日本インフォメーションでは、これまで複数回行ってきた値上げに関する意識調査の続編として、2023年12月時点での状況と消費者の態度変容の把握、さらに行動経済学に基づいた価格設定やダイナミックプライシングの受容性を確認するための調査を実施した。
主な調査結果は、次のとおり。
値上げの実感
日常生活で物・サービスの値上げを実感するか確認したところ、 2023年12月調査全体では83.6% が「TOP2」(実感する+やや実感する)と回答。2022年11月までは「TOP2」 (実感する+やや実感する)が増加傾向にあったものの今回はやや落ち着いていた。2022年10月の値上げ項目が、この2年間でもっとも多い約7,800品目だったことが影響しているのではないかと考えられる。
性年代別で見てみると、いずれの年代においても「実感する」と回答する割合は、女性が男性を上回った。なお、男性60代、女性50代以上では「TOP2」(実感する+やや実感する)が9割を超える結果となっており、ほかの層を上回っていた。
値上げを実感する品目
値上げを実感すると回答した人に、値上げを実感する品目を確認したところ、1位は「食品(生鮮食品以外)」、2位は「生鮮食品(野菜・果物・肉・魚等)」、3位は「日用品・化粧品」となり、食品・日用品関連の値上げの実感が他項目よりも大きい様子だった。
性別で見てみると、家計を握っているであろう女性の方が男性に比べて実感値が高い結果に。
続く「ガソリン代」は全体の54.7%が選択しており、特に男性50代~60代では全体より10ポイント以上上回っていた。
値上げを実感する品目(食品/飲料/日用品抜粋)
続いて値上げを実感する品目の中でも、食品/飲料/日用品を抜粋して詳細を確認。食品関連の1位は「インスタント麺(カップ麺、インスタントラーメン等)」で65.7%。次に「パン」「菓子(チョコ、クッキー、スナック菓子等)」「スイーツ、デザート類(ケーキ、プリン等)」と原料に小麦粉を多く使うものが上位に並んだ。
飲料関連の1位は「一般の乳飲料(牛乳、ドリンクヨーグルト等)」で38.4%。お酒、アルコール類のなかでもビール類にフォーカスを当てて見てみると、「新ジャンル」がもっとも高い17.4%で、これには2023年10月の酒税法改定の影響が背景にあるのではないかと推察される。日用品関連の1位は「ティッシュ類(ティッシュ、トイレットペーパー、キッチンペーパー)」で40.2%だった。
値上げに対する品目ごとの態度変容(ブランドスイッチなし)
値上げを実感する品目について、「値上げされても、今買っているものと同じ銘柄(ブランド)を買い続ける」と回答した割合をみると、食品関連では「アイス、氷菓」が42.0%ともっとも高く、次に「基礎調味料(お醤油、塩、砂糖、油等)」が38.4%と続く。飲料関連では「コーヒー、紅茶、お茶類」が38.4%ともっとも高く、次に「機能性乳飲料(R-1、ラブレ等)」が36.6%と続いた。日用品関連では「ペットフード、ペット用品」が46.1%ともっとも高く、次に「スキンケアアイテム(化粧水、乳液、パック等)」が42.7%となった。
値上げに対する品目ごとの態度変容(ほかのNBへブランドスイッチ)
値上げを実感する品目について、「値上げされたら、同じ品目でより安く異なる銘柄(メーカーのブランド)に変更する」と回答した割合をみると、食品関連では「基礎調味料(お醤油、塩、砂糖、油等)」が34.8%ともっとも高いが、他商品もほぼ横並びに。
飲料関連では「お酒、アルコール類(チューハイ、サワー)」が36.7%ともっとも高くなっていて、こちらも他商品とほぼ横並びとなった。日用品関連では「衛生・入浴用品(ハミガキ、ボディーソープ)」が37.1%ともっとも高く、次に「住宅用洗剤、掃除用品」が34.9%と続く。
値上げに対する品目ごとの態度変容(PBへブランドスイッチ)
値上げを実感する品目について、「値上げされたら、同じ品目でも異なる銘柄(プライベートブランド)に変更する」と回答した割合をみると、食品関連では「レトルト食品(カレー、パスタソース、各種総菜等)」が26.4%ともっとも高く、次に「冷凍食品(餃子、パスタ、から揚げ、野菜等)」が25.6%。飲料関連では「一般の乳飲料(牛乳、ドリンクヨーグルト等) 」が25.3%ともっとも高いが、他商品もほぼ横並びとなっていた。日用品関連では「ティッシュ類(ティッシュ、トイレットペーパー、キッチンペーパー) 」がもっとも高く32.8%で、次に「住宅用洗剤、掃除用品」が25.0%だった。
