米投資銀行フーリハン・ローキーの日本法人であるフーリハン・ローキーは、各業界別のM&A動向に関する見解をまとめた「セクターレポート」を公開した。
同レポートは、リテール業界の主要3セクター(小売、調剤薬局・ドラッグストア、アパレル)における2025年度決算概要を基に分析を行ったもの。3セクターに共通して、事業ポートフォリオの転換や業界再編の動きが本格化しており、成長戦略としてのM&Aが活発化している。
調査結果サマリー
【小売業界】“売るだけ”では、勝てない

2025年の小売業界では、売上高の成長に加え、収益性の指標が重視される傾向が強まっている。業態間や企業間での収益状況の差が顕著となっており、PB、DX、データ活用、高付加価値化などを通じて収益率の向上を実現している企業に対し、市場評価が集まる状況となっている。
- 小売業界のM&Aは、規模の拡大を主目的としたものから、戦略の転換を図るものへと移行している。食品スーパーにおいては業界再編の動きが広がり、ホームセンターにおいても提携や統合に向けた取り組みが具体化している
- 小売業界の競争軸は、店舗網の拡大から機能面の強化へと移行している。商品の販売そのものだけでなく、どのような付加価値を提供できるかが市場における評価の基準となっている
- コンビニは中食・利便性需要を背景に底堅く推移する一方、GMSは売場改革や収益構造改革が引き続き課題となっている
- ファーストリテイリングや良品計画などは、高付加価値商品とブランド力で成長を維持。PPIH(ドン・キホーテ)などは、PBや価格競争力を武器に市場シェアを拡大している
【調剤・ドラッグストア業界】「再編×成長」の新局面へ

2025年の調剤薬局・ドラッグストア業界では、薬価改定や人件費上昇などの環境変化が継続する中、大手企業を中心に業界再編が進行している。特に、電子処方箋やオンライン服薬指導への制度対応、薬剤師不足への対策など、単独での対応が困難な課題を背景に、中小規模の薬局による経営統合や売却が進展した。こうした再編の動きの中で、大型のM&Aや株式の非公開化案件も見られた。
ドラッグストア業界
- ドラッグストア市場は10兆円規模に拡大。物価高を背景に客単価上昇で増収基調。ウエルシアHDとツルハHDの統合など、業界再編が進む
- 食品や日用品を含めた「医療・予防・生活を統合したヘルスケアプラットフォーム化」や、調剤併設による医療機能の拡充が図られている。これにより、従来の業態の枠組みを超えた事業モデルの構築が進展した
- 特に、大手ドラッグストア各社では、差別化競争が継続しており、マツキヨココカラ、スギHD、サンドラッグ、コスモス薬品、クスリのアオキなどは調剤・食品・PBなどドラッグ以外の分野をそれぞれ強化し事業の拡大を図っている
調剤薬局業界
- 中小規模の薬局においては、業務の電子化対応や人材不足を背景に経営環境が厳しさを増しており、大手による取り込みが進展。
- アインHDによるさくら薬局買収やアドバンテッジパートナーズによる日本調剤買収など、大手企業への経営統合やPEファンドによる買収が進む。薬価改定や人件費増で厳しい状況にある。一方、M&Aを通じた規模拡大で成長基盤の構築を図る動きが見られる
【アパレル業界】「成長と再編」の二極化へ、2025年度決算が示す構造転換

2025年のアパレル業界は、コロナ禍以降に各社が実施した施策が、財務実績として顕在化した年となった。
- アクティビストによるキャンペーン活動の活発化や、グループ戦略推進を目的としたM&Aが確認された。ブランドビジネス特有の性質からM&Aの難易度が高いとされる傾向にあるが、当期は主要な案件が断続的に発生している
- M&Aが成長戦略における主要な手段となり、オンワードHDによるウィゴーの買収や、TSI HDによるデイトナ・インターナショナルの買収など、小売機能の獲得を目的とした事例が増加している
- デジタル化とSNSの浸透によりカスタマージャーニーが複雑化し、購買チャネルの多様化が進展している。これにともない、ECチャネルの強化だけでなく、オフラインチャネルとのシームレスな連携、さらにはアパレル以外の商材や空間を活用したブランド価値の提供が、今後の成長に向けた重要な要素になると分析される
【調査概要】
調査名:リテール業界(小売/調剤薬局・ドラッグストア/アパレル)の2025年決算概要とM&A動向に関する調査
調査対象:リテール業界(小売/調剤薬局・ドラッグストア/アパレル)国内主要企業各社
調査方法:各社決算報告をもとにフーリハン・ローキー分析
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