさせたり、人との交流を求めたりと現実世界同様の活動を求めるようになるでしょう。1SECは現在、その際に必要なパーツや場を揃えている状況です」