値上げに対する品目ごとの態度変容(購入を止める)
値上げを実感する品目について、「値上げされたら、その品目自体買うのを止める」と回答した割合をみると、食品関連では「メニュー用調味料(CookDo、うちのごはん等)」が12.1%ともっとも高くなっている。飲料関連では「栄養ドリンク・栄養補助飲料(ドリンク剤・ビタミンドリンクなど) 」が20.0%ともっとも高くなっている。いずれも効率の良さ・手軽さが魅力だが、値上げされたらほかの手で代用するといった意見もあると考えられる。日用品関連では「メーキャップアイテム(ファンデーション、口紅等)」が8.7%ともっとも高くなっていた。
態度変容の理由(食品・飲料)
「値上げされても、今買っているものと同じ銘柄(ブランド)を買い続ける」と回答された人にその理由を確認すると、食品関連ではいずれの項目でも「美味しい・好みの味だから」がもっとも多い結果となり、味が一番の重視ポイントに。飲料関連では「美味しい・好みの味だから」を選択する項目が多いなかで、「機能性乳飲料(R-1、ラブレ等)」「栄養ドリンク・栄養補助飲料(ドリンク剤・ビタミンドリンクなど) 」は「その銘柄(ブランド)が好きだから」が多くなっており、味よりブランドが重視されている様子がうかがえる。
態度変容の理由(日用品)
続いて、日用品関連について確認してみると、前述の食品関連、飲料関連に比べて品目ごとに違いが出ていた。
「衣類用洗剤、柔軟剤」「住宅用洗剤、掃除用品」「衛生・入浴用品(ハミガキ、ボディソープ)」は「昔から買い続けている銘柄(ブランド)だから」が高く、使い慣れたものが定着されている様子だった。値上げされたら他の安いNB商品やPB商品にスイッチすると回答した割合が多かった「ティッシュ類(ティッシュ、トイレットペーパー、キッチンペーパー) 」については、「品質が良い銘柄(ブランド)だから」がもっとも多くなっている。
値上げに対する気持ち
2022年の春から始まった値上げラッシュも早2年が経ち長期化しているが、 「値上げが続くのは嫌」かを確認したところ、全体の83.2%が「TOP2」 (あてはまる+ややあてはまる)と回答。
一方で「値上げに対してしょうがない」と思うかについては「TOP2」(あてはまる+ややあてはまる)、「BOTTOM2」(あてはまらない+あまりあてはまらない)であまり差が開いていない結果に。
性年代別に見てみると、男性は10代~40代で「TOP2」(あてはまる+ややあてはまる)の割合が高くなっている。女性は20代以上で「BOTTOM2」(あてはまらない+あまりあてはまらない)の割合が高くなっており、値上げ実感と同様、女性のほうが男性に比べてよりシビアな印象が見受けられる。
また、「値上げに対して驚かなくなった」かを確認したところ、いずれの性年代も「TOP2」(あてはまる+ややあてはまる)の割合が多く、相次ぐ値上げに慣れてしまっている様子がわかる。
ダイナミックプライシングの受容性
時間帯や時期、地域によって価格を変動する「ダイナミックプライシング」の受容を確認したところ、 「ホテルや旅館の宿泊施設の早割」を「利用したいと思う」で45.6%ともっとも多く、次に「新幹線や飛行機の乗車券の早割」が44.7%と続く。旅行関連の早割は意識次第で利用できる機会も広がるため、支持を集めている様子がうかがえる。
「通勤ラッシュの時間帯を避けると運賃が安くなるオフピーク定期券」は「利用したいと思う+現実的には利用できないが、いい取り組みだと思う」の合計で見ると70.8%で、7項目中4番目に。現実的には利用できないが、通勤ラッシュが避けられて電車が混雑していない、かつ運賃も安くなるという一石二鳥のサービスは好印象として受け入れられていた。
調査概要
- 調査実施期間:2023年12月25日~12月26日
- 調査地域:日本全国
- 調査対象:16~69歳 男女
- サンプルサイズ:有効回収計 1,033サンプル
- 調査手法:インターネットリサーチ